私らしく。 by 再春館製薬所

飯島都陽子さん
人生がふっと軽くなる、80代魔女の「5センチ浮く」生き方

story ストーリー| # # # # #

ストーリー

港町・横浜で、40年にわたり「ハーブと魔女の専門店」を営む飯島都陽子さん。80歳を過ぎたいまも店頭に立ち、訪れる人をあたたかく迎えています。他人の評価や常識に縛られず、自分の心に正直であり続けるために日々心がけていることとは? 「現実から5センチ浮くくらいが、生きるにはちょうどいい」。そんな、心がふっと軽くなるような魔法をお届けします。

異国情緒ある街並みが残る横浜・元町。ここに、全国からファンが訪れる一軒の店があります。飯島都陽子さんが営む「GREEN THUMB(グリーンサム)」です。
店の説明文には、こう記されています。

「グリーンサムは1985年、横浜元町に創業したハーブと魔女の専門店です。生活のあらゆる面で役立つハーブを知り、魔女のように愉快でパワフルに、美しく生きることを提案します」

飯島都陽子さんのお店 写真
ショーウィンドーには、さまざまな表情の魔女人形が並びます。唯一無二の世界観は、店の前を通る人の足を自然と止めてしまうほど。

自分の心に正直でいるために
私が魔女でいる理由。

幼いころから、魔女に憧れてきたという飯島さん。

「いつも図書館で本を読んでいました。アンデルセンやグリム童話に出てくる、少し怖くて、でも知恵と力を持った魔女に強くひかれて。将来はお姫さまじゃなく、魔女になりたいと本気で思っていましたね」

小学3年生のある雪の日には、「メリー・ポピンズみたいに空を飛べるかも」と、傘を手に屋根から飛び降りたこともあります。

「幸い、雪のおかげでけがはしませんでしたが、魔法で飛べなかったことが悔しくて。傘が壊れたことより、そっちのほうがショック(苦笑)」

現実と物語のあいだを自由に行き来しながら育った飯島さんは、美大へ進学。卒業後はテキスタイルデザイナーとして働き始めます。

飯島都陽子さんのお店の魔女 写真

点と点がつながった
「これって、人生のテーマかも」

時は1970年代。仕事でヨーロッパを訪れる機会の多かった飯島さんは、ある時イギリスで、忘れられない出合いがありました。

「ロンドンのお店で、初めて実物のカモミールティーを見たんです。『ピーターラビットに登場するお茶だ!』って大興奮して。当時の日本では、ハーブはまだほとんど知られていませんでしたし、私にとっても物語の中の存在でした」

ハーブティの写真
飯島さんが自らブレンドとパッケージデザインを手がけた、ロングセラーのハーブティーは4種。「ハーブは癖があるので、少しの違いで味が大きく変わっちゃう。何度も試作しましたね」。

日本に持ち帰り、毎日飲み続けてみたところ、「とびきりおいしいわけではないけれど、なんだか体の調子がいい」。その魔法のような小さな変化に、未知なる薬草への好奇心がますます膨らみました。

海外出張のたびにハーブの本を買い集め、辞書を片手に読み解く日々。そんな中で、ある一文に出合います。

「かつて魔女はハーブを使い、人々の健康に寄与していた」。

魔女とハーブ。これって、私の人生のテーマかも──。幼いころから好きだった物語の要素が、一本の線でつながった瞬間でした。

飯島都陽子さんのの写真
グリーンサム(緑の指)とは、"園芸名人"という意味。ハーブが手に入りにくかった開店当初は、苗の販売もおこなっていたそうです。

心の声に従えば、
自分だけの道が開ける

当時、日本ではラベンダーの香りすら知らない人がほとんど。
「誰もハーブなんて知らないのに、ましてや魔女の店なんて無謀すぎる」と、周囲からは猛反対されました。それでも飯島さんは、気持ちを抑え切れません。

「人生は選択の連続。迷った時は、いつも『もし魔女だったらどうする?』と自分に問いかけてみるんです。周りの評価や常識から外れるのは勇気がいりますが、『魔女なら、これくらいやる』と腹をくくると、一歩踏み出せたんです」

1985年、直感と好奇心を頼りに「ハーブと魔女の専門店」をオープン。周囲の予想に反し、子どもからご年配の方まで、幅広い世代が訪れる店となりました。

飯島都陽子さんのの写真2

「『本当は魔女になりたかった』って、皆さん楽しそうに話してくださるんです。魔女は、誰かの正解をなぞる存在ではありません。自分の真の心に問い続ける、その姿勢こそが魔女に近づく方法だとお伝えしています」

無心に手を動かす時間は
自分と向き合う「魔女修行」

創業以来の看板商品が、飯島さん手製の「魔女人形」です。魔女人形とは、中世時代からヨーロッパ全域で受け継がれる、邪気払いのお守り。ヨーロッパ各地で目にした魔女人形の記憶と、テキスタイルの知識を生かし、店の2階の工房で一体ずつ制作しています。

自然のリズムを熟知し、薬草の知恵で人々の健康を支えてきた魔女は、かつて暮らしを守る存在でもありました。

「だから欧米では、お守りとして魔女人形を飾る風習があったんですね」

魔女の13の秘密のひきだしイメージ
ハーブや魔女についてのエッセイやイラスト制作も手がける飯島さん。店内には、原画やポストカード、著作も並びます。

「なにごとも買うだけじゃなく、自分でつくってみることも魔女修行。一品だけでもいいので料理したり、感じたことを日記に綴(つづ)ってみたり......。心に響いたものを形にし、無心に手を動かす時間は、自分の心と向き合う時間でもあります。つくる時間がもたらすものは大きく、損得では語りきれません」

ゼロから何かを生み出す力や、独創的な表現もまた、一種の魔法なのかもしれません。

お店の写真
店内には、天井からつり下げられた魔女人形がずらり。一部の輸入品を除き、全て飯島さんの手づくりです。
薬袋写真
「ホレ魔女」が持つ薬袋には、クレオパトラがアントニウスを誘惑した香りを持つハーブが詰められています。上質な生地をぜいたくに用いた作品です。
魔女の人形写真
マントを羽織り、森へ薬草を摘みに行った「薬草魔女」。かつて魔女と呼ばれた女性たちは、薬剤師的な役割を担い、人々の健康を支えていました。

現実から5センチ、
浮かび上がる魔法。

80歳を過ぎたいまも、飯島さんは学ぶこととおしゃれを楽しみ、自然体で店に立ち続けています。

「毎日、体調に合わせてハーブティーを飲んでいます。『もう年だから』と諦めず、行きたい場所に行き、見たいものを見る。自分の気持ちを後回しにしないことが、元気の秘訣(ひけつ)といえるかもしれませんね」

最近、接客をしていて気がかりなことがあるといいます。

「昔に比べて、若い方がとても疲れてるように感じます。不眠に悩む方も多いですね。もちろんハーブの知識を生かして、症状に合うお茶をおすすめすることもありますが......魔女のように、自分の光も闇も受け止めて、たまには怠けたり、わがままになっていいんです」

魔女人形2

飯島さんは、日常から少し離れて空想の世界で遊ぶことを「心の箒(ほうき)を持つ」と表現します。

「地面を這いずり回るより、魔法の箒を使って5センチ浮かんでるほうが、きっとラクでしょう。物語や空想は、現実に押しつぶされそうな心を解き放ってくれます。目に見えるものだけでなく、見えない世界を信じる豊かさを、これからも伝えていきたいですね」

グリーンサム ハーブと魔女グッズの専門店

  • 1985年横浜・元町で開業したハーブと魔女の専門店。台所の守り神である手作りの魔女人形「キッチンウィッチ®」や、オリジナルブレンドのハーブティーや紅茶、ハーブでつくられたフレグランス製品がそろう。

    公式サイト:http://www.green-thumb.co.jp/

文:藤田三瑚 写真:松本のりこ

更新

飯島都陽子さん

いいじま・とよこ 1943年生まれ(魔女年齢489歳)。魔女名はエルダーフラワーホップラ都陽子。ハーブ教室や魔女人形教室を開催するほか、講演や執筆活動もおこなう。著書に『魔女の12ヵ月』『魔女のシークレット・ガーデン』、絵本『魔女の一日』(作)、『魔女の13の秘密のひきだし〜魔女人形のアトリエから〜』など。魔女やハーブにまつわるイラスト、エッセイが人気。