再春館製薬所 研究開発部

真菌に対する天然防腐原料の
発見と
実用化に向けた検討

日本防菌防黴学会 第46回年次大会

2019.09.25

学会発表

再春館製薬所 研究開発部は、モロコシソウ・イズセンリョウに複数の真菌に対する抑制効果があることを確認しました。

近年、天然原料を使用した化粧品への関心が集まり、消費者の需要も高まっています。化粧品の品質を保つためには防腐成分は必要不可欠ですが、天然原料でさまざまな菌に対して抵抗力を持たせるためには、複数の原料の掛け合わせが必要になってきます。
そこでさまざまな天然防腐原料が開発されている中、抑制効果の報告が少ないPenicillium paneum 野生株(P.p)(※)をはじめ、複数の真菌に対する天然植物の抑制効果を検討しました。

※ Penicillium paneum 野生株(P.p)
ペニシリウム パニウム、アオカビの一種。製剤などの防腐力を確かめるために使用する

P.p を抑制する植物抽出物のスクリーニング(菌生育阻害試験)で
抑制効果を確認

カビは生存に適した環境におかれると、胞子から菌糸と呼ばれる糸状のものを伸ばして繁殖を始めます。そうすると食品がかびた際の見た目や臭いの変化が起きます。そういった変化を抑制することを指標として、天然原料がもつ防腐効果(≒カビの成長抑制効果)を評価しました。
培養したP.p の胞子を採取したものを、モロコシソウ・イズセンリョウそれぞれの植物抽出物を添加したものと抽出物を加えないものの3種類の条件でそれぞれウェルプレートで作成・培養し、発芽の有無を目視、顕微鏡で確認、比較を行いました。
結果、モロコシソウにおいて、400 ppm(※)でP.p に対して抑制が確認され、イズセンリョウ地上部においては500 ppmでP.p に対して完全抑制が確認されました。

※ ppm
濃度を示す単位で、1ppmは100万分の1を意味する。これは、1トンの水に1グラムの物質を溶かした濃度に相当する

※NC:ネガティブコントロールの略。実験結果の信頼性を担保するための対照実験で、「反応が出ないことが確実な条件」で測定を行い、機器や試薬による誤った反応(誤検出)が起きていないかを確認する。病気の検査薬を、病気ではないことが確実な人に用いて必ず「陰性」となることを確認し、検査薬の信頼性を証明する役割と同様

モロコシソウの最適な抽出方法に
よって、完全抑制できることを確認

次にモロコシソウを複数の溶媒で抽出し、抽出物を調製し、前述の実験と同じ方法でスクリーニングを行いました。
結果、50%エタノール抽出物では200ppm、メタノール抽出物では50ppmで生育を完全に抑制し、より低濃度で効果を発揮することを実現しました。また、化粧品原料で用いられるブチレングリコール抽出物でも効果が確認されたことから、製品応用の可能性も見えてきました。

モロコシソウ・イズセンリョウの
他の真菌に対する抑制効果の検討

モロコシソウ・イズセンリョウのMeOH抽出物を使用し、(2)のモロコシソウ地上部の抽出物(a)と、同様の方法で抽出したイズセンリョウ地上部の抽出物(b)を使用し、どの種類の真菌に効果を発揮するか検討しました。結果、モロコシソウ抽出物において、C.a、Pichia ともに100ppmでP.p に対して完全抑制が確認され、イズセンリョウ抽出物においては、Pichia のみ500 ppmで完全抑制が確認されました。

※ C.a:Candida albicans
ヒトの消化管や口腔、皮膚などに常在する酵母菌で、免疫力が低下した際にカンジダ症と呼ばれる感染症を引き起こす主要な病原菌
※ Pichia:Pichia anomala
パンや酒類の発酵で重要な役割を果たすなど食品産業では良い働きもする一方で、製品の腐敗や日和見感染症の原因ともなる酵母の一種

保存効力試験

次に製品に配合した際の防腐力を試すためを試すため、「モロコシソウ・BG 抽出液・ 配合化粧水」を使用し、P.p、C.a、Pichiaそれぞれと配合したものと無添加のものを、25 ℃で保管し、試験開始時と1,2,4週目にそれぞれ確認を行いました。
結果、P.p では4 週目までに変臭や発芽は確認されず良好な防腐力を示し、C.a、Pichiaは4 週目までに検出できる最小量以下に達し、良好な防腐力を示しました。

この実験により、モロコシソウ・イズセンリョウには複数の真菌に対する抑制効果があることが確認されました。
またモロコシソウにおいては、化粧品に配合してもその効果があることが確認できました。
引き続き研究を行い、さまざまな観点・方法で植物の力を引き出し、化粧品などへの使用を行っていきます。

※参考文献
1)Fang An, et al ..(2016), Evidence Based Complementary and Alternative Medicine,2016
2)Ana Mariel Torres Contreras, et al ..(2022), Plants, 11, 220
3)Takayuki Tohge , et al ..(2016), Nature communications, 7:12399

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