私らしく。 by 再春館製薬所

不調を整える薬膳ごはん入門#002

井村真沙子さん
胃腸を整えることが元気の源。ニンジンのすりおろしサラダ

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連載

「なんとなく調子が悪い」。そんな身体の声はついおろそかにしてしまいがち。でも、毎日をもっと軽やかに過ごすには、小さい不調も早めにケアしたいですよね。心と身体をいたわる食養生法【薬膳】を学ぶシリーズ第2回。今回は「薬膳カレー&薬膳料理 香食楽(かくら)」を営む井村真沙子さんにお話を伺いました。

カレーのスパイスは
漢方の生薬に似てる?

東京・中目黒で、20年も前から薬膳料理を提供し続けている「香食楽(かくら)」の井村真沙子さん。

メニューの中心はカレーです。
「スパイスをたくさん使うカレーは、健康にいいイメージですよね。実際に、ターメリックやクミンなどは消化を助けてくれますし、シナモンは身体を温めてくれる効能があります」

しかし、一言でカレーといってもつくり方や材料はさまざま。スパイスは油で炒めるのが一般的ですが、油分が多くなると胃もたれにつながってしまうことも。

「ホールのスパイスの方が香りはいいのですが、油でしっかり炒めないと成分も香りも抽出されないんです。なので、身体優先であれば粉状のものを使うのがおすすめです。粉だと溶けやすいですし、そのままカレーにちょっと足してみたり。気軽に使えますよ」

カレー例イメージ
香食楽のカレーには、シナモンや陳皮(ちんぴ。みかんの皮を乾燥させたもの)などの生薬(しょうやく)も入っています。生薬とは、漢方薬の原料になる自然物を加工したもの。
野菜の粒感が感じられるカレー
野菜の粒感が感じられるカレー。野菜は全て、すりおろしやペーストにしてから煮込んでいます。

看板メニューの「かくらカレー」も植物性の油は使っていません。鶏のブイヨンをベースに10種類の野菜を合わせて、じっくり煮込んでつくられています。いただいてみると、野菜のポタージュのような優しい味わいで、身体にすーっと入ってくるのを感じます。

このレシピには、井村さんの食への思いがつまっているといいます。

「昔、肌荒れがひどかった時に、母がニンジンをすりおろしたものを毎朝出してくれて。それを食べていたら、肌がすごくきれいになったんです。その時ですかね、食べ物の力ってすごいなと思ったのは」

ニンジンは、胃腸の調子を整えながら、身体を構成する「うるおい」と「血液」を増やしてくれる食材。だから、肌をきれいにするのにも効果的なんだ。蒸し野菜にして食べる方法も、効率よく吸収できておすすめだよ。

小さい頃、心臓が弱かったという井村さん。お母さんは普段から栄養面に気をつけて、いろいろな種類のおかずを食卓に並べてくれていたそうです。そんな背景もあり、自然と料理の道へ進むことに。そして次第に「食事で人を元気にしたい。だったらいろんな栄養を一皿に盛り込めるカレーをつくろう」と思うようになります。

しかし、休みなくカレーの研究に没頭した結果、婦人科系の病気を患ってしまい、2年ほど不調が続きました。
「病院に通ったんですが、なかなかよくならなくて。そういえば、母は調子が悪くなると、西洋医学と東洋医学と両方取り入れていたなぁ......と思い出して、漢方薬局に相談してみたんです。処方してもらった漢方薬を飲み続けたら、順調に回復していきました」

「その時、生薬ってカレーのスパイスに似てるなぁと。これをカレーに入れれば、不調で悩んでいる人を元気にするカレーができるのでは!?と思ったのが始まりです」

しかし、生薬をそのまま入れただけでは苦みが強く、決しておいしいとは言えませんでした。「薬ではなく食事なのだから、おいしさはもちろん大切」とおいしさと効能を追求した末に、生薬とスパイス、10種類もの野菜を組み合わせたカレーにたどり着きます。

食材を選ぶだけでなく、
食べ方の工夫も大切

こうして完成したのが、看板メニューの「かくらカレー」。消化器系全般を補う食材と生薬を使った一品です。

かくらカレーイメージ
一皿に栄養を詰め込んだ、名物「かくらカレー」。

「体調や体質は人によってそれぞれですが、消化器系が元気なことは、どんな人にも大切だと思ってるんです。そもそも胃腸が健康でないと、効くといわれている食材をどれだけ取り入れても身体がうまく吸収しないんですよね」

胃腸の機能が弱まっている時は、気力も低下していることが多いのだそうです。そうなると、栄養を吸収しにくくなり疲労につながることも。日々を元気に過ごすためには、胃腸をいたわることが大切なのですね。

胃腸を整えてくれる野菜は、ニンジン、ジャガイモ、キャベツなど。普段からよく使う食材なんだね! 中でもキャベツは、疲れて胃腸の調子がよくない人におすすめの食材。食欲不振に働きかけてくれて、身体の気力停滞を解消してくれるよ。

野菜をすりおろしてから使うのは、薬膳としての理由もあります。
「すりおろすことで、消化の工程を一つなくす。身体への負担を少し減らしているイメージです」

胃の調子が悪いときはごはんをおかゆにする(第1回「生姜粥」へ)など、食べ方の工夫をすることも薬膳の方法の一つ。何を食べるかだけでなく、どのように食べるのかでも身体への働き方は変わってきます。

井村さんイメージ
「20代30代の頃よりもいまが一番元気なんです」と井村さん。

「私は、今日何食べたい?って身体とよく対話するんです。その時出てくるのは料理名じゃなくて食材なんですよね。なんとなく元気が出ない時は、イモ類が食べたくなったりします。イモ類は、元気の“気”を補ってくれる食材。身体は何が必要なのか、わかっているんですね。人間の力ってすごいと思います」

不調を感じた時だけでなく、普段から自分の身体を観察すること。食べたものに身体がどう反応しているかを感じることが、すこやかな生活につながるポイントのようです。

美肌に効果的
ニンジンの薬膳レシピ

すりおろすことで吸収力アップ
ニンジンのすりおろしサラダ

カレーイメージ

【材料(2人分)】
ニンジン.........1本(100g)
ごま油やオリーブオイルなどお好きな油.........大さじ1/2
塩.........ひとつまみ(1g程度)
お酢やかんきつ果汁など.........小さじ1/2

【つくり方】
❶ニンジンをよく洗って、皮ごとすりおろす。
❷ボウルに入れて、油、塩、酢を加えてよく混ぜる。
お好みでクルミやパセリなどトッピングする。

薬膳カレー&薬膳料理 香食楽

  • カレーを中心とした薬膳料理のお店。ラム肉を使った鍋やハンバーグ、薬酒や薬膳茶など、他の薬膳メニューも豊富。

    東京都目黒区上目黒2-42-13
    TEL:03-6303-0236
    定休日:火・水曜
    営業時間はInstagramをご確認ください。

    竹ノ上ひとみ

文:竹ノ上ひとみ 写真:関めぐみ 監修:田野岡亮太(再春館製薬所)

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井村真沙子さん

  • instagram

いむら・まさこ 料理学校の講師などを経て2005年に東京・中目黒に「香食楽」をオープン。栄養士・国際中医薬膳師。