しわだけではなく、
"しみ"が加速する原因にも!?

Angptl2(アンジオポエチン様因子2)が過剰につくられることで、肌の弾力の源であるコラーゲンを分解してしまい、シワ形成につながることを第2話でお伝えしました。

さらに私たちは、“しわ”と同じくらい肌の悩みで上位にあがる“しみ”とAngptl2の関係についても研究を進めてきました。
今回は過剰につくられたAngptl2が“しみ”形成にどのように関与するかについてご紹介します。


しみができるメカニズム

しみができるメカニズムですが、紫外線により刺激を受けると、メラノサイト(メラニンを作り出す細胞)に信号が送られ、メラニンという色素を生成します(図1)。ターンオーバーが正常な状態であれば、メラニンはメラノサイトの周りの細胞(ケラチノサイト)と一緒に肌の表面へ押し出され、最終的に垢として排出されます(図2)。しかし、過度の紫外線、加齢、ストレスなどの様々な要因からターンオーバーが乱れると、メラニンがなかなか外に排出されず蓄積し“しみ”になってしまいます(図3)。


図1:紫外線を浴びるとメラノサイト(メラニンを作り出す細胞)に信号が送られメラニン色素が作られる。

図2:肌表面の細胞は約28日かけて肌表面に押し上げられ、垢となって剥がれ落ちると言われています。これをターンオーバーと言います。メラニンも同様、ターンオーバーによって剥がれ落ちます。

図3:過度な紫外線や様々なストレス、刺激によりメラニンが過剰につくられ、ターンオーバーのサイクルが乱れることで、排出が滞り大量のメラニンが肌の中で蓄積し、しみになります。

メラニンは本来、悪者ではない

しみのもとがメラニンであるならば、メラニンが悪者のように思われるかもしれませんが、本来、メラニンは紫外線から細胞を守るためにつくられます。しかし、上述したような様々なストレスによりメラノサイトが活性化し必要以上のメラニンがつくられてしまうのが、しみ形成の原因です。つまり、メラニンをつくらずして、肌を守ることができれば、しみに悩まず健やかな肌の状態を維持できるのです。


Angptl2がしみ形成を促進させる

私たちはAngptl2がメラニン産生にどのような影響を及ぼすか調べるために、Angptl2が多い細胞と通常の細胞を用いて、複数の遺伝子・タンパク質の発現状態を調べました。

その結果、Angptl2が多いケラチノサイトでは、メラノサイトを活性化させる因子(α-MSH、ET-1)が多く産生されていること(図4)、Angptl2が多いメラノサイトではメラニン産生を引き起こすチロシナーゼという酵素の発現が高く、メラニン産生が増加することを確認しました(図5、写真1)。


図4:Angptl2産生を増加させたヒト表皮角化細胞(ケラチノサイト)では、通常の細胞(Control)と比較して、メラノサイトを活性化させるα-MSH 、ET-1の産生が増加していました。

図5:Angptl2産生を増加させたマウスメラノーマ細胞株(メラノサイト)では、通常の細胞株(Control)と比較して、メラニン産生を引き起こす酵素であるチロシナーゼ活性が上昇しており、メラニン産生量も増加していました。

紫外線、睡眠不足、過食などの様々なストレスにより、肌でAngptl2が増加すると、ケラチノサイト、メラノサイトからメラニン産生を促す因子を産生し、しみのもとであるメラニンを大量につくり出してしまいます。つまり、メラニンを作らせる信号の起点の一つがAngptl2であることが明らかになりました(図6)。

糖尿病や動脈硬化、心不全などの心血管病、生活習慣病やメタボリックシンドロームの発症・進展につながってしまうAngptl2ですが、肌老化にも大きく関与することが我々の研究で徐々に明らかになってきました。また、400種類を超える天然植物からAngptl2を抑制する“不知火菊”という熊本県不知火地方のみでしか栽培されていない希少な植物を見出しています(詳しくはこちら)。

今回の結果は国際専門誌「Experimental Dermatology」に掲載されています(https://bit.ly/2JLtl1h)。

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