私らしく。 by 再春館製薬所

溝口実穂さん
自分を愛することを、後回しにしてはいけない

story ストーリー| # # #

ストーリー

五感で四季のお菓子を味わう、完全予約制の茶寮を営む溝口実穂さん。ホッと一息できる場を提供するための、おもてなしの心得と自分を整える習慣を伺いました。

周りを幸せにするためにはまず
自分が満たされる必要がある

懐石料理のように季節の菓子とお茶をコースで提供している『菓子屋ここのつ茶寮』。毎月、予約がすぐに埋まる人気店です。主催の溝口実穂さんは、和菓子屋で修行し、8年前にこの茶寮を開業。

「菓子にはなぜ料理のようなコースがないのか? ないなら私がやってみよう、という想いから始めました」

と、語る溝口さん。以来、お一人で切り盛りされています。

「菓子を作り、おもてなしをすることは緊張の連続です。だからこそ、気持ちをリセットしたり、リラックスしたりする習慣は大切。悩んだときも好きな香りのお風呂で温まりぐっすり寝て、昨日に悩みは置いてくる、というように」

仕事の合間に、心が赴くままに散歩をしてリフレッシュ。季節のうつろいを感じることで、アイデアが浮かぶことも。
仕事の合間に、心が赴くままに散歩をしてリフレッシュ。季節のうつろいを感じることで、アイデアが浮かぶことも。
カメラはお出かけのお供。写真には「記録」の役割があると考え、変わりゆく自然や風景、心が動いた瞬間を切り取ります。
カメラはお出かけのお供。写真には「記録」の役割があると考え、変わりゆく自然や風景、心が動いた瞬間を切り取ります。
蒸しタオルに「SAIL」のオリジナルブレンド精油を数滴垂らします。香りを愉しみ、短い時間でリラックス。
蒸しタオルに「SAIL」のオリジナルブレンド精油を数滴垂らします。香りを愉しみ、短い時間でリラックス。
集中して呼吸が浅くなったとき、お茶の湯気を吸いこむことで、自然と深い呼吸に。
集中して呼吸が浅くなったとき、お茶の湯気を吸いこむことで、自然と深い呼吸に。

「周りを幸せにするためには、まず自分が満たされる必要があるので、自分で自分の機嫌を取り、自分を愛することを後回しにしてはいけないと思っているんです」

食や光、季節の移ろいで本来の
自分を取り戻してもらえるように

溝口さんのつくる菓子に、必要以上の砂糖は使われません。

「菓子も料理のように季節の味を届けたくて。涼しくなるとホクホクしたものが食べたくなるといった、季節ならではの感覚に正直でいると、体が喜ぶんです」

と、自然を感じることを大切にされています。

お正月を意識したお菓子。黒豆・小豆・さつま芋・道明寺・オールスパイス、香りづけに柚子を使用。
お正月を意識したお菓子。黒豆・小豆・さつま芋・道明寺・オールスパイス、香りづけに柚子を使用。

また、季節の味わい方は食材だけではないそうです。

「陽の光でも季節を体で感じられます。お店にいると、夏場の17時はまだ明るいのに、冬場はもう暗い、というように。私は以前の職場で忙しくて四季を感じられなかった経験があるのですが、きっとかつての私のように日々を忙しく過ごしている方は多いはず。ここはお客様にとって四季を感じ、本来の自分を取り戻せる場所であってほしいと願っています」

店名の意味について。「数字の10が満点として、自分だけでは満点にはなれない。わざわざ予約していらしてくださるお客様とあわせて満点に、という意味を込めています」
店名の意味について。「数字の10が満点として、自分だけでは満点にはなれない。わざわざ予約していらしてくださるお客様とあわせて満点に、という意味を込めています」
店内では器も販売。器をかざる棚は、近所の小学校で捨てられるはずだったものを引き取り、塗り直し、再使用したもの。
店内では器も販売。器をかざる棚は、近所の小学校で捨てられるはずだったものを引き取り、塗り直し、再使用したもの。
茶壷を二つ使用してお茶をいれるのは、溝口さんオリジナルの所作。
茶壷を二つ使用してお茶をいれるのは、溝口さんオリジナルの所作。

自分が責任を取れる範囲で
自由でいられることの心地よさ

季節を感じ、自分を大切にするために。すべてにおいて「ルールで縛る」ことを敢えてしないそう。

「軽やかでいられるよう、日々のルーティンは決めていません。また、菓子はその日の気候などによって微妙に材料・工程を変えるので、メニュー名もつけていません。自分が責任を取れる範囲で、自由でいたいんです。一人でお店を守っているのもそのため。自分の不器用さにも気づいたので、人と比べず自分と向き合えているいま、とても心地よく生きられています」

菓子屋ここのつ茶寮

  • 店舗には看板がなく、「お店には看板を出すもの」というルールにもとらわれません。

    東京都台東区鳥越
    営業時間:HPにて事前告知、完全予約制。
    https://9-kokonotu.com/

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溝口実穂さん

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みぞぐち・みほ 1991年、埼玉県生まれ。和菓子屋で働いていた23歳の時に、東京の浅草・鳥越で『菓子屋ここのつ茶寮』を始める。2020年には安藤雅信氏との共著『茶と糧菓 喫茶の時間芸術』も上梓。