私らしく。 by 再春館製薬所

間地大輔のゆるっと養生訓#06

間地大輔
江戸の名著に学ぶ健康法。「季節の変わり目」編

column 連載| # # # #

連載

平均寿命が50歳だったといわれる江戸時代に、84歳まで生きたといわれる貝原益軒。病気にならない術、長生きする術を書いた『養生訓』の教えを現代人の私たちが取り入れる方法を探るコーナーの6回目です。今回のテーマは“季節の変わり目”。「令和の益軒さん」こと研究員の間地大輔さんと一緒に考えます。(聞き手・臼井美伸)

寒暖の差が大きい春に
心がけること

ようやく寒さがやわらいで、外出しやすい季節になりましたね。

——そうですね......。でも私、今日は風邪気味なんです。昨日薄着で出歩いていたのがよくなかったのかな。

臼井さんのように、この時季に体調を崩す人は思った以上に多いんですよ。
寒さが弱まってくると動きやすくなり、活動範囲が広がりますが、気候は「三寒四温」といって、寒暖の差が大きく安定しませんよね。そのため体が変化に順応できず、自律神経が乱れがちなのです。

——なるほど。確かに毎年、この時季に体調を崩している気がします。

益軒さんも『養生訓』の中で、まさにそれについて書いています。
「春は陽気発生し冬の閉蔵にかはり人の肌膚(きふ)和して表気やうやく開く。然るに、余寒猶烈しくして風寒に感じやすし」という言葉があるんです。すなわち、「春は陽気が発生し、冬に閉塞(へいそく)した人の皮膚をやわらかにし、表面の気が開き始める。しかし余寒がまだ激しいから、風の持つ寒気に感じやすい」という意味です。

——「春といってもまだ寒い日もあるから、油断してはダメだよ」ってことですね。ほんとだ、益軒さんってすごい!

昔よりもいまのほうが、さらに寒暖の差は激しくなっています。
この時季は、首元や足元を冷やし過ぎないようにするといいですよ。ストールを使ったり、足首までの靴下を履いたりするのがおすすめです。
体を温める食事を取ることも、心がけてくださいね。

「陰」と「陽」のバランスを
整えることで健康に

以前「体の1日のリズム」についてお話ししたのを覚えていますか?

——「朝になったら太陽の光を浴びて、夜に近づいたらリラックスすることを意識しよう」っていう、あの話ですね?

そうです。実は、四季にもリズムがあって、それぞれの季節に合わせた過ごし方を意識することが大切なんですよ。

——へぇー。おもしろそう。

漢方には「陰と陽」という考え方があります。
「陽」は、太陽の暖かさ、明るさ、動き、エネルギーが満ち、潤う、といったイメージ。逆に「陰」は、寒さ、冷たさ、暗さ、静かさ、滞る、エネルギーが小さくなるというイメージです。
1日でいうと、昼が「陽」で夜が「陰」。季節でいうと、冬は「陰」ですが、春~秋は「陽」が強い季節と言えます。

——陽と陰では過ごし方が違うんですか?

「陽」の季節は太陽の光を浴びて、体を動かして免疫力を上げる。冬に備えて筋肉をつけることも大切です。
一方「陰」の季節はあまり動かないので、栄養をたっぷり取る必要がありません。暴飲暴食に気をつけて、無理せずに過ごします。

——春は、ちょうど陰から陽に移り変わる時季なんですね。

その通り。陰と陽のバランスが半々なので、体調管理が難しいのです。
「焦らず、ゆるりと」「いきなりではなく、少しずつ」陽のエネルギーを取り入れていくのが、自然のリズムに乗るコツ。いきなり冷たいものを取り過ぎたり、激しい運動をし過ぎたりしないほうがいいですね。

——春は、どんなふうに過ごすのがいいのでしょう?

「陽」のスイッチをオンにしエネルギーを高めるためにも、早起きしてみましょう。太陽の光を浴びると、冬に欠乏しがちなビタミンDを生成することができます。
無理なく陽のエネルギーを高めるために、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動をしたり、趣味や自然散策でのリフレッシュもおすすめです。
一方、夜は再び「陰」のエネルギーが強まるため、早めに就寝し、質のいい睡眠をとることで心身が整います。

——季節のリズムと1日のリズム、それぞれの「陰と陽」のバランスを意識することが大切なんですね。

春は新しいスタートの季節でもありますから、環境が変わって、緊張の日々という方もいるでしょう。寒暖差も、ストレスの原因になります。
自律神経を整えるためには、「深い呼吸」をすることが大切。ヨガや太極拳といった運動は、深い呼吸を伴うのでおすすめです。
自然の中で緑を目にすることも、うつ病の予防にもつながりますよ。
何かと不安定なこの季節をすこやかに乗り切ることが、気持ちのいい1年を過ごす鍵と言えます。

——わかりました! いきなりエンジン全開ではなくて、少しずつ陽のエネルギーを取り入れることが大切なんですね。
今日は、体が温まるものを食べて早めに休もうっと。

そうですね。ビタミンDがたっぷりとれるきのこ鍋なんておすすめですよ!

更新

間地大輔

まぢ・だいすけ 1976年生まれ。再春館製薬所薬剤師。「人生の8割を笑顔で」が自身の目標。専門の薬学を生かして「自己回復力を高める養生」を届ける活動を続ける。