私らしく。

この生き方に憧れる#03

COLUMN 心のおやつ| #この生き方に憧れる

さまざまな目線になれた映画『サニー』9年後の再鑑賞

いきいきと人生を送るための
ヒントが詰まった本や映画の世界。
そんな憧れの生き方について、
川内倫子さんに寄稿していただきました。

川内倫子さん

かわうち・りんこ 滋賀県生まれ。2002年に『うたたね』『花火』で第27回木村伊兵衛写真賞受賞。最新刊に、写真集『Des oiseaux』『Illuminance』がある。

最期まで自分らしく、
愉しく過ごせるかを問う

この映画が日本で公開されたのは2012年のことだ。当時、主人公と同世代だった自分は登場する7人のサニーのメンバーたちそれぞれに感情移入して見入り、笑ったりはらはらしたり、泣いたりしながら忙しく観た。自分はどのキャラクターに近いのだろう、と考えると、どの人物とも違うけれど、少しずつすべてに当てはまるような気もした。

「映画館ではなく、当時一人暮らしの自宅で観た」という川内さん。それから約9年。改めて観なおし、新たな発見があったそう。

当時の自分と重ねた、
チュナの生き方

余命2カ月と宣告されたチュナは、独身で会社を経営しているという設定だ。リーダーであるチュナは責任感が強く、命の終わりが近づくなか、身体的な苦痛を伴いながらも友人たちの行く末を心配している。物語のなかに恋人や親戚は登場しないので孤独な生活だったのかもしれない。ただ演じているチン・ヒギョンの毅然とした美しい表情が、彼女の抱える孤独も苦悩も優しさも、すべてを物語っているように見えた。

彼女の状況は、当時の自分と設定的には一番近い。チュナのようにお金持ちではないし、大きな会社もないが、自分も個人事務所を持ち、独身で仕事が中心の生活だった。ただ、あの頃の自分はチュナのように死の恐怖に耐えながら、友人たちの未来を心配する余裕はなかっただろう。毎日の仕事に追われ、自分のことばかり考えていた。自分は彼女と同じように死の間際になって他者の幸せを望み、それを実行に移せるだろうか。そのようにありたい、と思ったことを覚えている。

9年の年月とともに増えた
さまざまな目線

そして日々は過ぎ、独身だった自分は結婚して娘がひとりいる状況に一変した。その状況で久しぶりに映画を観なおすと、9年前に観たときとは違って、高校時代と40代の自分の目線に加えて母親目線で観る自分が増えていた。ナミの娘がトラブルに遭ったときは我がことのように憤り、ポッキが娘に会いたいと号泣するシーンでは自分も同じく娘に会えない辛さを想像し号泣した。生きている人の分だけそれぞれにドラマがあり、大小かかわらずさまざまな問題を抱えながら日々は進んでいく。そのことをしみじみと噛みしめる年齢になったというのもあるのだろう。サニーのメンバーを通して図らずも自分の人生を見つめなおす時間になった。

そうして改めてチュナの偉大さに気がついた。チュナはほかのメンバーに起こっている悲惨な状況に対して、まるで私が娘に対して思うくらいの強い気持ちで一緒に怒り、泣き、心配し、自分なりのやり方で明るい方向へ導こうとしている。それは高校時代から変わらずに一貫していた。

彼女は生まれ持った母性と大きな愛情で、メンバーの母親的役割を最期まで全うしたのだ。自分がリーダーだという自覚と責任感があるがゆえだろうし、だからこそ仕事も成功したのだろう。リーダーになれる人はいつでも自分以外のメンバーのことを一番に考えるのだ。そして死と孤独と向き合い、それでも最期の日々を愉しむことを諦めず、他者への愛を持ち続けた。それを行動で表すことはなかなかできないことだろう。

チュナが教えてくれた
人生を愉しむということ

年を重ねて、死に近づいてきたせいだろうか。より実感を伴って、彼女のように最期を迎えられたらと思うようになった。チュナを通して、いつか来るその日のための準備を始めよう、より一層残された日々を愉しんでいこう、と思えた。

エンディングロールで「Time After Time」が繰り返し流れる中、それぞれが人生の主人公なのだとチュナが伝えているように思えた。

 『サニー 永遠の仲間たち』?2011 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

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高校時代、いつも笑い合っていた仲のいい7人。ある事件がきっかけで離ればなれになった彼女たちが25年後、再び大切な友情と人生の輝きを取り戻していく姿を描いた韓国映画。日本版リメイク作品もある。