坂本 彩香 監修
ブロバスケットボールチーム 熊本ヴォルターズ トレーナー
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校アスレティックトレーニング専攻 学士を卒業。
「BOC-ATC (米国アスレティックトレーナー資格認定委員会公認アスレティックトレーナー)」という、
アメリカでは准医療従事者として認定され国家資格の立ち位置にあり、日本国内での保有者はわずかしかいない資格を取得。
現在は熊本ヴォルターズのトレーナーとして、選手のサポートに従事。
「インナーマッスルを鍛えてみたい」「最近、体力が落ちた気がする」とお考えの方はいませんか?加齢とともに衰えやすいインナーマッスルは、体の軸となる重要な筋肉です。また、インナーマッスルを鍛えることで、姿勢がよくなり、転倒予防にも役立ちます。本記事では、高齢者の方でも簡単に取り組めるインナーマッスルのトレーニングを6つ解説します。
よくインナーマッスルという言葉を聞くけれど、具体的には何を指すのでしょうか。
それぞれについて解説していきます。
体には多くの筋肉がありますが、インナーマッスルとはその中でも体の深いところに位置する筋肉、深層筋のことです。
インナーマッスルは体や関節の中心付近にあり、代表的なものでは「腸腰筋」や「体幹深層筋群」があります。
体の深いところにあるインナーマッスルとは反対に、体の表面に位置する筋肉、表層筋は通称アウターマッスルです。
外から確認できるアウターマッスルは「動かす筋肉」とも呼ばれており、インナーマッスルはアウターマッスルを支える役割から「支える筋肉」と呼ばれています。
インナーマッスルやアウターマッスルという呼び方は、トレーニングやエクササイズの用語として使われることが多いです。
インナーマッスルと同様に、よく聞く単語として体幹があります。
鍛えることが重要という点から混同されることもある2つですが、実は定義が異なります。
インナーマッスルとアウターマッスルは、特定の筋肉の場所ではなく「筋肉が存在する深さ」を指しており、腕や足など全身のさまざまなところに含まれています。
対して体幹は、「体の場所」であり、頭と四肢を除いた胴体部分のことを指しているのが特徴です。
そのため、インナーマッスルを鍛えることで、自然と体幹も鍛えられます。
インナーマッスルのトレーニング効果は、すぐに実感できるものではありません。
体の変化を実感するのは一般的にトレーニングを始めてから2~3ヶ月後といわれています。
ですが、効果を実感するまでの期間には、個人差があることを覚えておきましょう。
年齢や体力、生活習慣、トレーニングの強度や頻度などによって、効果が出るまでの期間は大きく異なります。
効果が感じられなくとも諦めずに、根気強く継続してトレーニングをしましょう。
次は、高齢者の方がインナーマッスルを鍛えることで得られる5つのメリットを解説します。
インナーマッスルを鍛えることで、たくさんのメリットがあるため、それぞれについて解説していきます。
インナーマッスルの代表である腸腰筋、体幹深層筋群はさまざまな役割を果たしています。
インナーマッスルは歩く時や立ち上がる時、物を持ち上げる時など、あらゆる動作において体の軸を支え、スムーズな動きをサポートしています。
インナーマッスルがしっかりと働いていれば、歩く際に足腰への負担を軽減し、運動や歩行のサポートとなります。
また、姿勢がよくなることで呼吸が楽になり、体力向上にもつながります。
そのため、インナーマッスルを鍛えることは、健康的な生活を送るために重要といえるでしょう。
高齢者の方は、加齢によって筋肉量が減少し、バランス感覚も衰えてしまうため、転倒のリスクが高まります。
インナーマッスルには身体の深部で関節を安定させたり、脊柱を支えたりする働きがあるため、トレーニングすることで体がぐらつきにくくなります。
これによって、バランス感覚が向上し、転倒しにくい体づくりに役立ちます。
高齢者の方が転倒すると、骨折や頭部外傷などの大けがにつながる可能性があり、寝たきりや要介護状態になるリスクを高めます。
これらのリスクを防ぐためにも、高齢者の方はインナーマッスルを鍛えるのがおすすめです。
インナーマッスルを鍛えると筋肉量が増えて、基礎代謝の向上にもつながります。
基礎代謝とは、呼吸や体温維持など、人が活動する上で必要なエネルギーのことを指します。
インナーマッスルは他の筋肉よりもエネルギーの消費量が多く、脂肪燃焼効果がアップしやすいとされており、太りにくい体作りにもつながります。
また、基礎代謝が向上すると、太りにくい体質になるだけでなく、冷え性改善など健康的な体作りにも役立つでしょう。
インナーマッスルの1つである体幹深層筋は、以下の3つの筋肉の総称です。
これらの筋肉には、内臓を押し上げる役割があります。
鍛えることによって、お腹周りの筋肉が引き締まり、スッキリとしたお腹周りを実現できるのです。
また、背中やお腹、腰にあるインナーマッスルを鍛えることによって背筋が伸びるため、スタイルが良く見える効果があります。
インナーマッスルの1つである骨盤底筋は、骨盤の底を覆う筋肉であり、大きく以下の3つの役割があります。
加齢や出産などで骨盤底筋が衰えると、尿道や肛門の括約筋の力が弱くなります。
そのため、骨盤底筋を鍛えることで、これらの臓器をしっかりと支え、尿漏れや頻尿の予防・改善につながるでしょう。
インナーマッスルを鍛えることは、さまざまなメリットがある一方で、注意しておきたい点もいくつかあります。
高齢者の方は体力や筋力が衰えているため、間違ったトレーニング方法をおこなうと、体を痛める恐れがあります。
また、普段あまり体を動かさない方や、体調が悪いときにトレーニングを行うと、逆に体に負担がかかってしまうでしょう。
無理のないトレーニングを心がけ、ゆっくりと動かしながら、体に負担をかけすぎないように注意することが大切です。
次は、高齢者の方でも簡単に行えるインナーマッスルの鍛え方を6つ紹介します。
それぞれ解説していきます。
1つ目のトレーニングは、体幹のインナーマッスルを鍛えるドローインです。
ドローインは、インナーマッスルの働きを促すトレーニングで、意識しにくい体幹のインナーマッスルを集中的に鍛えられます。
また、脊柱の安定性が高まるため、腰痛の軽減も期待できるでしょう。
【ドローインのやり方】
最初は仰向けに寝た姿勢の方がよいですが、慣れてきたら座った状態や立った状態で行ってみましょう。
姿勢を維持できるようになると、さらに長い時間良い姿勢をキープすることができるようになります。
2つ目のトレーニングは、多裂筋のインナーマッスルを鍛えるバードドッグです。
多裂筋は、首から腰の脊椎の椎体をまたいである深層筋で、脊柱の骨と骨の安定性を高めて姿勢の安定をサポートしてくれます。
腰を反ったり、体をねじるのにも重要なインナーマッスルです。
【バードドッグのやり方】
体の軸がぶれないようにキープすることと、床を見るようにすることを心がけましょう。
前を見てしまうと、背中が反ってしまい、腰への負担がかかってしまいます。
最初は左右のバランスが上手く取れないかもしれませんが、姿勢の維持を目標にするとよいでしょう。
3つ目のトレーニングは、腹横筋のインナーマッスルを鍛えるトレーニングです。
腹横筋は腹筋のインナーマッスルで、腹部内臓の保護、体幹の安定化などコルセットのような役割を果たしています。
そのため、腹横筋の筋力が弱いと体幹が安定せず、腰痛を起こしやすくなってしまいます。
【腹横筋トレーニングのやり方】
慣れていないと、3の時点で辛く感じるでしょう。
少しずつ体を慣らし、腹横筋のインナーマッスルを鍛えていきましょう。
4つ目のトレーニングは、骨盤底筋のインナーマッスルを鍛えるトレーニングです。
尿漏れや頻尿予防でも紹介した骨盤底筋は、骨盤の底を覆うようにして肛門周囲にあり、下から内臓を支えています。
意識しにくいインナーマッスルですが、しっかりとトレーニングをしていきましょう。
【骨盤底筋トレーニングのやり方】
イメージが上手くできない方は、息を吸った空気の流れが下に落ち、吐いた際には上に上がるのを意識してみるとよいでしょう。
5つ目のトレーニングは、大腰筋のインナーマッスルを鍛えるお尻歩きです。
大腰筋は上半身と下半身をつないでおり、姿勢維持のために重要なインナーマッスルです。
大腰筋を鍛えるには、骨盤まわりの筋肉を鍛える効果のあるお尻歩きのトレーニングが有効なので紹介します。
【お尻歩きのやり方】
お尻歩きは狭いスペースで実践できるのに加えて、道具も使わないため、気軽に取り組めるトレーニングです。
高齢者の方の場合、背中や腰の曲がりといった姿勢の改善に効果が期待できます。
最後のトレーニングは、腹筋群のインナーマッスルを鍛えるパピーポジションです。
腹筋群は、お腹の前面にある筋肉の集まりで、お腹を前に曲げる動作や姿勢維持に関連しています。
高齢者向けの体幹トレーニングで重要である腹筋群のトレーニングには、パピーポジションというトレーニングが有効です。
【パピーポジションのやり方】
このトレーニングは、医療や介護現場では腰痛改善を目的として取り入れられていますが、腰痛が酷い方や痛みが出る方は、医者に相談してから行うようにしましょう。
ここまでトレーニングについて紹介してきましたが、高齢者の方でも効率よくインナーマッスルを鍛える方法についても紹介します。
それぞれについて解説します。
効率良くインナーマッスルを鍛えるためには、トレーニングの前後にストレッチを取り入れることが重要です。
トレーニング前に動的ストレッチ、トレーニング後には静的ストレッチを行いましょう。
動的ストレッチとはラジオ体操のように大きな動きを伴うストレッチで、体を大きく動かしながら筋肉の伸縮を繰り返し、筋肉の柔軟性と関節の可動性を高めます。
一方、静的ストレッチとは、筋肉を伸ばした体勢で動きを止めるストレッチで、柔軟性を高めたり、副交感神経を優位にしたりする効果があります。
トレーニング前には筋肉を温める効果のある動的ストレッチを行うことで、ケガのリスクを減らし、運動のパフォーマンス向上が期待できます。
トレーニング後は緊張をほぐしたり回復を早めたりする効果のある、静的ストレッチがおすすめです。
これまでトレーニングを紹介してきましたが、エクササイズ器具を活用するのもおすすめです。
特にセラバンドやゴムバンド、ゴムチューブとも呼ばれるゴム製のトレーニング道具がおすすめで、インナーマッスルのエクササイズ器具としてジムに完備されているケースも多いです。
セラバンドのメリットは以下の通りです。
セラバンドを活用することで、高齢者の方でも無理なく、自宅でも簡単にトレーニングすることができます。
本記事では、高齢者の方でも簡単に取り組める、インナーマッスルの鍛え方を6つ解説しました。
インナーマッスルは健康な生活を送るためには重要です。
どれも簡単なトレーニングですが、すぐに効果が出るものではありません。
最初は軽い負荷から始め、慣れてきたら回数や時間を増やすようにしましょう。
また、体調が悪い時は無理せず休み、自分の体の状態をよく観察しながら、トレーニングを行うようにしましょう。
坂本 彩香 監修
ブロバスケットボールチーム 熊本ヴォルターズ トレーナー
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校アスレティックトレーニング専攻 学士を卒業。
「BOC-ATC (米国アスレティックトレーナー資格認定委員会公認アスレティックトレーナー)」という、
アメリカでは准医療従事者として認定され国家資格の立ち位置にあり、日本国内での保有者はわずかしかいない資格を取得。
現在は熊本ヴォルターズのトレーナーとして、選手のサポートに従事。