ふいの眠り
たくさん仕事をして、連絡もあちこちに目が回るほどした後など。
全くそんなつもりはないのに、ソファーでちょっと横になってメールを読んでいたら、寝てしまっていることがある。
温かい場所を求めてやってきた犬が、寝ている私の足にぴったりと寄り添ってくる。そして私の足に顔を乗せて眠りだす。重いな、動けないから、もう少し寝てしまおうか、そう思ってまた寝てしまう。
それはとても深い眠りで、全身麻酔でもしたかと思うほど。夢も見ず、周りの音も全く聞こえない。
そしてはっと目が覚めると、世界中がきらきらして見えて、空の色も植物の色もくっきりとしている。
体も脳も休んだ、そう思う。
夜にベッドに入ってちゃんと寝るのとは違う。
それはおやつが食事ではないのと同じだ。
ちょっぴりの甘味、気持ちの切り替え、そして深く満たされる。もしかしたらちゃんとした食事よりもより多くの何かが充填されている。
犬はぐうぐう寝ていたけれど、私がじっと見ているのに気づいて目を覚ます。
触れあっている温かさのところから、お互いに大事な命の力を惜しみなく交換しあったかのように、犬もまた元気いっぱいになっているように見える。
毎日起こりうる小さな奇跡は、そんなふうにふいにやってくる。
写真:砂原 文
本連載は、吉本ばななさんのエッセイとともに写真家・砂原 文さんの写真をお届けします。
初回は、パリで出合った砂糖菓子。
オーロラガラスのお皿の上で輝くおやつは、元気の源になりそうです。
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