「仕方ない」や「違和感」を
放置せずアクションに移す
デパートの催事などで人気のチョコレートフェア。国内外の有名店が集う華やかなイベントで、近年注目のブランドが『QUONチョコレート』です。
「地域の活性化」と「食品ロス」の解消が同時に叶う、日本各地の食材を使用した"ディスカバリージャパン"というコンセプトも話題を呼んでいます。
そんな彩り豊かなチョコレートづくりに携わる人々も、実に多種多様。
スタッフ約650名のうち約8割が、心や体に障がいがある人、LGBTQなど、なにかしらの生きづらさを感じている人々や、シングルペアレント、子育て中のママ、家族を介護している人などです。
『QUONチョコレート』代表の夏目浩次さんが目指すのは、互いを認め合う、区別されることのない「シンプルな社会」。
そう思ったきっかけは、20年前に遡(さかのぼ)ります。
「障がい者の置かれている就職状況や賃金を知って愕然(がくぜん)としたんです。日本は豊かな国だといわれているのに、障がい者はもちろん、高齢者など、何らかの属性を理由に就職ややりたいことに制限をかけられている。選択肢が狭まることを『仕方ない』とするのはナンセンス。同じ人として、いつでも誰でもチャレンジできる社会であってほしいと思いました。
また、採れすぎた野菜が廃棄されるなど日本では食品ロスが取りざたされる一方で、アフリカでは人々が飢餓に苦しんでいる。これってシンプルにおかしいですよね。違和感をそのままにせず、何か行動する人が増えれば社会は変えられるはずです」
そこで、障がい者の働く場をつくろうと、約10年の試行錯誤の末に見つけたのがチョコレートでした。
失敗してもまた温めればつくり直せるチョコレートは、障がい者や未経験者でも臨みやすい魔法の食材。こうして一人ひとりの個性を活かし、凸凹でカラフルな社会への"誰も置いて行かない"QUONの挑戦がはじまりました。
障がいを個性と捉え
生まれる可能性
チョコレートづくりの工程は細分化でき、多くの人の個性や得意分野を活かせるのも利点です。
「僕たちには誰にでも得意・不得意はある。だから、できないことではなく、できることを探し、互いに補完し合うことが必要。重度の障がいがある人たちも働く工房『パウダーラボ』では、同じ工程を集中して続けられる人、手間暇を惜しまないていねいさをもった人などがいて、一人ひとりの特性を活かすことで、強みにもつながりました」
信じてくれる人がいる環境でチャレンジするから自信ややりがいを感じて成功が生まれる。
責任を果たすことで成長し、ほめられることでさらにその期待に応えようとチャレンジの輪が広がる。
障がい者の働きやすい職場をつくる中で考え出された工程が高品質なチョコレートと正当な対価を生む。それは新たな価値が見出されたことを意味します。
個性を認め合って状況を改善し、付加価値を生んでいくことは社会すべてに反映できる考えです。
ブランド名に込められた
未来への願いとは
「まずはプロダクトで勝負し、味で評価されたいという想いが強い。世界のブランドが集結するショコラの祭典『アムール・デュ・ショコラ』で1位になる目標を掲げるのも、彼らに『あのブランドで働いている』と自分の仕事に誇りをもってほしいから」と夏目さん。
誰もが自分の仕事に誇りを持てる社会。その想いはブランド名にも。
「(ブランド名の)QUONは遠い過去・未来を意味する『久遠』が語源。『障がい者雇用なんて言葉、昔はあったよね。働く場所がないなんて過去の話だよね』と、いまあるナンセンスを笑いながら前に進んでいく社会が来ることを願って名づけました。決して美しい物語にしようとは思っていません。『失敗しても、何度でもやり直せる』。もがきながら進んでいけば、できることはあると思っています」
夏目さんの名刺の肩書は"指揮者"の意のコンダクター。
バディたちと奏でるカラフルな音色に耳をすまし、"よりよい明日"のために自分にできることを、少し立ち止まって考えてみてもいいかもしれません。
再春館製薬所では、約30年前から障がい者雇用を率先しておこなっているよ。「仲間たち」というチームを組み、緻密(ちみつ)かつ正確さが求められる梱包などで得意を活かす彼らは、なくてはならない存在。社内で最も多くの「チャレンジ」が生まれ続ける場所の一つでもあるんだ。
QUONチョコレート 豊橋本店
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QUON CHOCOLATE
愛知県豊橋市松葉町1-4
TEL:0532-53-5577
営業時間:10:30 ~ 20:00
定休日:月曜
系列の焼き菓子専門店『QUONチョコレート ドゥミセック』が隣接
https://quon-choco.com/
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