「言葉の力」で世界は変わる
書道家として届けたいこと
書道家ならではの視点でSNSやブログでも多くの名言を発信されている武田さん。「言葉の力」について、こう語ります。
「人間は言葉で物事を考えています。だからこそ、言葉には人生を支配する力があるはずです。僕は、書道家とは言霊を人に届ける"シャーマン"であるとも思っているので、常にポジティブな言葉を発信するようにしています。
そして、書道とは言葉の意味を考えながら体を動かし、作品を生み出す行為。脳も体も使うことで、言葉のイメージに自分を近づけてくれるんですよね」
言葉が可視化されることでプラスの影響が得られるため、私たちの日常でも「ポジティブな言葉や目標を書く」ことはぜひ取り入れてみてほしいといいます。実際に、武田さんのアトリエのドアや壁には、さまざまな言葉が直筆で書かれていて、見ているだけでも不思議と元気づけられます。
また、武田さんのInstagramなどで綴られるポジティブな言葉は、多くの人を励まし続けています。特に、フォロワーから反響を呼んだのが "「生」は読み方150以上。「死」は「し」一つのみ。生き方は多様。死ぬ時は「1」。" という投稿。たしかに、「生」には、せい、き、しょう、いき......などさまざまな読み方があります。
「日本語を勉強している外国人と話していて『生』の読み方の多さに気がついたのですが、僕自身もハッとしましたね。つまり『生き方』は、何通りもあって、答えがない。漢字の読み方に、生きる行為の面白さを改めて教えられた気持ちでした」
他人の情報が簡単に入ってくる環境で
マイナス思考に陥りやすい現代人
他人の情報が簡単に入ってくる
環境でマイナス思考に陥りやすい
現代人
「言葉の力」に影響される私たち。裏を返せば、「ネガティブな言葉」にも引っ張られてしまう、ということでもあります。
「実は、ニュース・SNS・人との会話などから1日に浴びる言葉には、ネガティブな感情が含まれていることが多いんです。
特に現代は、よりネガティブが増幅しやすい時代といえます。なぜなら、人類史上初のダイバーシティの時代を迎えたから。生き方のお手本がないからこそ、一種のパニックが起きている気がしています。さらに、SNSが発達し、本来は無関係な他人と自分とを比較してしまう機会が増えたため、自分らしく生きることも難しい時代ですよね。僕自身も、バッシングされたら落ち込みますし、こう見えて実はネガティブな人間なんですよ」と武田さんは笑います。
人生は、
物事の捉え方ひとつで変わる
そんな増幅したネガティブが蔓延する現代で、前向きに生きるために──武田さんは「ポジティブさや幸せは、生来の性格や環境ではなく、実は"技術"なんです」と、そのコツを教えてくれました。
「そもそも『ネガティブはよくない』と捉えている時点で間違っています。まずはネガティブを『悪』ではなく、自分の中の自然な感情として捉えて、受け止めて許してあげる。認めることで、マイナスな感情に必要以上に振り回されなくなるんです。
さらに、人生の幸福度は捉え方ひとつで変わります。人生で壁にぶつかった時も、『もうダメだ』ではなく、『チャンスだ』と思うようにする。だって、チャンスはたいていピンチの顔をして近づいてくるのですから。こう考えると、壁の出現も前向きに受け止められますよね?」
人に与えるための
"先出しジャンケン"
「他人と過去は変えられないけれど、物語の『設定』を変えれば結末が変わるように、人生の『設定』次第で自分と未来はいくらでも変えられます」と武田さん。
「人の粗探しをして悪い面ばかりを見るのではなく、良いところや感謝できるところを探す。僕はこれを『"感謝メガネ"をかける』と呼んでいるのですが、自分の周りの人や物事の感謝すべき点を探すだけで、いままでと同じ状況でもプラスの面ばかりが見えてきます。
対人コミュニケーションでも、まずは自分を変えてみる。相手に伝えたいことがある時も、『聞いてもらおう』と押しつけるのではなく、相手の立場になって『どうやったら伝わるか』と試行錯誤することが大切です。ここでも視点を変えて、『伝える』のではなく、『伝わる』ことを意識する。この繰り返しで、コミュニケーションにも変化が起きます」
「事実、"人生は先出しジャンケン"だと僕は思います。勝つか負けるかなんて関係なく、先に与えてしまった方がいい。人のために頑張って犠牲を払おうとすると、どうしても見返りを求めてしまい、いずれ不満がたまります。『人の為』と書いて『偽』という漢字になるように」
ここで重要なのは、まずは「自分が楽しみ、満たされること」だと武田さんはいいます。
「たとえば、自分をコップだと想定して、そこからあふれた分を人に与えると考えるんです。まず自分が楽しいと思うことを優先して選び、満たされたら、余った分を他人に与えるという発想で。そうすれば、相手がどんな反応をしようともコミュニケーションにストレスを感じることがなくなります」
人間も自然の一部。
だからこそ面白い
書道を通じた言葉の伝道師である一方で、宇宙物理学にも造詣が深いことでも知られている武田さん。中学生時代に出会った相対性理論にはじまり、現在でも読む本は科学関連のものばかりだそう。
「物理学が好きだからこそ、自分のことも『自然の一部』として客観的に見るクセがあります。自分の体に興味があるので、たとえイライラしていても『いま、僕の体の中はどうなっているんだろう!?』とワクワクするんですよね」
「体の変化の中でもマイナスに受け取られがちな『白髪が増えた』『シワが増えた』という現象も、良い・悪いで判断するのではなく、その変化自体に『どうして?』と興味を持ち、面白がる。何事もジャッジしないクセをつけることで、自分の心も体も素直に、ありのままに受け止めています。
僕みたいに、人間の体の仕組みを自然の一部として面白がる視点は、結果的に自己肯定感の高さにもつながっているんですよ」
武田さんによると、「前向きな考え方」は、生まれつきの性格よりも、感情の受け止め方や物事の捉え方ひとつで変わる、"技術"だとか。そんな「コツ」を実践できれば、モノの見え方も変わってきそうだね!
更新