私らしく。 by 再春館製薬所

不調を整える薬膳ごはん入門#04

さいとうゆみこさん
食材の色と香りを取り入れて心を養生。旬野菜たっぷり素麺

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「なんとなく調子が悪い」。そんな身体の声はついおろそかにしてしまいがち。でも、毎日をもっと軽やかに過ごすには、小さい不調も早めにケアしたいですよね。心と身体をいたわる食養生法【薬膳】を学ぶシリーズ第4回。今回は「点心・発酵 薬膳ごはん和」のさいとうゆみこさんに食事が心にもたらす効果についてお話を伺いました。

心の不調は
身体からもケアできる

かわいらしい食器に盛られた彩り豊かな食材の数々。神奈川県藤沢市で「点心・発酵 薬膳ごはん和(ニコ)」を営むさいとうゆみこさんがつくるごはんは、見た瞬間に気持ちが高まるのを感じます。

編集者、ファッションスタイリスト、マッサージ師を経て、お店をオープンしたのが2008年。さまざまな職種を経験してきたさいとうさんですが、一貫して「心に寄り添う仕事だった」と振り返ります。

「スタイリストは、立場が異なるたくさんの人たちが関わる現場で仕事をしなければなりません。モデルさんの気持ちを和ませることをはじめ、人の気持ちを読む、気を配るということをすごく勉強させてもらったと思います」

「人の話を聞くのが好き」と話すさいとうさんは、8人きょうだいの4番目。昔からみんなの話を聞くポジションだったそうです。

出産を機にスタイリストの仕事を辞めた後、子育てが落ち着いたタイミングで仕事に復帰。マッサージを選んだのは、心のどこかで身体に関わる仕事がしたいとずっと思っていたからと話します。

「父が、病院には一切行かせないという方針だったんです。おなかが痛い時は庭からアロエを持ってきて、これをかみなさいって。湿布も市販のものではなく、小麦粉とお酢を練ったものをガーゼに塗って貼るんですよ。『薬に頼るのではなく、自分の身体の力で強くなれるから』と、よく言っていました。いま思えば、身体への興味を持ったのも父の影響が大きかったかもしれないですね」

当時働いていたお店がエッセンシャルオイルを使っていたこともあり、香りに興味を持ったさいとうさん。マッサージが直接身体的な改善を図るものだとすると、香りがもたらす効用とは? とアロマセラピーの勉強をしている時に、「心と身体は一つ」という言葉に出合います。

実際にお客さんと接するなかでも、例えば心配事があると眠れなかったり、心の不調から身体に疲れが出てしまっている人が圧倒的に多かったのだそうです。

「『健康な身体に健康な心が宿る』という言葉がありますが、その身体をつくるのは食べ物ですよね。だから自然と食事に興味を持つようになっていきました。さまざまな食養法を試した中でも、自分にピッタリ! と思ったのが薬膳だったんです」

食材の色と香りで
気をめぐらせる

薬膳は特別な食材を使わずとも、日々の食生活の中で実践できること。

それはさいとうさんにとって大きな発見でした。他の食養法は、使える食材に制限があったり、調理法が手間に感じたりするのに対し、薬膳は楽しく生活に取り入れられたと言います。

さいとうさんが食事において大切だと感じていることは、気持ちがふっと上がること。それには、色や香りがとても重要な要素だと考えているそうです。

「薬膳には『五色』といって、身体のバランスを整えるには五色の食材を意識して取るといいという考え方があるんです。それぞれの季節に対応した色があって、例えば夏だと、トマトや赤パプリカなどの赤い食材を多めに取ることで、その時季に起こりやすい不調を防いでくれるんですね。もちろん偏りはよくありませんので、他の色も取り入れつつ、『季節の色を少し多めに』がおすすめです」

ランチセットのビビンバは五色を意識してつくったメニュー。青、赤、黄、白、黒の五色は、それぞれ春、夏、土用、秋、冬に対応しています。

お店で開催している薬膳教室では、「スーパーで買い物をする時は色で選んでみてください」と話しているそうです。すると、初心者の方でもとてもリラックスして取り組んでくれるのだとか。

「でも、1食や1日で五色は大変ですからね。1週間で五色でいいんですよ。なんでも詰めてやろうと考えないで、ゆっくりやりましょうとお伝えしています」

色とりどりの食材を見ると自然と気持ちが高まるのと同じように、心に作用してくれるのが、もう一つの「香り」。アロマオイルやハーブティーはなじみがありますが、普段の食事で香りを取り入れることを意識する人は、案外少ないかもしれません。

「私は気分が落ち込むと、よくバジルを食べています。気がふさぎ込んでいる時って、身体全体を動かすエネルギーである『気』が滞っている状態なんです。バジルは気をめぐらせてくれる食材で、自律神経のバランスも整えてくれます。シソや三つ葉、パクチーなどもいいですね。自分の好きな香りのものを選ぶといいと思います」

元気、やる気などに関わってくる「気」。気が作用しないと、全身に栄養が行き届かなかったり、食欲が落ちたりと、身体にも影響が出てきてしまうんだ。気のめぐりには、香りの高いニラやかんきつ類などもおすすめだよ。

お店のオリジナルの薬膳麻辣油はさわやかな香りが特徴。その秘訣(ひけつ)は青さんしょう。かんきつ系の香りがフワっと香り、爽快な気分になります。
「点心の見た目が大好き」というさいとうさんは、点心マイスターの資格も取得。蒸している時に湯気を眺めていると、気持ちもほぐれるのだそう。

今後は心理学も学んでいきたいというさいとうさん。そこにはやはり、不調な人の心に寄り添いながら、元気にしたいという思いがあるといいます。

「人の気持ちって、いい時と悪い時と両方ありますよね。ネガティブな感情はよくないと思いがちですが、どちらもあることが自然なんです。でも、一つの感情が長く続くと身体に不調が出る原因になってしまう。だから、きちんと受け止めてケアしてあげることが大切です」

自分はどんな時にうれしくて、どんな時に悲しい気持ちになるのか。忙しい毎日でも、一瞬立ち止まって心の動きを観察する。そんな時間をつくることもまた、すこやかに過ごすために必要な養生なのかもしれません。

落ち込みやイライラに
心に効く薬膳レシピ

色と香りで楽しむ
旬野菜たっぷり素麺

【材料(2人分)】
アサリ.........300g
素麺(そうめん).........200g
ナス.........1本
オクラ.........4本
プチトマト.........4個
レッドスプラウト(カイワレなどでも代用可).........1/2パック
レモン.........1/4個
ミョウガ.........2個
ショウガ.........親指大1片
大葉.........5枚
バジル.........10枚
パクチー.........適宜
植物油.........大さじ2
料理酒.........100ml
水.........100ml

A
麺つゆ(2倍希釈).........大さじ1
ココナッツミルク.........100ml
ナンプラー.........小さじ1
きび砂糖.........小さじ1/2

【つくり方】
❶深めのフライパンに砂抜きしたアサリ、料理酒、水を入れ、ふたをして中火にかけ、アサリが口を開いたら取り出す。
フライパンに残った蒸し汁にAを混ぜてさっと温める。
❷ナスは一口大の乱切りにし、多めの植物油で軽く焼き付けるように揚げ焼きにする。
❸プチトマトは縦半分、スプラウトはそのまま、大葉、ショウガ、ミョウガは千切り、レモンはくし切りに。オクラは素麺をゆでた湯でさっと湯がき、縦半分に切る。
❹ゆでた素麺は流水で締めたら器に盛り付け、❶のスープを注ぐ。アサリと❷のナス、❸の具材、バジル、パクチーなどを盛り合わせ、塩(分量外)で味を調える。

点心・発酵 薬膳ごはん和

  • 点心やビビンバ、グリーンカレーなどジャンルにこだわらない薬膳料理を提供。夜限定の単品メニューもあり、お酒と薬膳料理を一緒に楽しめます。不定期で薬膳講座やイベントを開催。

    神奈川県藤沢市鵠沼海岸3-2-21
    TEL: 0466-77-7278
    定休日:日曜・水曜

    営業時間:
    11:00~15:00
    18:00~23:00

文:竹ノ上ひとみ 写真:関めぐみ 監修:田野岡亮太(再春館製薬所)

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さいとうゆみこさん

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編集者、ファッションスタイリスト、マッサージ師を経て2008年に「点心・発酵 薬膳ごはん和」をオープン。薬膳アドバイザー・点心マイスター・JAA認定アロマセラピスト・女性ホルモンバランスケアプランナー。