私らしく。 by 再春館製薬所

村田美沙さん
「なんとかなる、大丈夫」心まで変えてくれたハーブ

story ストーリー| # # # # #

ストーリー アトリエそばの京都、大文字山で、鳥の声を聞いて。

漢方を含む東洋医学には「自然界の森羅万象と人間は一体」という考え方があります。
だからこそ私たちは自然の力を感じたり、それを自分のものにすることで日々の心持ちが豊かになる。
そんな暮らしを提案する、ハーバルライフスタイリストの村田美沙さんにヒントを教えてもらいました。

手間をかけないほど
ハーブがおいしい理由

「あれ、口内炎が?」など、調子がよくないときに「野菜やフルーツが最近不足していたからかな」と思ったり、疲れて家路につく途中でふわりと漂う花の香りに癒やされるなど、植物にパワーや安心感をもらうことはありませんか。そんな中でも野趣あふれるハーブは、その凝縮された生命力が私たちの力になってくれると、村田さんは話します。

「野菜は手間をかけて育てるとおいしくなるものが多いですが、ハーブは逆。手間をかけすぎてしまうと弱くなり、香りや味わいが落ちてしまいます。無農薬、無肥料でハーブを育てると、自らの力で生きるために強い成分が蓄えられ、高い香りと旨味を持つハーブになるんですよ」

その言葉通り、村田さんが淹れたハーバルティーは驚くほど味わい深く、豊かな香りに心がほどけていくよう。ハーブは時間とともに酸化して品質が落ちてしまうため、海外から輸入したものでなく、自ら足を運んで農家さんと話し合い、土壌から育て方まで共感できる日本のハーブを使っています。

「私は弱い」から、
「なんとかなる、大丈夫」へ。
そう思わせてくれたハーブ

村田さんがハーブや精油、薬草など、自然が持つ有効成分を使って心や体を整える植物療法を学び、伝えているのは自身の経験からです。

「子どもの頃からアトピーやアレルギーなど体が弱く、常に病院通いをしていました。処方された薬で悪化したことも度々あり、社会人になってからは、ストレス性の湿疹や不眠症に悩まされたり……。体が不調なときは、その不安から、『私は弱い』というコンプレックスを感じがちでした。『このまま一生、病院通いは嫌だ!』と思い、もっと身の周りの自然なもので免疫力を上げたいと考え、運動や食生活の見直しなど、あらゆるものを試した試行錯誤の末、たどり着いたのが植物療法です」

植物療法が広く浸透している現場を見たいと考えて渡仏。フランスでは、薬局で植物療法士と呼ばれる専門的な知識を持つ店員が、一人ひとりの悩みに合わせたハーブを処方してくれます。大地の恵みと共に生きてきた人間は、自然によって自己治癒力が高まるという考え方です。

「植物療法士に、長年不調が続いていた生理の悩みを相談したら、チェストベリーとヤロウというハーブを処方されました。フランスにいる間、毎日煮出して飲んでいたら、生理の周期と量が安定してきてびっくり。向こうでは医療保険が使えないこともあって、病院のお世話にならないようになるべくセルフケアを心がけていたのですが、結果的に日本から持っていった薬さえ一切使うことなく帰国しました。そんなふうに身をもって植物療法の素晴らしさを知ったのです」

4つのハーブをブレンドしたハーバルティー。あえて小さな急須にハーブを入れて旨味を凝縮。
4つのハーブをブレンドしたハーバルティー。あえて小さな急須にハーブを入れて旨味を凝縮。
上から時計回りにアップルミント、レモンバーベナー、唐木、中央は緑茶。
上から時計回りにアップルミント、レモンバーベナー、唐木(からき)、中央は緑茶。

約半年間のフランスでの経験は、村田さんに「心の持ちようの転換」をもたらしてくれたそう。

「体調を崩したら体が求めるままに素直に休んでみる、困ったら誰かに頼るなど、自分の体や心の声を聞いて自然体で過ごすことで、『なんとかなる、大丈夫』という気持ちになってくるんです。私にそう気づかせてくれたのが、ハーブだったんですよ」

自然のパワーを、
余すことなく取り込む

“ハーブを生活に取り入れる”と聞くと、ハーバルティーを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、ハーブの使い方は実にさまざま。病気を未然に防ぐためには「日々のケアで体質を整えることが大切」と説くのは、漢方などの東洋医学でもおなじみの理念ですが、ハーブのパワフルな生命力は、私たちの強い味方になるそうです。

「自宅で過ごすことが増えているいまならハーブスチームがおすすめ。洗面器などに好きな香りのドライハーブを入れて、沸騰したお湯を注ぎます。顔に蒸気をあてながら皮膚や粘膜から吸収。カモミールであれば発汗作用があるので温まりやすく、ホーリーバジルや黒文字(くろもじ)は、リラックス効果や眼精疲労の改善に作用するといわれているので、仕事の合間や疲れを感じたときに、ぜひ試してみてほしいです」

蒸気を逃がさないようにバスタオルなど大きめの布で顔を覆う。
蒸気を逃がさないようにバスタオルなど大きめの布で顔を覆う。
蒸気が出なくなりお湯が冷めたら、手や足を浸けて末端から温める。
蒸気が出なくなりお湯が冷めたら、手や足を浸けて末端から温める。

少し温度が下がったら、手を入れて温めたり、足湯にしても。
ドリンクとして楽しんだハーブは、ハーブスチームや入浴剤として使うことも多いそう。
自然の恩恵は無駄にせず、余さずにいただくことも植物療法の大切な概念です。

ハーブの取り入れ方

  • 保湿成分のあるハーブを煮出せば、入浴剤としても

    街でよく見かけるセイタカアワダチソウは、5~10分ほど煮出して、液体とハーブを浴槽に入れると肌がしっとりするそう。

    保湿成分のあるハーブを煮出せば、入浴剤としても
  • お気に入りの香りをルームスプレーに

    スッキリとした香りのゼラニウム、ユーカリ・ラディアータのエッセンシャルオイル、エルボリステリア(植物療法の薬局)で処方されたエッセンシャルオイルをブレンドしてスプレー。においが気になるときや、心地よい香りに包まれたいときに。

樹々が放つフィトンチッドに
魅せられ、森へ

京都の街を見守る大文字山の麓にアトリエを構えている村田さん。少し行き詰まりを感じたときは大文字山へ赴き、森から元気をもらうといいます。

「ハーバルドリンクを飲むと、包み込まれる香りに癒やされて思わず顔がほころんでしまうのですが、森の中へ入ったときも同じで、頬がゆるんでくる。人間は森や緑が豊かな場所へ行くと、自然と深呼吸をしますよね。これは樹々が放出するフィトンチッドという成分が精神安定効果をもたらすためだと専門家の研究でも認められていますが、吸い込むことで気持ちがリラックスする証拠なんだそうです」

「目に入る鮮やかな緑、落ち葉を踏む音、木の幹のザラついているけれど柔らかな触感、湧き水のおいしさ。五感が刺激されながらも癒やされていく。だから、人間は自然を求め、自然の力に魅せられるのだと思います」

大文字山の湧き水は、登山者だけでなく地元の人も汲みに来る。ハーバルティーに使うことも。
大文字山の湧き水は、登山者だけでなく地元の人も汲みに来る。ハーバルティーに使うことも。

自分らしくいられる、
「Le SystèmeD」マインド

植物療法は人間の本来の生き方と似ていると村田さんは考えています。

「フランスに“Le SystèmeD(ル・システム・デ)=身近にあるもので工夫して困難を解決する”という考え方があって、私はこの言葉がとても好きなんです。ハーブの育て方のように、肥料などの本来ないものを加えるよりも、今あるもので生きる。植物療法がすべての困難を解決するわけではないですが、選択肢の一つとして身近にある自然の力を借りる方法を知っているだけで、気持ちが楽になりました」

そして、そのマインドがゆるぎない“自分らしさ”になり、とても生きやすくなったと教えてくれました。太古から共生してきた自然から学ぶことは、まだまだありそうです。

photo:HASHIMOTO Hirotaka
text:NAKAYA Maiko

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村田美沙さん

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むらた・みさ 1992年、愛知県生まれ。植物療法の考えを取り入れたライフスタイルブランド「Verseau(ヴェルソー)」主宰。日本でつくられたハーブにこだわり、ハーバルドリンクの製造販売をはじめ、自然の中で行うワークショップなどを企画している。