人の心をワクワクさせる
デザインの秘密とは
暮らしに重きを置き、自分好みのものを選ぶ大切さが見直されている中、人気を博しているのが『アデリアレトロ』のあでやかなプリントグラスです。花や果物、動物たちが施されたポップなデザインは、昭和レトロを愛する人たちに加え、「新鮮でかわいい」と若い人たちにも支持されています。
でも実はこれ、昭和の食卓を実際に彩っていた『アデリア』の復刻版。復刻に携わったのは『アデリア』のプリントグラスをつくっていたメーカー『石塚硝子』の若手女性社員たちでした。その復刻メンバーの一人がデザイナーの杉本光さんです。
「昭和時代につくられた『アデリア』のプリントグラスを発見して、『これは絶対にいまの時代にも受け入れられる! 復刻を提案しよう』と、女性社員3人で盛り上がったことがきっかけでした。そこで、会社に残っている、当時のカタログや商品を改めて見直すことにしたんです」
杉本さんたちが感じたのが、いまにはない大胆でポップな明るさ。また、50年ほど前の印刷技術ゆえの、イラストタッチの歪みや印刷のズレが生む味わいでした。温かみのある花や動物などのかわいい柄は人の心をワクワクさせ、多くの人々に愛されるはずと直感したそうです。復刻にあたって気をつけたのは、従来のファンにも愛されると同時に、新しい世代にも受け入れられる商品を生みだすことでした。
「デザインの色柄を忠実に反映するため、当時のグラスをお持ちの方に直接お借りしたこともありました。またSNS上の愛用者たちの声をリサーチし、どのデザインを復刻させるか、ファンの声を反映させるなど、つくり手とお客様が密接につながった、いままでにない共創での商品づくりができました」
こうして、デザインが持つ唯一無二の力と、当時の空気感が再現された商品が出来上がったのです。
〝かわいさ〟の中にある
普遍の価値を見出す
プリントグラスがもつ時空を超えた〝かわいさ〟で、新旧世代をつなぐ素敵な空間も生まれています。東京スカイツリーのほど近くにある『ブラウン喫茶 デルコッファー』です。
オーナーの小芝麻紀子さんは昭和の雰囲気が漂う喫茶店を父から受け継ぎ、居心地のよさは残しつつ、かわいさや懐かしさなど、心が躍るエッセンスを加えようと、『アデリアレトロ』のグラスやお皿を取り入れました。
「このグラスを初めて見たとき、私は〝かわいさ〟を感じ、お客様に愛される雰囲気づくりにもぴったりだと思ったんです」
若い人が写真を撮っている隣で、同じようにご婦人がグラスを撮影することも。昭和を知らない世代には新鮮に、長年のファンには昔もかわいいと感じた思い出も込みで懐かしく感じられる〝かわいさ〟。心奪われる〝かわいさ〟は世代を超えた共通の価値観として共有されています。
ブームにはしたくない
長く愛されるために
世代を超えて愛される、懐かしくて新しい『アデリアレトロ』の世界観に共感した多くの会社からのオファーを受け、さまざまなコラボ企画も誕生。ファッションや文具にはじまり、ホテルの一室を「アデリアレトロルーム」に演出してしまう企画まで、多様なシーンでその世界観を楽しめるように。ただし単なるブームにはしたくないと杉本さんたちは考えています。
多彩なコラボ商品とともに『アデリアレトロ』を日常の中で愛用してもらうことで、いつも傍に置いて楽しんでほしい、カルチャーとして長く根づいてほしいと願っているそう。その延長で、愛着をもって長く使ってもらえるように、ガラスの形状やこだわりのパッケージなどに修正を加えています。
長く愛されるものは生活とともにあり、思い出が加わることで、次の世代に受け継がれていく。共通の価値観がつなぐ色褪せない思い出は、これからも世代や時間を超えて生まれ続けるでしょう。
まどろすさんが語る
母と『アデリア』の思い出
イラストレーターのまどろすさんが愛用しているのが、1970年代、お母様が結婚祝いでいただいたという白い花のプリントグラスです。
「母がとても大切にしていて、食器棚の一番よく見える場所に飾っていました。割ってはいけないと、幼い頃は普段使いができなかったほど。友達が遊びに来た特別な日だけ、このグラスで冷たいカルピスをつくってくれました。ガラスのマドラーで氷をクルクル回すあのときの母の笑顔を思い出すと、いまでも胸がキュンとします」
数年前にお母様が他界。思い出も込みで大切にしようと、まどろすさんはグラスを譲り受けました。
「『アデリア』は私にとって母そのもの。暮らしや記憶に彩りを与えてくれる存在です。モノを大切にすること、暮らしに好きを取り入れることを教え続けてくれます」
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