風邪を引いてつらいときには、食欲も、料理をする元気もなくなってしまいますよね。しかし一方で、風邪を治すためには、しっかり栄養のある食事をとらなければとも考えると思います。
そんなときは、なるべく簡単に、風邪に効果的な食事をとって元気になりましょう。実は、食べ物の中には、喉の痛みや熱・鼻水・咳などの症状を緩和する力を持っているものがあります。食べ物の力を借りて、つらい症状をやわらげることができるのです。
風邪を引いたとき、また、風邪を予防するためには、どんな食べ物・栄養をとれば良いのでしょう。漢方の視点を交えながら解説したいと思います。
風邪の原因は身体の抵抗力(免疫力)の低下
そもそも、私たちはなぜ風邪を引くのでしょうか。
ご存知の通り、風邪の原因は主にウイルスに感染することです。原因となるウイルスは200種類以上あり、その種類や感染した部位によって、喉や気管支などの呼吸器に炎症が起きたり、発熱や悪寒を感じたり、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状があらわれるとされています。風邪の原因であるウイルスそのものを退治する薬はないので、風邪を引いて熱が出れば解熱剤を、鼻水が出たら鼻水を止める薬といったように、対症療法を実施します。
ウイルスの侵入経路は、大きく分けて3つあります。
- 飛沫感染
- 人の咳やくしゃみによって飛び散ったウイルスに感染する
- 接触感染
- 自分の手についたウイルスに感染する
- 空気感染
- 空気中に飛んでいるウイルスに感染する
こういった経路でのウイルスの侵入を防ぐには、マスクの着用や手洗い・うがいが効果的です。
しかし、風邪の原因となる200種類ものウイルスと私たちは、ごく稀にしか遭遇しないというわけではありません。実は、ウイルスはいつでも、私たちの身の回りに存在しているのです。それなのに風邪を引くときと引かないときがあるのはなぜでしょうか。
漢方では、風邪の原因は抵抗力(免疫力)の低下であることを重視しており、身体の外から入ってくる風邪(ふうじゃ)によって引き起こされると考えます。自然に吹く「風」はふつう心地のよいものですが、強すぎれば身体にとって不快なものに変わり、風邪となって身体に悪影響を及ぼします。
また漢方では、人間の身体は「気・血・水」によって成り立っていると考えます。気とは人間の身体を動かす根源エネルギーで、血は身体の中にある赤い液体、水は透明な液体をさし、この3つが満たされ体内をスムーズに循環しているのが、健康な状態です。風邪が侵入しようとしても、気のエネルギー(衛気)が満たされていて水がバランスよく整えられていれば、風邪を引きにくくなります。しかし衛気が低下して身体の防衛力が弱まっていると、風邪が身体に侵入してきます。そして強い寒さ(寒邪)などとともに身体に悪影響を及ぼし、熱や吐き気など風邪の諸症状を引き起こすのです。
つまり風邪を予防するためには、物理的にウイルスの侵入を防ぐとともに、侵入してきたウイルスに打ち勝つことのできる防御力の高い身体づくりが重要となります。日頃から適度な運動・バランスの良い食生活・ストレス発散などを心がけ、健康的な生活を送りましょう。
こちらの記事で漢方が考える、「気・血・水」から成り立つ人間の身体について詳しく解説しています。ぜひご一緒にご覧ください。
冷え性改善|身体を温める食べ物・飲み物を漢方の視点から解説
<症状別>風邪に効く食べ物
それでは、漢方の考え方に基づいて、風邪に効く食べ物を具体的にご紹介していきましょう。
漢方では、食材それぞれの持つ性質を知り、自分の身体に合うものを食事にとり入れるようにします。食べ物の持つ力を食事によって体内にとり入れて、心身の健康を整える考え方があります。風邪を引いたときは、風邪の症状に合わせて効果的な食材を選んでみると良いでしょう。風邪の諸症状には、次のような食べ物がおすすめです。
喉の痛みを緩和する食べ物
【喉をうるおして炎症をしずめる食材】
- 大根おろし
- ナシ
- ハチミツ
- アンズ
- 黒豆
- 干し柿 など
【身体の余分な熱をとり、喉の腫れを解消する食材】
- ゴボウ など
発熱を緩和する食べ物
【熱が高くて喉が渇いているときに、熱を冷ます食材】
- ゴーヤ
- ゴボウ
- 豆腐
- みそ
- スイカ など
【寒気がするときに、身体を温めて発汗させる食材】
- ニラ
- カブ
- エビ
- ショウガ
- パクチー など
鼻水・鼻づまりを緩和する食べ物
【水のめぐりを促す食材】
- タマネギ
- ショウガ
- ニンニク など
【鼻の粘膜の炎症をしずめる食材】
- レンコン
- ブロッコリー
- 長ネギ
- シソ など
咳・痰を緩和する食べ物
【肺の熱を冷まし、痰をとってくれる食材】
- ナシ
- 大根
- カキ
- アサリ
- 昆布 など
【肺の機能を改善する食材】
- 干し柿
- ネギ
- タマネギ
- ニンニク
- 銀杏
- キンカン など
【乾いた咳を解消する食材】
- キウイ
- バナナ
- ハチミツ
- ユリ根 など
風邪予防に効果的な栄養素や食材
風邪を引いたときに何を食べるかということは、風邪を早く治すためにも非常に重要です。そして同様に、風邪を引かないために何を食べるかということも、普段から意識しなければなりません。漢方の考え方では、病気を治すことよりも前に、そもそも病気にならないようにすることを重視します。バランスの良い食事で身体の免疫力を高め、ウイルスに負けない身体をつくることが最も重要なのです。それでは、風邪を未然に防ぐためにはどのようなものを食べれば良いのでしょうか。日頃から特に意識してとりたい、風邪予防に効果的な栄養素や食材を解説します。
ビタミンA
ビタミンAには、皮膚や鼻・口などの粘膜を強化してウイルスの感染を予防するはたらきがあります。風邪の予防に非常に効果的な栄養素です。緑黄色野菜に多く含まれており、油と一緒にとることで吸収率が上がるので、ビタミンAを摂取するには炒め料理などが適しています。
【ビタミンAを多く含む食材例】
- ニンジン
- カボチャ
- コマツナ
- ホウレンソウ
- ニラ
- 春菊
- レバー など
ビタミンC
ビタミンCには、免疫力を高め、ストレスを緩和するはたらきがあります。強い抗酸化作用があり、活性酸素をとり除いて細胞を守ってくれるため、風邪の予防に効果的です。ただしビタミンCは水に溶けやすい性質があるので、調理法には注意しましょう。野菜や果物に多く含まれているので、新鮮なうちに生のまま食べるのが最も効果的です。
【ビタミンCを多く含む食材例】
- ピーマン
- ブロッコリー
- キャベツ
- 柑橘類
- キウイ
- イチゴ など
タンパク質
タンパク質は、身体の組織すべてをつくる材料となる栄養素です。免疫物質のもとにもなり、タンパク質の不足は身体の機能すべてを弱らせる原因になると言えるでしょう。肉や魚、たまご、豆類など、様々な食べ物からバランス良く良質なタンパク質をとるように心がけます。
【タンパク質を多く含む食材例】
- 肉類
- 魚類
- たまご
- 乳製品
- 豆類 など
風邪を引いたときにおすすめの簡単レシピ
風邪で、料理する元気も食欲もないときにおすすめの料理は、作りやすく食べやすいスープやみそ汁です。風邪のときには、汁物が食事のメインでも構いません。風邪の症状を緩和する食材をとり入れれば、身体のつらさもやわらぎます。ダイコンやニラ、タマネギ、アサリや長ネギなどの食材を具にしてとり入れましょう。シンプルながら、風邪症状の緩和に効果的なみそ汁のレシピをひとつご紹介します。
タマネギのみそ汁(48kcal / 1人分)
材料(2人分)
- タマネギ
- 20g
- 油揚げ
- 10g
- だし
- 300ml
- 合わせみそ
- 大さじ1
作り方
- タマネギを1cmほどの厚さでくし形に切ります。油揚げを油抜きにして1.5cm角に切ります。
- 鍋にだしを入れて煮立たせ、タマネギを入れます。
- 油揚げを入れて中火にして、みそを溶いて火を止めます。
消耗したエネルギーを補うためには、スープやみそ汁と一緒にお米も食べられればなお良いですね。家族の食事も用意する場合、たとえば汁物だけを作れたなら、メインは冷凍食品やお惣菜、コンビニの食品などに頼ることも考えて良いのではないでしょうか。
風邪を引いたときに避けたい食べ物
風邪を引いてつらいときには、スーパーやコンビニのお惣菜を利用するのもひとつの手です。何よりも大切なのは、ゆっくりと身体を休めることだからです。ただし、たとえ手っ取り早く食事を済ませたくても、胃腸に負担をかけるような食べ物はできるだけ選ばないようにしましょう。風邪のときには、消化しやすく、胃腸に刺激を与えない食べ物が適しています。次のような食材は、風邪を引いたときには避けた方が良いでしょう。
- 揚げ物などの脂っこい食べ物
- 辛いものや、香辛料を多く使った刺激が強い食べ物
- お菓子や酒類
- カフェインを多く含むコーヒーなどの飲料
まとめ
風邪を引いたときは、何よりもまず無理せず休み、身体を回復させることが大切です。食事についても、無理なく食べられるものを食べることが第一と考えましょう。少し元気が出てきたら、風邪に効く食べ物の力を借りてつらい症状を楽にできると良いですね。
(参考文献)
「再春館製薬所が教えるおうち漢方」新星出版社,2014年3月
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