私らしく。 by 再春館製薬所

不調を整える薬膳ごはん入門#07

端山彩香さん
湿気による重だるさを和らげる。胃腸を補う緑豆ポテトサラダ

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「なんとなく調子が悪い」。そんな身体の声はついおろそかにしてしまいがち。でも、毎日をもっと軽やかに過ごすには、小さい不調も早めにケアしたいですよね。心と身体をいたわる食養生法【薬膳】を学ぶシリーズ第7回。今回は【トトのエ】の端山彩香さんに、梅雨など湿気の多い時季におすすめの食材の組み合わせを伺いました。

自分の体質を知ることが
薬膳生活の第一歩

薬膳料理と茶菓「トトのエ」を営む端山彩香さんは、もともと自身の身体のことや、食事には無頓着だったと話します。

「以前は店舗設計のデザイナーをしていて、その頃は何を食べるか考えるのも面倒なほど、仕事に夢中だったんです。丸1日何も食べない日もありましたね」

そんななか、息抜きに観ていた韓国ドラマに出てくる料理にくぎ付けになったという端山さん。ご飯にスープ、色とりどりのおかずで構成された家庭料理を見て、「自分でもつくってみたい」と韓国料理の本を購入します。
韓国では中医学の考え方が食文化に根付いているそうで、その本も薬膳をテーマにしたものでした。

「こんな食事法があるんだって驚きましたね。体調から食材を選んで、元気になれる。なんて役に立つ知識なんだろうって」

トトのエの内装デザインも自身で手がけています。

体力が落ちてきたなと感じたら鶏肉、なんだかイライラする時は香りのよい食材、など、身につけた知識をすぐ実践できることに面白さを感じ、「もっと深く学んでみたい」と学校に通い始めます。
そこで、端山さんは初めて自分の体質と向き合うことになります。

「先生に舌を見せたら、『あなたすごく胃腸が弱いわね』って言われたんです。胃腸は強いタイプだとずっと思っていたので、最初は全然信じられなくて(笑)。でも、自分の身体を観察していくうちに、ふに落ちることがたくさんあったんですよ」

中医学では、舌の色や形、動きなどを見て身体の状態を診断する「舌診(ぜっしん)」という診察があるんだ。例えば、舌が大きくて腫れぼったいと身体もむくんでいて、エネルギー不足の可能性もあるので、舌の縁に歯形がつくことも。毎日鏡でチェックするだけでも、わかることがあるんだね。

どこかおなかが張っている気がして、たくさん食べられない。夜になると足がパンパンにむくんでしまう。どれだけトレーニングを頑張っても、筋肉がつかない……。
症状はそれぞれ違うけれど、全て胃腸の弱さが原因なのでは、と思うようになったそうです。

「胃腸が弱いと、栄養素を運搬してくれたり、不要なものを排出してくれたりする『気』がつくれないんです。そうすると、水分もたまりやすくなる。つまり、むくみにつながりますよね。あと、『気』がないと血肉のもとになる『血』もつくられないので、筋肉もつかないんですね」

自身の体質を理解してからは、胃腸をいたわる食事を心がけているという端山さん。消化のいいものや温かいものを、ゆっくり食べるようになりました。

「薬膳は、個人の体質に合わせて献立を考える食事法。だから、まずは自分を知ることが大切です。例えば、何を食べたらおいしいと感じるか、逆にどんなものが苦手かでわかることもあるんです。身体と対話してわかることって多いんですね」

薬膳に出合ってから、自身の身体の変化にも敏感になり、風邪もほとんどひかなくなったという端山さん。「食事や健康への意識が高くない人にこそ、薬膳のことを知ってもらいたい」という思いから、お店をオープンしました。

食材の効能だけでなく
組み合わせを考える

お店のメニューは、蒸し料理とお粥(かゆ)が中心です。蒸すという調理法を選んだのも、理由があります。
「調理法によっても、合う人と合わない人がいるんです。『焼く』は、食材から水分を奪うので、水分が足りていない人にとってはあまりよくない。『揚げる』は、脂質が多く胃腸に負担がかかるので、胃腸が弱い人は控えたほうがいい。『蒸す』は、どちらの心配もないので、どんな人にも適しているんですよね」

滋養強壮によく、身体を潤す作用のある豚肉と、消化を促進してくれる野菜がたっぷり入った『豚の角煮と蒸籠蒸しご飯』。

食材にどんな効能があるのかだけでなく、どう調理するのかを考えることも、薬膳を取り入れる上で大切なこと。普段どんな調理法をすることが多いかな? と振り返ることも、自分自身を観察することにつながるかもしれませんね。

『もう一つの看板メニューであるお粥も、どんな体質や体調の人でも食べられる料理ですね』。ベースになっている薬膳スープは20種類以上の生薬を煮出しています。滋養強壮、冷え緩和、消化促進、ストレス解消などを目指した『元気になるスープ』です。
お粥には、気になる症状に合わせてトッピングを選べます。左上から時計回りに、金針菜(貧血・不眠)、パクチー(ストレス・食欲増進)、えのき茸(ほてり・潤い)、ハトムギ(むくみ・美白)、蓮(はす)の実(不眠・胃弱)、黒キクラゲ(アンチエイジング)。

食材や調理法に加え、端山さんが大切にしているのは「組み合わせ」です。
そこで、これから訪れる梅雨に向けて、おすすめの食材の組み合わせを伺いました。

「梅雨は雨の影響で湿気が多いだけでなく、だんだん暑くなってくる時季でもあるので、湿気と熱を外に出してくれる緑豆がおすすめです。ただ、デトックスするだけだと、必要な体力も一緒に奪われてしまうこともあるので、胃腸を補って気力をつけてくれるジャガイモを合わせるといいですね」

中医学の理論では、組み合わせてはいけないとされている食材があるんだ。例えば、高麗人参はエネルギーをため込む食材で、大根はデトックスする食材。一緒に食べると、せっかく取り込もうとしたものが出ていってしまうんだね。効能が無駄にならないように、組み合わせを考えることはとても大切なことなんだ。

「例えば、身体を冷やしてくれるトマトも、日中外にいて身体がほてっている人にはいいのですが、冷房の効いた部屋にいる人にとっては冷えすぎてしまう可能性がある。その場合、身体を温めてくれるシソを少し合わせるなど、工夫をすることも大切です」

「できる限りお客さんと会話をして相談にのれたら」と言う端山さん。
普段どんな物を食べているか? 外か部屋の中、どちらで過ごすことが多いか? 睡眠の質はどうか? など、さまざまな話を聞いて、メニューから少しアレンジをして提供することもあるそうです。

「お粥に蓮の実をトッピングする常連さんがいるんですけど、うちのお粥を食べるとよく眠れる気がするって言ってくださるんです。少しでも効果を感じてもらえてるって思うと、やっぱりうれしいですよね」

生活を振り返り、さまざまな角度から自分を知ること。身体の変化を観察してみることが、薬膳を楽しむ一歩になりそうですね。

「出す」と「補う」をバランスよく
湿気を出して胃腸を補う薬膳レシピ

お酢と豆乳の味付けでさっぱりと
緑豆ポテトサラダ

【材料(2人分)】
ジャガイモ………3個(約500g)
緑豆………50g(乾燥した状態)※トウモロコシや枝豆などでも代用可
酢………大さじ3(少し酸味が強めの味付けです。お好みで調整してください)
豆乳………大さじ2
塩………適量
ホワイトペッパー………適量

【つくり方】
❶緑豆をよく洗い2~3時間浸水する(浸水する時間がない時はゆで時間を伸ばす)。浸水後、水を切り、塩をひとつまみ入れたお湯でゆでる。初めは強火でゆで、アクが出たら取り除き弱火で20~30分ゆでる。火が通ったらザルにあげて冷ましておく。
❷ジャガイモをよく洗い皮付きのままゆでる。竹串がスッと入るくらいになったら、水だけ捨てて、火にかけて水分を飛ばす。
❸火を止めてお酢を回し入れ混ぜ合わせ、塩とホワイトペッパーを加えて味を調整する。
❹いったん冷まし、粗熱が取れたら豆乳を加えて混ぜる。ジャガイモの水分を見ながら、しっとりするくらいに調整する。
❺冷ましておいた緑豆を混ぜる。混ぜる量はお好みで。身体を冷やす食材なので、冷え性の方は控えめがおすすめ。
❻お皿に盛る。パクチーや粗びきのブラックペッパーはお好みで。

※トウモロコシや枝豆は、緑豆と違い、身体の熱を取り除いてくれる作用はありませんが、身体の中の余分な水分を取り除いてくれます。たくさん水分をとりがちな夏にもおすすめな食材です。

トトのエ

  • 蒸籠蒸し料理やお粥を中心とした薬膳料理のお店。薬膳茶やスイーツなど、お茶の時間を楽しむメニューも充実しています。資格取得が可能な講座も定期的に開催。

    神奈川県鎌倉市材木座6-6-16 1F
    TEL : 0467-81-5850
    定休日: 月・火曜

    公式サイト:https://totonoe-kamakura.jp/

    お店の内部

文:竹ノ上ひとみ 写真:関めぐみ 薬膳監修:田野岡亮太(再春館製薬所)

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端山彩香さん

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はやま・さやか
航空会社勤務、インテリアデザイナーなどを経て、2023年に鎌倉・材木座に「トトのエ」をオープン。世界中医薬学会連合会認定国際中医薬膳管理師。