長時間のデスクワークなどによる、肩こりに悩んでいる人はとても多いのではないでしょうか。
慢性的な肩こりや首こりは、頭痛などの原因にもなります。
肩こり解消といえば、真っ先に思いつくのはストレッチやマッサージですが、実は、食べ物の力を借りて症状を緩和することもできるのです。
肩こりの原因
漢方では、肩こりは「気・血」※が滞ることで起こると考えます。
しかしその原因は、長時間同じ姿勢を続けていたり、冷えやストレスがあったり、筋力不足だったりとさまざま。症状も原因によって異なり、肩や首筋がこわばったり、張ったり、痛んだり、だるくなったりします。
※漢方では人間の身体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」によって成り立っていると考えます。「気」とは人間の身体を動かす根源エネルギー。西洋医学に置き換えると血液や水分、臓器を動かす役割を持ち、自律神経や内分泌系の働きに関わっています。「血」は体内にある赤い液体を指し、全身に酸素や栄養を運び、ホルモンバランスの調整をしてくれます。「水」は体内にある透明な液体、つまり鼻水や尿、リンパ液などの身体のあらゆる水分を指し、免疫力に大きな関わりがあります。
肩こりの3つのタイプ
肩こりのタイプは大きく3つに分けることができます。
多くの場合は、そのタイプ別の原因さえとり除ければ、肩こりは改善・解消します。
自分の肩こりはどのタイプなのか診断してみましょう。
①血行不良タイプ
血行不良タイプは、冷えなどによって「血」が滞り、首や肩、後頭部が痛くなります。背中まで痛みが広がることはあまりなく、お風呂に入って温まると、「血」のめぐりが改善されて痛みがやわらぎます。
身体が冷える場所にいた時や長時間同じ姿勢を続けていた日は、その日のうちに40度以下のぬるめのお湯をはった湯船にゆっくりつかり、身体を温めて血行改善をしましょう。
②ストレスタイプ
ストレスタイプは、心労や緊張などで「気」が乱れ、気づかないうちに身体に力を入れたり、肩をこわばらせたりすることで筋肉がかたくなり、こりを感じます。マッサージなどで気をめぐらせると楽になります。
僧帽筋※や肩甲骨まわりの筋肉は肩こりに関わる代表的な筋肉です。ストレッチで動かすだけでは緩みにくいため、マッサージでほぐしてあげると効果的です。ここでは筋肉を覆う筋膜をほぐすマッサージ方法をご紹介します。ほぐすことで筋肉を正しくスムーズに動かせるようになります。
※肩から背中にかけて広がる筋肉で、鎖骨や肩甲骨、背骨と広範囲に付着しています。
僧帽筋の筋膜をほぐす「腕回し」
- ①回そうとする腕の反対側の手を、首と肩の間にある僧帽筋が盛り上がった部分にのせ、中指を中心に押さえます。
- ②指で僧帽筋に圧をかけたまま、腕をゆっくりと後ろから前に3回程度大きく回します。
- ③前から後ろにも3回程度大きく回します。 反対側の腕も同様に行います。
③筋肉不足タイプ
筋肉不足タイプは、筋力が足りないので重い頭を支えると普通の人以上に負荷を感じ、だるくなります。適度な運動で肩まわりの筋肉をつけると、しだいにだるさも緩和されていきます。
腕の上げ下げなどや重りを利用して、振り子のように腕を自然に振り、肩を動かす体操でも簡単に肩や腕を鍛えることができます。
肩こりに効く食べ物・おすすめレシピ
肩こり解消といって思い浮かべるのはマッサージやストレッチが多いと思いますが、食生活を見直すことでも改善が期待できます。肩こりに効果的な食べ物を意識して取り入れることで、身体の中から肩こり解消を目指しましょう。
上記の3つのタイプ別に、漢方の視点からおすすめの食べ物をご紹介します。
最後に簡単なレシピも掲載するので、普段の食事にぜひ取り入れてみてくださいね。
■効く食べ物
① 血行不良タイプ
ニラ・カニ・イカ・タラなど「血(けつ)」のめぐりを促す食材や、ショウガやニンニクなどの身体を温める調味料を普段の食事に加えるのもおすすめです。
- ニラ
- ネギ
- カニ
- イカ
- タラ
- ブルーベリー
- モモ
- クリ
- 黒酢
- ショウガ
- ニンニク
- シナモン
- サンショウ
冷えは、血行不良を引き起こす大きな要因です。身体を温め、冷え性を改善する方法については、こちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ一緒にご覧ください。
② ストレスタイプ
ダイコンやタマネギ、セロリ、アサリ、鶏レバーなどの「気(き)」をめぐらせる食材をとりましょう。また、ミントやカモミールなどのハーブティーをつくって飲むのも効果があります。
- ダイコン
- タマネギ
- セロリ
- チンゲンサイ
- シソ
- ソバ
- ブドウ
- アサリ
- 鶏レバー
- ハーブ類
- 酢
③ 筋肉不足タイプ
適度な運動とともに、赤身の肉やマグロ、カツオなどの筋肉をつける食材をとれば、少しずつ体質が改善されます。米や麦、ひえなどの穀物も積極的にとり入れるとよいでしょう。
- 赤身の肉
- 羊肉
- マグロ
- カツオ
- 米
- 麦
- ひえ
- あわ
■おすすめレシピ
最後に、肩こり改善に効果的な食材を組み合わせたおすすめレシピを紹介します。
ナスとピーマンのみそあえ(69kcal / 1人分)
材料(2人分)
- ナス
- 1/2個
- ピーマン
- 1個
- 赤パプリカ
- 1/3個
- A
- 合わせみそ 大さじ2
砂糖、酒 各大さじ1 - 揚げ油
- 適量
作り方
- ナスを大きめの乱切りにします。
- ピーマンとパプリカを、ナスよりひとまわり小さめに切ります。
- Aをあわせて甘みそをつくります。
- 揚げ油を170度に熱して、ナスとピーマン、赤パプリカを素揚げにします。
- 4の油を切ってから、甘みそを加えてからめます。
ナスは「血」の滞りを取り除いて痛みを止める効能があり、肩こりに特に効く食材とされています。また体の余分な熱を冷まし腫れを解消させ、利尿作用を活発にしてむくみをとる効果もあります。ピーマンは消化機能を調節して「気」をつくり、「血」の滞りも改善する働きがあります。
まとめ
つらい肩こりの症状は、食べ物の力を借りて身体の調子を整えることで緩和することができます。
適度な運動や入浴、マッサージも効果的ですが、食生活と生活習慣を見直しながら、つらい肩こりに対処していきましょう。
(参考文献)
「再春館製薬所が教えるおうち漢方」新星出版社,2014年3月
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