私らしく。 by 再春館製薬所

岡 清華さん
「満たされない」焦りから、解放されたきっかけ

story ストーリー| # # # # #

ストーリー 自宅にて。愛犬のプルシャと一緒に。

自分のしたいことに忠実に、自分らしい笑顔で楽しく毎日を過ごすコツ。
そんな心の持ちようを、管理栄養士でアーユルヴェーダ・ヨガ講師として活動する岡清華さんに聞きました。

自然と調和することで
見つけた自分

「私らしくいるということは、向かい風に向かってがむしゃらに進むような生き方ではなく、自分が心地いいと感じる選択をし、追い風に乗るようにしてスルスルと人生を進むようなもの。たとえば、心を変えようとして無理やりに心をコントロールしようとするよりも、食べものを変えることによって心が変わったりする。逆に食事を変えたいと思ったとき、食への姿勢や命への向き合い方など、心のあり方が変われば食べるものも自然と変わります。そうして自然に生まれてくる気持ちの余裕から、いままで手が回らなかったことにも意識が向き、行動も広がり、引き寄せも増えていく。心地よさを常に選択することで、先ほどの向かい風と追い風の話のように『最小の努力』で『最大限の結果』を引き出していくことがかなうのだと思っています」

頭で考えるより、心が感じることを優先させるようになったという岡清華さん。それは誰にとっても決して難しいことではなく、自分らしく生きるための、一つの重要なカギだと感じている、といいます。

高校時代、ダイエットが成功しても
満たされなかった

「自分は、どうしたら幸福に満たされるのだろう」
最初にそんな疑問を持ったのは高校生の頃。ダイエットがきっかけでした。

「当時の彼氏に『少しやせたら?』といわれて。もともと、何かにハマると一直線。朝5時に起きて1時間走り、朝食はヨーグルトと食物繊維たっぷりのシリアルに、はちみつときな粉をかけ、“体にいい”といわれるものを全部のせ(笑)。学校から帰宅したあとは腹筋エクササイズ、さらに夜10時にバイトが終わったらまた1時間走って……」

「高校時代は、食べ物がカロリーなどの数字にしか見えなかった」

「目的が“やせる”こと、それだけでした。体脂肪率は9%になり、見た目はシャープになったけど、なぜか満たされない、幸せじゃない。このモヤモヤはなんだろう、何が私を満たすのだろう。それを探したいって。いま思えば、この気持ちがいまの原動力なのだと思います」

偏差値28から管理栄養士の道へ

解決のための方法として、「栄養や人体のことを勉強したらわかるかも」と管理栄養士の資格を目指します。ここでも思い込んだらまっしぐら。勉強に一切興味がなかったため偏差値は28でしたが、そこから猛勉強し、管理栄養士資格取得に実績のある関西の名門校へ合格しました。

「入学してからも勉強の日々。4年後、資格試験を受ける頃にはもう、受かるための方法が全部わかっていました。なのに、『あれ、やっぱり私、食べものや人体のことを理解したつもりでも、幸福への方法が全然わかっていない。ここに答えはなかったんだ』と気づいたんです。どんなに食や栄養の勉強を極めても、自分に対してのモヤモヤは消えない。満たされず、わからないことだらけでした」

カウアイ島へ。
アーユルヴェーダとの出合い

「管理栄養士は人を指導する仕事なのに、自分の幸せすら理解しきれていない。自分のことが分かっていないのに、人に何かを教えるなんてできない。私は、自分が満たされるものについて理解できるまで、何が人を幸せにするのか? を追究していこうと決意していました。ネットで検索するうち、インドで生まれた世界最古の伝承医学、アーユルヴェーダの存在を知りました。人の体質の違いや心と体の関係性など、栄養の勉強では解決できなかったことのヒントがあるかもしれない。これだ! と運命を感じ、資格試験を終えてすぐ、カウアイ島でアーユルヴェーダを伝えている女性に会いに行きました」

そこで過ごした1カ月は、これまで実践してきたすべてのことの真逆だったといいます。
「朝4時に起きてじっと座らされるんです。そのころ私は毎朝走っていたので、何かしら動いていないと気が済まなくなっていて、じっとしている静かな時間はとても苦痛でした。でも師匠は私に『変わりたいならば一度立ち止まり、自分と静かに向き合う時間が必要です。落ち着いてゆっくりと、静かに過ごすことを楽しんでみて』といいました」

世界最古の伝統医学とされるアーユルヴェーダと、中医学から日本で独自の進化を遂げた漢方は、いずれも東洋医学であり、「未然(予防)を重要視する」「人間が本来持つ自然治癒力を活かす」など共通した根本がある。

「あなたにはお米が必要」。
そして自分らしさを取り戻す

食事についても劇的な変化が起こります。

「『あなたには(人には)お米が絶対必要だから、バランスよく食べてみて』といわれました。お米なんてもう何年も食べていません。『太るから嫌だ』と拒絶すると、『じゃあ、あなたは何のためにここに来たの? 変わりたいから来たんでしょう。1カ月だけ私のことを信じて。人生はあと何十年もあるんだから、嫌だったら元に戻せばいい』と」

お米は玄米ではなく白米派。それが自分の体には合っているのだといいます。

「半信半疑のまま、食事量の60%を米にする食生活をはじめ、師匠にいわれたことを全部、1カ月続けました。するとまるで世界が変わったかのように、不安定だった自分が次第に落ち着いてきたんです。そして1日が始まり、1日が終わるときに、何もしていない、ただ呼吸をしているだけなのに、なんでこんなに気持ちよく、幸せなんだろうって、幸福感を感じるのです。たとえば寒い日に温かいお風呂につかってふ~、幸せ~って思いますよね。そんな幸福感がずっと続いているんです。はじめての経験でした」

「思えば、人の歯の60%は穀類をすりつぶす臼歯で、犬歯は12%ほどです。穀類と動物性のタンパク質をとるにあたって、そのバランスを食卓に反映するのは自然なことなのかもしれません。そして日本人は古くから米を食べてきたし、神事など神聖な場に祀ってきた存在でもありー。さらに漢方で『気・血・水』という概念があるように、東洋医学で『気』はすべての根源と考えられていて、旧字体の『氣』という字には『米』の字が含まれています。その果てしなく長くて深い歴史がDNAにすり込まれた日本人の私にとって、お米を食べることで心身の調和がとれるのは、きっとごく当然のことだったんですよね。そんな『答え』にたどり着くためのヒントを、間接的にアメリカ人の師匠が教えてくれたと受け取っています」

「この道さえ行けば大丈夫」と
やっと思えた

その体験を通し、「自分に合ったものを選べばいい」という「自分らしさ」を確立した岡さん。ずっと感じていた、何か満たされない……あのモヤモヤが、スッと晴れていきました。

「プルシャはいつも日向ぼっこしています。太陽と体内時計と自律神経のつながりを本能で理解し、『自分が心地いいこと』を選んでいるんですね」

「私は子どもの頃からみんなと同じことができなくて、学生時代は悩んでいましたし、社会人になってからは、それを『人間失格』的にいわれてきた経験もありました。それを苦にしてメンタルを崩してしまう人も多いですが、私は今では、それを個性だと受け止め、楽しめています。みんな違ってみんないい。自分に嫌なところがあっても、その短所は長所となり得ますし、自分らしく生きる上で大切な特徴になると思います。『自分にとって心地いいこと』を自分で見つけていくことが、長期的に自分を幸せにすることにつながるはず。私にとっては、その心地よさと自分らしさを開花させる人生の道標になったのが、アーユルヴェーダでした」

ストレスフルなときこそ、
「切り替え術」深呼吸を

「吸う」より「吐く」を大切にしながら、おなかの底からゆっくりと深呼吸を。

「アーユルヴェーダでは、呼吸と体・心の関係は密接であると考えられていますが、実際に『深呼吸』は簡単な気持ちの切り替え術です。自律神経には、緊張・ストレス状態に関わる『交感神経』と、リラックス状態に関わる『副交感神経』の2つがあり、通常自然なメカニズムの中で1日を通してそれぞれが交互に優位になるよう働きます。呼吸もそれに伴い、心配ごとや緊張感があったりすると浅くなり、安心したりリラックスしていると深くなるため、不安を感じているときなどは、人の呼吸は浅くなります。
ですから、ただ深呼吸をすることだけでも副交感神経が優位になるので、心や体もちょっぴり楽になりますよ。そのリラックス術をもっと気軽に取り入れるために、『食べ始める前に、深呼吸する』のは、おすすめです。食事とセットにすれば習慣化され、毎日忘れないですし、内臓機能が活性化され、食事も消化しやすくなります。何よりとっても気持ちいいんです」

亀のように、
一定の速度で歩き続けたい

一度コレ!と決めたらとにかく全速力、急発進、急ブレーキで進んできたこれまでの岡さん。「『うさぎと亀』の逸話でいえば、もともとは完全にうさぎタイプ」と笑いますが、いまは「自分の体力を知り、目的の場所までペース配分をしながら一定の速度で歩く亀」が、結果的に早くゴールでき、日常で当てはまることもとても多いと気づいたといいます。

「私たちはずっと、1+1の答えを求める教育をされてきました。でも『2』の答えを出すには0+2や、4-2など、いろいろな方法があります。こうしたらこの結果になる、という考え方にこだわると、つまずく。『2』という結果を出すためには、手段は一つじゃなく、いろんな方法があるよね。そう考えられるようになると、人生の選択肢はもっと増えます。つらかったら無理をしてその集団に属さなくても、勇気を持ってその場所を離れてもいいんです。本当に自分が心地いいと感じる自分でいるために、もっとマイペースでいい。それをお互いに認め合うことで、自分とは違う、人の価値観も尊重できるようになると思いますね」

岡さんの「自分らしさ」のコツは、自分にとっての「心地いいこと」を知り、選択していくこと。そして無理をしないこと。
それが「私らしく」いるための、最高の追い風になっているようです。

(後編へ続く)

photo:HASHIMOTO Hirotaka

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岡 清華さん

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おか・さやか 1993年、兵庫県生まれ。「一人ひとりがもっとも輝くベストな心身を知り、持続可能な人生をサポートする」をコンセプトに、2019年「MOTHER」創業。アーユルヴェーダに付随する各事業を全国で展開するかたわら、『無敵のデトックス大全―溜まっているオトナを巡らせる!』(ワニブックス)を2022年3月に上梓。