サルコペニアの症状を2つの方法でチェックしよう!原因や治療法も解説
サルコペニアは加齢に伴って筋肉量が減少し、筋力低下を引き起こす現象です。 進行すると嚥下障害などの介護リスクが高まることから早期発見が重要となります。 本記事では、サルコペニアが引き起こす症状の原因や、2つのチェック方法、そして治療について解説します。
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サルコペニアとは
サルコペニアとは、加齢や複数の原因によって筋肉量の減少や筋力低下を起こす現象です。
ここではサルコペニアのタイプを2種類解説します。
サルコペニアのタイプは2種類
サルコペニアのタイプは「加齢」が原因の一次性サルコペニアと「活動」「栄養」「疾病」のいずれか、またはすべてを満たして起こる二次性サルコペニアの2種類です。
サルコペニアの種類と特徴 | 特徴 |
---|---|
一次性サルコペニア | 加齢が原因となって起こる |
二次性サルコペニア | 「活動」「疾病」「栄養」のいずれか、またはすべてを満たして起こる |
一次性、二次性以外にも「病院での不適切な禁食」「不適切な栄養管理」「医原性疾患(医療行為が原因で起こる疾患)」が原因となって起こる医原性サルコペニアもあります。
サルコペニアの原因は?
サルコペニアの原因は、タイプによって異なります。
加齢によって起こる一次性サルコペニアや、さまざまな要因によって起こる二次性サルコペニアなど、それぞれ原因が異なるため、それぞれの特徴を知ることが大切です。
筋肉量の減少による筋力低下
サルコペニアの原因は筋肉量の減少による筋力低下です。
一次性サルコペニアや二次性サルコペニアと、筋肉量の減少による筋力低下が起こる本来の要因は異なるものの「ペットボトルなどの蓋が開けづらくなった」「歩く速度が遅いと周囲から指摘されるようになった」などの現象はすべてのサルコペニアに共通しています。
サルコペニアは若くても起こる可能性も
「サルコペニアは高齢者がなるものである」という認識は間違いです。
一次性サルコペニアのように加齢が原因となるものもありますが、二次性サルコペニアや医原性サルコペニアなど、40代、50代など若い世代でもサルコペニアが起こる可能性はあります。
【日常生活】サルコペニアの症状チェック
ここでは、日常生活からサルコペニアの症状をチェックしていきます。
- 最近、転びやすくなった
- ペットボトルのキャップなど力を入れる作業が難しくなった
- 横断歩道を青信号の間に渡り切れなくなった
- 体重は変わらないのにふくらはぎだけが細くなった
- 痛み・疼痛(とうつう)を感じる
チェック①最近、転びやすくなった
サルコペニアは全身の筋肉量が減少し筋力が低下します。
中でも、背筋や腹筋、膝を伸ばす「大腿四頭筋」など立つ姿勢に必要となる筋肉量の減少や筋力低下によって段差や障害物につまづきやすくなり、転倒リスクが高まるのです。
事実、文献「転倒と失神の疫学(The epidemiology of falls and syncope,)」によると筋力低下がある方の転倒リスクは、ない方に比べて4.4倍上昇するとしています。
また高齢者の場合、転倒による骨折によって寝たきり状態に移行する危険性もあるため、最近ちょっとしたところで転びやすくなったという方は注意が必要です。
チェック②ペットボトルのキャップなど力を入れる作業が難しくなった
サルコペニアは筋力の低下が起こる現象であるため、握力が弱まり、ペットボトルのキャップを開けるなどの力を入れる作業が難しくなる可能性があります。
握力は全身の健康状態を表すとも言われるように、握力が弱いほど身体機能の低下や日常生活で行う動作への障害が発生しやすくなります。
2015年に英国の医学雑誌「The Lancet誌」で発表された大規模な国際的研究の結果によると、握力が弱いと心臓発作と脳卒中のリスクが増大することがわかった、としており、筋力低下によって握力が弱まることが身体障害や死亡リスクに関与するとしているのです。
さらに詳しく研究結果を読み解いていくと次のような内容も記載されています。
- 握力が5kg低下するごとに研究参加者の全死因死亡リスクが16%高まった。
- 握力が5kg低下するごとに研究参加者の脳卒中リスクが9%高まった。
- 握力が5kg低下するごとに研究参加者の心臓発作リスクが7%高まった。
この結果から、サルコペニアによる握力の低下は日常生活に不便さを与えるだけでなく、私たちの命に関わる高いリスクに関与しているため、早急な治療が必要となる状態なのです。
チェック③横断歩道を青信号の間に渡り切れなくなった
サルコペニアによる症状には、筋肉量の減少による筋力低下が原因で、歩行速度が遅くなることも挙げられます。
歩行速度はサルコペニアの診断基準にもされている要素で、1秒あたりの歩行速度が0.8m〜1m未満だとサルコペニアの可能性が疑われます。
わかりやすい例として、日常的に利用する横断歩道の長さが5mの場合、1秒あたり1m、つまり5秒程度で渡り切れる場合は問題ありませんが、それ以上の時間がかかる場合は要注意ということです。
歩行速度が遅くなることは、外出時の事故リスクが高まります。
また、フランス・パリ第6大学のAlexis Elbaz氏によると心臓病のリスクが通常よりも3倍高まると報告されていることから、握力とあわせて早め早めの診断・治療を意識したほうが安心でしょう。
チェック④体重は変わらないのにふくらはぎだけが細くなった
サルコペニアの症状には、体重自体に変化はなく、痩せたわけでもないのにふくらはぎだけが細くなるという現象もあります。
これはサルコペニアによる筋肉量の減少を原因として、ふくらはぎの筋肉が衰え痩せてしまった結果です。
ふくらはぎの細さに関しては、ご自身でチェックすることもできます。
診断する方法としては、ふくらはぎの最も太い部分をメジャーで計測して、男性であれば34cm未満、女性であれば33cm未満だとサルコペニアの疑いが高まるというものです。
他にも、簡単にふくらはぎでサルコペニアかをチェックする方法では、指で輪っかを作り、ふくらはぎの最も太い部分を囲めるか、というテストも有効です。
チェック⑤痛み・疼痛(とうつう)を感じる
サルコペニアの症状として「痛み」「疼痛(とうつう)」を感じるケースもあります。
疼痛(とうつう)とは、身体に損傷が起こったこと、あるいは起こった可能性があることを知らせる痛みで医学用語では「痛み」を指します。
この疼痛は「鋭い痛み」や「鈍い痛み」「持続的な痛み」など種類はさまざまです。
しかし、サルコペニアの診断基準に疼痛は含まれないことや、疼痛を感じないサルコペニア患者もいるため、疼痛とサルコペニアとの関連性は解明されていません。
ただ、過去に行われたサルコペニア患者に対する疼痛研究では次の条件を持ったサルコペニア患者が疼痛を訴えたと報告されています。
- 50歳以降
- 過去に骨折経験がある
- 片足立ちが難しい
因果関係は不明ですが、サルコペニア予備軍や既にサルコペニアを発症している方の中には何らかの疼痛を感じる可能性もあると考えられるでしょう。
【テスト】サルコペニアの症状チェック
次はサルコペニアの症状をチェックするテスト方法を解説します。
- 指輪っかテスト
- 立ち上がりテスト
- 歩行速度テスト
- 握力テスト
- 片足立ちテスト
家でもチェックできるテスト方法のため、ぜひ試してみてください。
チェック①指輪っかテスト
指輪っかテストは、ふくらはぎの細さをチェックするテスト方法です。
- 両手の親指同士と人差し指同士をそれぞれ合わせて輪っかを作る。
- 作った輪っかで、利き足ではないふくらはぎの一番太い部分を囲む。
指輪っかテストの結果からサルコペニアの可能性が高い順を並べてみます。
- 隙間ができた(両手で作った指の輪っかよりもふくらはぎが細い)
- ちょうど囲める
- 囲めない
1の状況が最もサルコペニアの可能性が高いとされており、なるべく早い時点で病院の受診が必要です。
2や3の場合、サルコペニアの可能性は低いと考えられますが、ご自身で筋力の低下を感じる場合は、一度病院を受診して医師へ相談してみることをおすすめします。
チェック②立ち上がりテスト
立ち上がりテストは筋肉の機能低下をチェックする方法です。
- 椅子に座って両腕を胸の前で組む。
- 椅子から立ち上がり、座るを5回素早く繰り返す。
- 5回立ち上がって座るまでにかかった時間を測定する。
椅子から立ち上がって座る行為を5回繰り返す際の目標時間は12秒未満です。
12秒以上かかる場合、筋肉の機能が低下している可能性が考えられ、サルコペニアの疑いが高まります。
チェック③歩行速度テスト
歩行速度の測定テストは、サルコペニアの診断基準にも利用されます。
歩行距離に決まりはないため、今回は5mで歩行速度をチェックするテスト方法です。
- 5mの距離を「いつも歩いているように歩く」
- 5mの距離を「できるだけ速く歩く」
5m歩行テストは、5mの距離を何秒で歩けるかを測定するテストです。
歩行速度の基準は1秒あたり0.8m〜1m未満で、2回の5m歩行テストの結果が5秒より遅い場合はサルコペニアの可能性が疑われます。
チェック④握力テスト
握力テストは、専用の機器を使用して、筋力の低下をチェックするテスト方法です。
- 男性:28kg未満
- 女性:18kg未満
握力テストの基準値は男性が28kg未満、女性で18kg未満です。
基準値よりも握力が低い場合、サルコペニアの可能性があると判断されます。
また、下の数値は平成27年にスポーツ庁が発表した「平成27年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について」の中にある「加齢に伴う握力の変化」です。
年齢 | 男子(kg) | 女性(kg) |
---|---|---|
20〜24歳 | 46.33 | 27.79 |
25〜29歳 | 46.89 | 28.27 |
30〜34歳 | 47.03 | 28.77 |
35〜39歳 | 47.16 | 29.34 |
40〜44歳 | 46.95 | 29.35 |
45〜49歳 | 46.51 | 29.31 |
50〜54歳 | 45.68 | 28.17 |
55〜59歳 | 44.69 | 27.41 |
60〜64歳 | 42.85 | 26.31 |
70〜74歳 | 37.36 | 23.82 |
75〜79歳 | 35.07 | 22.49 |
こちらの表も参考にして、ご自身の年齢では何kgがラインなのかを確認してから結果を比較してみてください。
チェック⑤片足立ちテスト
片足立ちは身体のバランス能力に関してチェックするテスト方法です。
開眼片脚立位テストと呼ばれています。
- 素足になって滑りにくい床の上に立つ。
- 腰に手をあてて立ちやすい方の足で立つ。
- 片足を床から5cmほど高く上げて立っていられる時間を計測する
維持できる時間の目標は1分で、維持できれば現時点でサルコペニアの可能性は低いと考えられます。
一方、片側は1分維持できたとしても、もう片側で維持できた時間が15秒未満の場合は注意、8秒以下だとサルコペニアの可能性が高いため、注意が必要です。
維持できた時間が短い程、身体機能が低下していると考えられるため、「病院を受診して医療従事者によるテストを受ける」という選択肢もあります。気になる方は受けてみてもよいでしょう。
サルコペニアの症状を改善させる治療法
次はサルコペニアの症状を改善させる治療法を2つ解説します。
- 食事療法
- 運動療法
食事療法
食事療法とは、サルコペニアによって減少する筋肉量や、筋力低下を防ぐ栄養成分を毎日の食事でバランス良く摂取して症状を改善させることを目的とした治療法です。
主にタンパク質やビタミンD、必須アミノ酸の3種(バリン・ロイシン・イソロイシン)の摂取が必要だとされています。
期待できる効果 | 食材 | 1日の推奨摂取量 | |
---|---|---|---|
タンパク質 | 筋肉量の低下を防ぎ、筋力の維持や改善 |
・肉類 |
1日に適正体重の1kgあたり1.0g以上 筋肉を増やす場合は1kgあたり1.2~1.5g |
ビタミンD | 筋肉の萎縮を防ぐ |
・魚介類 |
1日8.5μg |
必須アミノ酸(バリン・ロイシン・イソロイシン) | 筋肉量を増やしたり、維持したりする |
・チーズ |
バリシン:1日26mg |
日常的な食事でこれらの成分を意識して摂取することが、サルコペニアの症状を改善させるために大切です。
また、年齢を重ねて食が細くなり、なかなかバランス良く食事が摂れないという方は、サプリメントなどの利用も検討してみましょう。
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運動療法
運動療法とは、日常的に有酸素運動や、筋トレ(レジスタンス運動)などを行い、筋肉量を増加・維持させる治療法です。
運動 | 期待できる効果 |
---|---|
有酸素運動(リハビリも含む) |
|
レジスタンス運動(筋トレ) |
|
2017年に発刊されたサルコペニア診療ガイドラインでは、サルコペニアの予防や治療に対してレジスタンス運動(筋トレ)が推奨されています。
過去に行われた研究ではレジスタンス運動(筋トレ)によって、筋力や機能、筋肉量に対する改善効果が示されており、平均年齢90歳(86歳〜96歳)の高齢者でも筋肉量の増加と筋力アップが認められたとされています。
またレジスタンス運動(筋トレ)以外にも心肺機能を高めて全身の筋肉を動かし、筋肉の材料となるタンパク質の合成効果が期待できる有酸素運動も組み合わせると良いでしょう。
ほかにも、運動と適切な食事を組み合わせることで、筋肉量の減少や筋力低下を防ぐ効果が期待できます。
サルコペニアを予防する2つの方法
次はここまでのまとめとして、サルコペニアを予防する方法を2つ解説します。
- 栄養バランスの良い食事を積極的に摂る
- 適度に身体を動かす
1.栄養バランスの良い食事を積極的に摂る
サルコペニア予防をするためには、身体が必要とする栄養をバランス良く取り入れた食事を積極的に摂るよう意識することが大切です。
食が細くなってなかなか食事が摂れない方はサプリメントも取り入れるなど、ご自身の生活スタイルにあわせて臨機応変に対応しましょう。
また、栄養は多く摂れば良いわけではなく適量が大切です。
好きなだけご飯を食べるというのは、サルコペニア肥満と呼ばれる状態になる可能性もあるため、注意が必要です。
2.適度に身体を動かす
栄養バランスの良い食事以外にも、レジスタンス運動(筋トレ)や有酸素運動などで適度に身体を動かすことも忘れてはいけません。
運動は心肺機能を高めたり、筋肉の量を維持、増加させたりなど、サルコペニアを予防するために大切な要素です。
また「どうしても運動は苦手」という方は、買い物のついでに散歩をしたり、ラジオ体操をしたりと、できることから始めていきましょう。
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さらに、筋肉づくりに欠かせない必須アミノ酸「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」に加え、スーパーアミノ酸と称される「シトルリン」や「アルギニン」によって、ハリのある活動的な毎日をサポートします。
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まとめ
本記事ではサルコペニアの症状や、チェック方法、改善方法を解説しました。
サルコペニアの原因は様々で、年齢や性別関係なく起こる可能性があります。
高齢者の場合、進行すると要介護や死亡リスクが高まるため、日常生活の中で「前はできていたことができなくなった」と感じたタイミングで病院の受診を検討するべきでしょう。
また「私には関係ないよ」と思われる元気な方でも、早い時点から予防していくことでサルコペニアのリスクを未然に防ぐことができます。
本記事を参考に、サルコペニアに関する知識を深め、いつまでも元気に歩ける人生を送れるよう計画を立ててみましょう。