枝葉も皮も循環利用し、
地域と共生し育む「新たな価値」
ここは熊本県北東部の南小国町、竹の熊集落。植林・伐採をおこなう林業の町として、250年も前から森林とともに生きてきた地域です。
穴井俊輔さん・里奈さん夫妻が展開するブランドの一つである『FIL』の特徴は、阿蘇南小国エリアの特産である小国杉を使ったものづくり。森の資源を余すことなく循環利用しています。
その代表例の小国杉エッセンシャルオイルは、伐採時に廃棄されるスギ材の枝葉を集めて葉から抽出したもの。精油を蒸留したあとの残りかすは、堆肥や地元の製材所の熱エネルギー源として活用。
灰は土壌改良剤として畑にまいたり、釉薬の材料として陶芸家に提供するなど、地域や自然と共生する活動をおこなっています。
この姿勢はものづくりや活動の内容を決める時にも。『FIL』として「何をするか」よりも「この人となら、何ができるか」とあくまで人ありき。
そうすることで、「自分たちだけではなく、関わるすべての人がともに進んでいけるように」と俊輔さんはいいます。
“足るを知る”の原点は、
イスラエルでの“逆説的”な経験
そうした二人の活動の根底には、20代の時、留学のために訪れたイスラエルでの経験があります。
向かった先の砂漠地帯の集落は、現地でも「大きな木を植えることは、ひとつの国を作る(ほど大変な)こと」といわれる過酷な環境。しかしだからこそ、そこで聞いた言葉に俊輔さんは感銘を受けたといいます。
「そこで出会った人々は『自分たちはここで生きていることに意味がある』というんです。だから、決して思い通りにはいかない環境でも、何かを生み出そうとする。そんな人々の姿をみて、できないことなんてないんだなと思いました」(俊輔さん)
例えば現地での農作業は、水が豊かな日本と比べて大変なことも多いが、それでもみんなが互いを助けあいながら、限られた資源を次世代につないでいく。そんな姿に、心が満たされるような豊かさを覚えたという穴井さん夫妻。
帰国後、その「満たされる」感覚を南小国でも体験してほしい、と『FIL』を立ち上げました。
海の生態系を支える、南小国の森
「林業の循環」を次の世代に
イスラエルの経験から、二人は改めて南小国の環境に目を向けます。
「ここの集落を流れる小さな川は筑後川となり、やがて海に注ぎ込みます。その際、南小国の森から生まれる有機物が海の豊かな生態系を支えています。環境のためには、この地の森や地域を守らなくてはいけないと気づいたんです」(里奈さん)
林業は環境を守るために欠かせない産業。魚釣りが大好きな夫妻の子どもたちはしっかりと受け止めているようで、最近では林業を継ぎたいというようになったそう。
夫妻の想いは、次の世代にもしっかり引き継がれています。
「ブランドの本質」を体感できる、
あらゆる人が集うカフェをオープン
また俊輔さんは、全国や海外からも南小国を訪れてほしいと、集落に『喫茶竹の熊』というカフェを建設しました。
カフェの一部はオープンで壁がなく、あえて照明もつけていないのだとか。
「電気がない、だからこそ"足るを知る"ような発見をしてほしい。自分たちが海外でもらった感動を、この場所で伝えていきたいです」
喫茶竹の熊
南小国の美しい田園風景の中にあるカフェ。建築・器・料理に至るまで、穴井さんらが製材した小国杉をふんだんに活用。四季折々の眺めと、地域の旬の食材で作る食事や飲み物が楽しめる。
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熊本県阿蘇郡南小国町赤馬場2041
TEL:0967-42-1010
営業時間:11:00~16:00
定休日:木曜・金曜
FIL https://fillinglife.co
喫茶竹の熊 https://takenokuma.jp
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