好きなことを信じて進む姿は
何よりも美しい
素敵な年齢の重ね方をしているな、と思う人生の先輩は『パテ屋の店先から かつおは皮がおいしい』というエッセイを出されている林のり子さんです。御年83歳。
林さんは1973年に、東京・田園調布に手づくりのパテやテリーヌの総菜店を開き、いまも変わらず続けていらっしゃいます。森の中の小屋のような佇まいが素敵で、小さい頃は祖母に連れられてときどき訪れていました。大人になり、林さんと何度かお会いする機会があったのですが、チャーミングなお人柄にすっかり魅了されるのと同時に、子どもの頃の記憶とつながり、とても感慨深かったのを覚えています。
林さんは戦後の日本を生き、お店を開く前はパリで建築家として仕事をされていました。そこで「自分の興味は建築じゃないな、私は料理が好きなんだ」と気づき、帰国してパテ屋を開くんです。女性が仕事をするのも大変な時代に、すごいことですよね。興味の範囲はとても幅広く、ご高齢になってからも旅を続け、自分がどう楽しんで生きていくかにすごく貪欲。バイタリティがあって、話しだすと止まらなくて。好きなことをやっている人は本当に美しいな、と思います。
『パテ屋の店先から
かつおは皮がおいしい』
主婦として、パテ屋の主人として、一人の女性として日々感じていること、子どもの頃の思い出や料理のコツや味わい方まで。日常を愛し、好きなことをとことん突き詰め、人生を楽しむ女性の姿がいきいきと感じられる。
当たり前のことを改めて感じ、
真の豊かさについて考える
もう一人、映画『ビッグ・リトル・ファーム』の主人公、モリーの生き方にも憧れます。都会に暮らし、料理ブロガーといういまどきの仕事をしていたモリーが、心の中であたためていた自然の循環のままの農場をやることを決意し、夫婦で田舎に移住し、夢を叶えていく話。途中、最悪な事態が何度も起こりますが、まったく諦めることなく、導いてくれる人を信じ、常に笑顔で乗り越えていく姿が本当に素晴らしい。自分の中で変わらないイメージがあり、信じて進んでいくとあんなに素晴らしい世界ができるんだ、壁をつくっているのは自分かもしれない、と気づかされます。
普段の生活の中でも空や木々など、身近な自然に触れることができますよね。そのたびに私は、ありがたいなと感じ、力が湧いてきます。人間は自然の一部であり、自然はすべて循環している。モリーの姿を見て、そんな当たり前のことを改めて感じ、真の豊かさについて考えさせられます。
『ビッグ・リトル・ファーム
理想の暮らしのつくり方』
自然の厳しさに翻弄されながら、そのメッセージに耳を傾け、荒れ果てた農地を未来につながる循環型の農場につくり上げていった夫婦の8年間の記録。雄大な自然、動物たちのありのままの姿をとらえた美しい映像も必見。
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