修治
原料の力を引き出す、漢方の知恵
修治とは
修治とは、採取したままの自然の生薬(しょうやく)を、漢方薬として使用する前に、様々な加工を施すことです。
より専門的な言い方として、「炮製(ほうせい)」と呼ばれることもあります。
乾燥させたり刻んだりするだけでなく、加熱、蒸す、炒る、液体に漬けるといった一手間を加えることで、生薬の性質を意図的に変化させます。
近いものとしては、「料理を作る時の調理方法」でしょうか。煮る・炒める・蒸すなどの調理方法の違いにより、食材の風味や食感、味そのものが大きく変化し、摂取できる栄養素も変わることは、日常的に感じられていると思います。
漢方においても修治を行うことで、漢方薬の効果が高まり、また安全性を確保するために不可欠な伝統技術なのです。
修治の具体的な方法
修治の方法は、代表的なものとして「炒(しょう)」「漂(ひょう)」「蒸(じょう)」「煮(しゃ)」の4つの方法があります。
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炒(しょう)
炒める
生薬を油を使わずそのまま炒める、
または米や麩などと一緒に炒める -
漂(ひょう)
水にさらす
水に浸し、刺激性の成分や毒性のある成分を水に溶かし出す
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蒸(じょう)
蒸す
水や酒などと一緒に蒸す
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煮(しゃ)
煮る
水や他の薬液で煮る
方法も調理方法に似ていますね。
結果も調理方法と同様に、同じ生薬でも修治の方法が違えば全く異なる成分になり、別の薬として扱われることもあります。
修治の目的
修治を行う目的は、特定の効果を高めたり、生薬の副作用を弱めたりすることです。ここでは、修治を行う主な目的を解説します。
毒性や副作用の軽減・除去
修治を行う上で、最も重要な目的です。生のままでは毒性が強い生薬も、適切な修治を行うことで、毒性を大幅に減らし、薬として安全に利用できるようになります。
代表的なものとしては「附子(ブシ)」が挙げられます。
附子はトリカブトの根のことで、生のままだと毒性成分(アコニチン)を持っています。こちらに加熱処理を施すことで、毒性成分(アコニチン)を分解・変化させ、体を強力に温める重要な薬に変わります。

効能を高める
素材がもともと持っている効能を高めるために行います。
例としては「甘草(カンゾウ)」があげられます。
そのままでも保温作用をはじめとした様々な効果を持ちますが、蜂蜜などで焦がして乾燥させると、胃腸を温め、気を補う作用が強まります。また、名称自体も漢方では「炙甘草(シャカンゾウ)」という名に変わり、甘草とは別の生薬として扱われます。

性質を変化させる
元々の性質とは異なる、新たな作用を持たせるために行います。
例としては「地黄(ジオウ)」があげられます。
生の地黄(生地黄)は体の熱を冷ます作用を持っています。
これを酒などで蒸したり干したりを繰り返すと、黒く粘り気のある「熟地黄(ジュクジオウ)」に変化します。
熟地黄は生地黄とは逆に、体を温め、血を補う作用に変わります。

保存性を高め、製剤しやすくする
水分を飛ばしたり、成分を安定させたりすることで、長期保存を可能にし、粉末や煎じ薬にしやすくします。
例としては「山薬(サンヤク)」があげられます。
山薬はヤマイモの根のことで、そのまま乾燥させると水分が残ったり、デンプンが時間と共に失われてしまい、保存には向きません。
そこで山薬を「炒める」ことで、内部の水分を蒸発させ、デンプン分解酵素の働きを止めることが可能になり、保存性を大きく高めることができます。

漢方の製薬会社として、
修治で原料の力を
最大限に引き出す
漢方の修治は、素材の下ごしらえではなく、素材の潜在能力を最大限に引き出し安全に使うための、先人たちの知恵が詰まった科学的かつ精巧な技術と言えます。
誰も目を向けなかった道端の植物でも、修治により大きな効果をもつ原料として生まれ変わることもありますし、今再春館製薬所で使用している原料も、修治によって全く違う効果を引き出すこともできます。
私たちは修治を用いて、より効果の高い生薬を作り出していきます。

漢方の修治は、素材の下ごしらえではなく、素材の潜在能力を最大限に引き出し安全に使うための、先人たちの知恵が詰まった科学的かつ精巧な技術と言えます。
誰も目を向けなかった道端の植物でも、修治により大きな効果をもつ原料として生まれ変わることもありますし、今再春館製薬所で使用している原料も、修治によって全く違う効果を引き出すこともできます。
私たちは修治を用いて、より効果の高い生薬を作り出していきます。
