食事の内容が重い時
次の食事で意識すべきこと
——貝原益軒の『養生訓』には、「食」について多くの記述がありますが、中でも頻繁に出てくるのが、「食べ過ぎ」を戒める文章ですよね。
そうですね。
例えば、「珍美の食に対すとも、八九分にてやむべし。十分に飽き満るは後の禍あり(珍しいものや、おいしいものに出合っても腹八、九分でやめること。腹いっぱい食べるのはあとで禍がある)」などと書いています。
——でも秋って、自然の恵みがふんだんにとれる季節ですよね。おいしい野菜や果物が出回るし、暑さで低下していた食欲も回復してきて、つい食べ過ぎてしまいがちです......。
いや本当にその通りです。
私も昨日の夕食のサンマがおいしくて、ついご飯をお代わりしてしまいました!
だから益軒さんの言う通り、今朝の朝食は軽めにしたんですよ。
——益軒さんはそういうことも言ってるんですか?
はい。「朝食、肥濃(ひのう)の物ならば、晩食は必淡薄(かならずたんぱく)に宜(よろ)し。晩食豊腴(ほうゆ)ならば、明朝の食はかろくすべし」と言っています。
これは「朝食がしつこいものであったら、夕食は淡白なものがよい。夕食でたくさん食べたなら、翌朝の食事は軽くしなさい」という意味。
実はここには、最近話題になっている「時間栄養学」の考え方が含まれているんです。
生活が不規則な人ほど
「時間栄養学」が役に立つ
——「時間栄養学」って難しそうだけど、どういうことですか?
「何をどれだけ食べるか」だけでなく、「いつ何を食べるか」に注目した新しい学問なんです。「体内時計」はご存じですか?
——なんとなく。ノーベル賞を受賞した研究ですよね?
そうそう。2017年に体内時計の研究がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで、「時間栄養学」も注目されるようになりました。
時間栄養学とは、「体内時計」の働きに基づいて、食事のタイミングや内容を考慮した栄養学のことです。
例えば、活動を始める朝には、卵などのたんぱく質を積極的にとることで、体内時計の調節に役立ちます。
夜は、糖質や脂質が多いものを控え、食物繊維の豊富な根菜類などをとるのがおすすめです。
さらに夜間の消化吸収を妨げないよう、夕食はできるだけ早めに済ませるのが理想的。こんな具合です。
——なるほど。江戸時代からそれに注目していたとは、さすが益軒さんですね! でも、食事の内容とタイミングを両方考えないといけないとなると、なんだか面倒な感じ......。
もちろん、忙しく毎日を送る私たちが、常に「時間栄養学」に沿った正しい食生活を続けるのは難しいことですよね。
たまには朝食がコーヒーだけになってしまったり、会食で夜遅くヘビーな食事をとったりすることだってあるでしょう。
だからといってすぐに病気になるわけではありません。私たちには、体のバランスを整える「恒常性」が備わっているからです。
——それを聞いて少し安心しました。
それに、食べる量ではなく「時間帯」を意識することで、健康になれたりダイエットに役立ったりするんですから、知っておくとお得だと思いませんか?
——確かに。「食べてはいけない」ではなくて、「時間帯を考えて食べよう」と言われると、やってみようかなと思いますね。「時間栄養学」のこと、もっと知りたくなりました!
食事の時間が不規則な人や、つい食べ過ぎる人ほど、「時間栄養学」を知って役立ててほしいですね。
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