区切り
頭がくらくらするような忙しさの中とか、長いインタビューを受けた後とか、どうにも気持ちが切り替えられないことがある。
そんなとき、猫と遊ぶとすごくすっきりする。
うちの猫はなぜか遊ぶ場所を決めていて、私を見かけるとそこに誘導する。しっぽをぴんと張って、なぜか誇らしげに。
そしてキャットタワーの上に登って、私が手でじゃらしてくれるのを待っている。
決して無視できないくらいにいっしょうけんめい待っているので、その様子がかわいくて遊び始める。
まだやることがいっぱいあるんだけど、と思いながら。
猫は何回同じ遊び(手を出したり引っ込めたりして捕まらないようにするだけ)をしても、決して飽きることはない。でも、こちらがやる気なく遊んでいるとすぐわかる。だからなるべく本気で遊ぶ。ちょうど小さい子と遊ぶときと同じで、同じことを何回くりかえしてもこちらが本気ならあちらも楽しい。
ずっと手を上げて遊んでいるわけだから先に疲れてしまうのは私のほうで、「脇の下が痛い、もうおしまい」と言って猫を撫でて立ち去る。頭を撫でるのが終わりの合図だ。
猫はしっぽをぶんぶん振ってつまらなそうにするんだけれど、私はすっかり頭が切り替わって新しい気持ちで歩き出している。
写真:砂原 文
本連載は、吉本ばななさんのエッセイとともに、写真家・砂原文さんの写真をお届けします。
猫って指をこうして出すとかならずほっぺをこすりつけてくる。
それは、「仲間だね」の合図。
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