くしゃみ、鼻水、目や皮膚のかゆみ...花粉症の季節になると、日常生活がつらくなりますね。集中力が低下したり、薬の副作用で眠くなったりすることから、仕事や家事・育児に支障をきたす場合もあるでしょう。
花粉症は体質の問題で、どうしようもないと考えている人も多いのではないでしょうか。花粉を完璧に避けることは難しいため、薬を飲んで、くしゃみや鼻水を抑えることしかできないようにも思えます。
しかし、実は漢方の知識を活用すれば、花粉に反応しやすい体質を内側から変えられます。重要なのは、食生活の見直しによる体質改善です。花粉症に効く食べ物や生薬を体内にとり入れることで、花粉への過剰な反応を抑え、花粉症によるつらい症状をやわらげられるのです。
花粉症に効く食べ物やレシピと、その理屈を解説します。
花粉症の症状を和らげる効果がある食べ物
漢方では、すべての食べ物はそれぞれ、食べたときに人体に作用するさまざまな力をもっていると考えます。食べ物のもつ力を体内にとり入れることで、身体が影響を受けるのです。したがって、花粉症の症状をやわらげたいときは、花粉症に効く食べ物を積極的にとりましょう。例えば、花粉症に効く食べ物には次のようなものがあります。
- 花粉に反応しやすい体質を改善したいなら...
- ショウガ、タマネギ、ニンニクなど
- 鼻水・鼻づまりの症状をやわらげたいなら...
- ブロッコリー、レンコン、長ネギ、シソ、甜茶(てんちゃ)など
なぜこれらの食べ物が花粉症に効くのか、漢方の詳しい理屈についても後述します。
まずは、これらの食材を使ったおすすめのレシピをご紹介します。2,3種類と食材を組み合わせることで、改善の効果を高めていきましょう。
ブロッコリーとツナのサラダ(68kcal / 1人分)
材料(2人分)
- ブロッコリー
- 60g
- タマネギ
- 1/6個
- ツナ缶
- 20g
- マヨネーズ
- 大さじ1
- 塩、コショウ
- 各少々
作り方
- ブロッコリーを小さく分けます。大きいものは縦半分に切ります。
- 塩少々(分量外)を加えてゆでてから、冷水にとって水気を切ります。
- タマネギを薄切りにします。水にさらしてから、水気を切ります。
- ブロッコリー、タマネギ、ツナをボウルに入れて、マヨネーズ、塩、コショウを加えて混ぜます。
花粉に反応しやすい体質を改善するタマネギと、鼻の粘膜の炎症を抑える効果をもつブロッコリーを組み合わせた、花粉症の季節におすすめのレシピです。
花粉症を悪化させる可能性がある食べ物
漢方の視点から見ると、すべての食べ物はそれぞれ、食べたときに人体に作用するさまざまな力をもっています。つまり、花粉症に効く食べ物があるのと同様に、花粉症を悪化させるかもしれない食べ物もまた存在するのです。花粉症に悩む人が日本で年々増えているのは、日本古来の食習慣が変化し、欧米化していることが原因だとする説もあります。
なぜなら、洋菓子、和菓子はもちろん、体にやさしい黒砂糖やハチミツ、果物などもとりすぎは禁物。また、唐揚げや天ぷらなどの油っぽい食事や、冷たいジュース、ビール、生野菜などの生もの、冷たいものも花粉症を悪化させる可能性がある食べ物だからです。日常的に多くとっているもの、つい手が伸びる好きなものが並んでいる人も多いのではないでしょうか。体質改善によって花粉症の症状をやわらげたいのであれば、これらの食べ物を控えることも重要なのです。
花粉症の原因は身体の内側にある
漢方では花粉症をどのようにとらえるのか、簡単にご説明します。
漢方では、花粉症の大きな原因は体の内側にあると考えます。体の抵抗力が過剰に反応して、もともと無害な花粉を攻撃してしまうからです。
体の抵抗力が弱くなる原因は、不規則な生活や食習慣の乱れ、ストレス、過労などさまざまです。これらの原因により、体内の水分が一ヵ所に滞ったり、本来あるべきところではないところにある状態になります。これを水毒(すいどく)と呼びます。水毒の状態では全身にうまく栄養が行きわたらず、内臓の機能が低下してしまいます。水毒が体の正常な働きを阻害し、抵抗力を弱くさせるのです。抵抗力が弱まっているからこそ、無害なはずの小さな花粉を必死で攻撃して、過剰なアレルギー反応を引き起こしてしまいます。
つまり、体の抵抗力(免疫力)をアップできれば、花粉症のつらさはやわらげられるのです。そもそもの原因である水毒を解消するためには、体内の水のめぐりが良くなるよう血行や代謝をアップさせ、体内に溜まった水分を汗や尿でしっかり排出しましょう。花粉症に効く食べ物とは、血行促進・新陳代謝向上・利尿作用といった効果につながる栄養素をたくさん含んでいる食べ物なのです。
漢方で花粉症を治療するメリット
花粉症の治療に漢方をおすすめしたい最大の理由は、症状を緩和するだけでなく、アレルギー体質そのものを改善することも期待できるからです。また、漢方は薬の副作用で眠気を起こすことなく症状を緩和でき、点眼薬と点鼻薬などの併用といった面倒がないので気軽にはじめられます。風邪薬や頭痛薬を飲みたいときに、花粉症の季節はずっと鼻炎薬を飲んでいるから困ってしまう...といった問題もありません。
漢方が得意とするのは、不調の根本的な原因にアプローチする方法です。花粉症の場合、花粉症という症状の根本にある、水毒や抵抗力の低下を解消していきます。最も基本的な方法は食生活の改善で、漢方では食べ物の力をとり入れて元気になろうとすることを食養生(しょくようじょう)と呼びます。花粉症の季節には、花粉症に効く食べ物をしっかり食べるのです。
食養生について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。
>不調を感じる"今"の体が求める、疲労回復に効果的な食べ物|自己回復力を高めて元気に過ごそう【国際薬膳調理師監修】
一方、西洋医学が得意なのは、表に出ている症状そのものへの対処(薬などによる対症療法)です。花粉症に対しても、抗アレルギー薬などを内服して、症状を緩和させます。即効性があり、今まさに直面している問題を解決してくれる心強い味方です。しかし抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を長期にわたって服用すると副作用が心配という懸念もあります。薬だけに頼り続けるのは、好ましい方法とはいえないでしょう。
西洋医学と漢方は、どちらか一方を選ばなければならないというものではありません。市販の薬を服用してくしゃみや鼻水を抑えながら、花粉症に効く食養生を意識して、ゆっくり体質を改善していくのも良いでしょう。だんだん身体の抵抗力が鍛えられていき、毎日薬を飲む必要がなくなれば、身体的にも金銭的にも楽になれるかもしれません。
まとめ
花粉の季節は普通の日常生活を送るのも難しいという人は、ぜひ漢方の知識をとり入れた食養生を実践してみてください。花粉に反応しやすい身体を少しずつ変えていけば、毎日を楽に過ごせるようになります。花粉症の季節にはこの食材・この料理を食べるという、自分なりの定番を定着させられると良いですね。
(参考文献)
「再春館製薬所が教えるおうち漢方」新星出版社,2014年3月
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