私らしく。 by 再春館製薬所

要一郎さんのほんのり脱力術#05

麻生要一郎さん
空港で何度も猛ダッシュ。珍道中で得た、ある教訓

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頑張りすぎもよくないのにな——。頭ではわかっていても、つい欲張ったり、肩に力が入ったりしがちですよね。心にほんの少しの余裕があれば、自分にも周囲にも優しくできるのかもしれません。おだやかなまなざしで日々の生活を楽しんでいらっしゃる人気の料理家・執筆家・麻生要一郎さんに、脱力のヒントを教えていただきます。

料理家・執筆家の麻生要一郎と申します。
皆さんの忙しい日々に、ほんの少し力が抜けるようなエッセイを毎月お届けしていきたいと思っています。

今回は、旅で得た教訓についての話です。

とあるプロジェクトで、だいぶ大人になってから出会った同級生4人と、この春から大学生になる友人の息子とその同級生の6人でモロッコへ行ってきた。

羽田からパリのシャルル・ド・ゴール空港へ飛び、先発の親子3人組と合流。空港の中のしゃれたカフェでコーヒータイム。話に夢中になり、時計を見たら搭乗時間はとっくに過ぎていた。

みんなで、急いで身支度をして搭乗口へと走る。

僕は会計を済ませて合流すると、搭乗口の前で財布がないと友人がリュックの中をあさっている。さっきのお店に戻ろうか? と言いかけたあたりで、リュックから飛び出たポーチを見た瞬間、カフェでお茶をしながら、彼女がポーチに何かをしまっていたのを思い出した。財布はその中から発見され、無事にマラケシュ・メナラ空港に到着となった。

モロッコ滞在中はぎっしりと詰め込んだスケジュールをこなして、迎えた帰る日のこと。
マラケシュの旧市街地にあるリヤドに泊まっていたが、時間になっても迎えの車が来ない。どうやら宿のスタッフが、手配を忘れた様子。

やっと到着したタクシーは慌てる様子がない。道はかなり渋滞していて、不安になっていると、飛行機が遅延するとの連絡があった。
みんなで胸をなで下ろしたが、2時間も遅延するという。もしや、パリでの羽田行きの飛行機への乗り換えが間に合わないかも......と不安に思いながら、空港でチェックインすると、搭乗は3時間先だと知らされた。

タジンとクスクスとパンもおいしかったけれど、ちょうど日本食が恋しくなった頃である。寿司屋の看板が目に入った。寿司を食べながらゆっくり待とうと、モロッコのサーモン寿司に舌鼓。
話に夢中になって、飛行機に乗る前にコーヒーを買おうかと立ち上がり、時計を見ると搭乗時間はとっくに過ぎたどころか、もうゲートが閉まりそうである。
航空会社のアナウンスで自分たちの名前が呼ばれる中、搭乗口まで猛ダッシュ。

シャルル・ド・ゴール空港には夜更けに到着した。乗り継ぐはずの飛行機には間に合わず、予約が翌朝に繰り越されたため、航空会社がホテルを用意してくれた。

早朝にたつとしても、初めてフランスに入国し、ここは憧れのパリである。しかし、空港の駐車場エリアにあるホテルの街並みは、どこか日本の地方都市のようだった。

ホテルの窓から見える空港の壁面に、フランス国旗の青・白・赤のライトアップが綺麗に見えた。それぞれの色は、自由・平等・博愛を意味するといわれている。

朝は、余裕を持って搭乗2時間前にホテルを出たのだが、昨夜は電車で10分しかかからなかった道のりが、メンテナンス中とのことで電車が動かず、バスで移動することになった。
たどり着いたバス乗り場は、どこにバスが到着するのか、列がどうなっているのかわからない、まさに"自由"だった。ターミナルまでの道が渋滞して1時間かかり、結局また空港内を猛ダッシュ。

自分の名前で仕事をしている面々だから、決してのんきなわけではない。同級生という気楽さゆえの気の緩みか、空港内をとにかく走った旅。

この旅で得た教訓は、「どうにかなる」でした。

皆さまもつい考え過ぎてしまうこと、日常生活の中であると思いますが、「どうにかなる」と、ちょっと心の中でつぶやくだけで、気持ちが楽になるかもしれません。
ぜひ、お試しを!

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麻生要一郎さん

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あそう・よういちろう 1977年、茨城県水戸市生まれ。日々無理なくつくれる手軽なレシピの提案やエッセイを執筆。広いキッチンのあるスタジオでは、気の置けない友人たちを招いて食卓を囲んでいる。著書に『僕が食べてきた思い出、忘れられない味 私的名店案内22』(オレンジページ)などがある。