私らしく。 by 再春館製薬所

麻生要一郎さん
「誰かのため」が原動力。でも無理はせず、気も遣わせずに

story ストーリー| # # # # #

ストーリー

ほっと心が和らぐような家庭的な料理が多くの人たちに支持されている麻生さん。そんな料理にも表われている力の抜けた自然体な生き方とは──。忙しい日々の中でも大切にしている、温かな食卓の時間についてお話しいただきました。

「本日もお疲れ様でした!」という言葉を添える、日々の飾らない食卓のインスタグラムが多くの共感を得ている麻生要一郎さん。穏やかな雰囲気をまとった麻生さんにとって大事なことは、「無理をしないこと」と言います。

「自宅に友人を招いて料理を振る舞うことも多いのですが、自分とパートナーだけの食卓と違いはありません。相手の好きなものを思い浮かべながら献立を考え、その日の体調と向き合いながら食べたいものをつくっているから。日々、さまざまな方を招いて食卓を囲んでいますが、"相手に気を遣わせない食事を出したい"が信条です」

ゆえに、刺身とグラタンが一緒に並ぶのが麻生家の食卓。スーパーのお惣菜が並んでもいいし、和食と洋食が混ざり合う、まさに家庭の食卓です。
「そんなふうにハズシがあると招かれる方も気が楽だし、力が抜けて何も考えなくていい、解放されるような時間を感じてほしい」と麻生さんは話します。

家族と囲む日々の食卓は
かけがえのない時間

食卓にも表れる、相手に気を遣わせないというやさしさは、そのまま人との付き合い方、そして麻生さんの自然体な生き方にも通じているようです。

「うちを"第二の実家"として思ってもらいたいんです。落ち込んでいるとき、疲れているときこそ会いたいと思ってもらえる人でありたいですね」

そうまで思うのは、麻生さんにとって、食卓をともにする人こそが「家族」だから。
19歳で父が他界し、養父となった祖父を看取ったのは26歳の頃。その後実家で一緒に暮らした母を8年前に見送ると、不思議な縁に導かれて高齢姉妹の養子となるという稀有な経験をしている麻生さん。血縁に縛られることのない「家族」への想いがあるようです。

「とにかく本が好き」という麻生さん。料理にまつわるエッセイやレシピ本、好きな作家の愛読書、山口瞳の貴重な豆本などが書棚に並ぶ。

時には力を抜く日が
あってもいい

「自分一人だったら、料理なんかしません」と笑う麻生さん。それもそのはず、麻生さんは「誰かのために」が生きがいといいます。

「僕自身は自分が主役でなくていいと思っているんです。昔から、何事も一線引いて見ているような性格というか。周りのみんなと手を取りながら、楽しく暮らしていく。そこにしあわせを感じます」

そんな麻生さんだから、日々投稿される麻生家の食卓の風景に、心がほぐれるような安心感を覚えるのかもしれません。

《食卓に飾る花は、心と体のバロメーター》食卓に花を飾るのは、亡くなった母との約束。パッと美しく生けられたときは、心も体も冴えているな、と調子も上がる。
《食卓に飾る花は、心と体のバロメーター》食卓に花を飾るのは、亡くなった母との約束。パッと美しく生けられたときは、心も体も冴えているな、と調子も上がる。
《その日に頭に浮かんだものを、その日につくって食べる》「これが最後の食事になっても後悔がないように」と、基本的につくり置きはせず、その日食べたいものをつくっている。
《その日に頭に浮かんだものを、その日につくって食べる》「これが最後の食事になっても後悔がないように」と、基本的につくり置きはせず、その日食べたいものをつくっている。
《夕方や執筆前に本を読み、心を整える》「ゆっくり本を読むと落ち着くんです」と麻生さん。昭和のレシピ本を見ながら、その日の献立に想いを巡らせることも。
《夕方や執筆前に本を読み、心を整える》「ゆっくり本を読むと落ち着くんです」と麻生さん。昭和のレシピ本を見ながら、その日の献立に想いを巡らせることも。
《朝食はパンとコーヒー。長年続くルーティン》お気に入りの『堀口珈琲』の豆をハンドドリップで。飲みながら「今日は何をしようかな?」とその日の段取りを考える。
《朝食はパンとコーヒー。長年続くルーティン》お気に入りの『堀口珈琲』の豆をハンドドリップで。飲みながら「今日は何をしようかな?」とその日の段取りを考える。

「料理でも、『~しなきゃいけない』、なんてことはないと思います。今日は疲れたな、という日は、お惣菜をお気に入りの皿に盛るだけでもいいし、宅配ピザでもとって箱のまま食卓に並べる日があってもいい。毎日一生懸命だと疲れてしまうから、力を抜ける日があってもいいと思うのです」

無理をしなくても、心持ちや少しの工夫で食卓の時間が豊かになると教えてくれた麻生さん。最後に、「麻生さんが疲れたときはどうするのですか」と尋ねると、「そのときは猫に癒やしてもらいます」とうれしそうに笑いました。

麻生さん流、手軽にできるもてなし料理

旬の食材をたっぷり使い、冷蔵庫にある食材も有効活用。麻生家の、秋の定番レシピをご紹介します。

こっくり爽やかな和風冷製スープ
焼きなすのポタージュ

【材料(2人分)】
なす......... 2本
玉ねぎ......... 1/2個
水......... 250ml
牛乳......... 200ml
生クリーム......... 40ml
コンソメ......... 適量
塩......... 適量
みょうがの甘酢漬け......... 適量
オリーブオイル......... 適量

【つくり方】
❶ なすのおしりに十字の切り込みを入れ、グリルで柔らかくなるまで焼く(10~15分)。
❷ 玉ねぎをスライスし、水を入れた鍋でくたくたになるまで茹でる。
❸ 焼けたなすのヘタを落として熱いうちに皮を剥き、ザク切りにする。
❹ ❷と茹で汁少々・❸・牛乳・生クリームをミキサーで撹拌する。
❺ ❹を鍋に移して火にかけ、コンソメと塩で味を整える。
❻ 冷蔵庫で冷やしたものを器に盛り、千切りのみょうがをあしらい、仕上げにオリーブオイルをたらして完成。

薬味たっぷり! さっと混ぜて簡単
しめ鯖のちらし寿司

【材料(2人分)】
市販のしめ鯖......... 1枚
きゅうり......... 2本
みょうが......... 3本
しそ......... 1束
ガリ......... 適量
白米......... 2合
寿司酢......... 適量
ごま......... 適量
塩......... 小さじ1/2

【つくり方】
❶ 白米は少し固めに炊き、寿司酢を回しかけて混ぜ、冷ます。
❷ きゅうりを輪切りにして塩もみし、10分ほどなじませてから水分をぎゅっとしぼる。
❸ みょうが・しそ・ガリを千切りにする。
❹ しめ鯖をキッチンペーパーで軽く拭き、そぎ切りにする。
❺ すべての材料を混ぜ合わせて、仕上げにごまを散らして完成。

同じマンションの上階に暮らす、養母姉妹から譲り受けたという器の数々。もてなし好きという共通の価値観があり、華やかな絵皿が数多く揃う。

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麻生要一郎さん

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あそう・よういちろう 1977年、茨城県水戸市生まれ。日々無理なくつくれる手軽なレシピの提案やエッセイを執筆。広いキッチンのあるスタジオでは、気の置けない友人たちを招いて食卓を囲んでいる。著書に『僕が食べてきた思い出、忘れられない味 私的名店案内22』(オレンジページ)などがある。