不調を整える薬膳ごはん入門#008

ミレイ さん
身体の熱を排出し気力を補う、夏野菜と鶏肉のだしびたし

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ミレイさん|不調を整える薬膳ごはん入門身体の熱を排出し気力を補う、夏野菜と鶏肉のだしびたし

「なんとなく調子が悪い」。そんな身体の声はついおろそかにしてしまいがち。でも、毎日をもっと軽やかに過ごすには、小さい不調も早めにケアしたいですよね。心と身体をいたわる食養生法【薬膳】を学ぶシリーズ第8回。今回は【MIREIN】のミレイさんに、日々の料理に薬膳をうまく取り入れるコツを伺いました。

その土地の環境が
食材と身体をつくる

「実は世田谷区って、都内23区で2番目に広い農地面積を有してるんですよ」。教えてくれたのは、東京都世田谷区で料理教室「MIREIN」を主宰するミレイさんです。

「歩いて10分の場所にも畑があって、教室で使う野菜はそこから仕入れています。『身土不二(しんどふじ)』という言葉があるんですが、身体は暮らしている土地の自然環境や、土地に根付いた文化環境の影響を受けるもの。だから、その環境に適応して育った作物を食べるのが、身体にとって一番いいという考え方なんです。『自然と人間は一体である』という中医学の考えとも通じますよね」

教室の献立は、近隣の農家さんに畑の様子を聞いてから、その時収穫できる野菜を中心に組み立てているそうです。

新鮮な野菜の写真
提携している農家さんとは、28年のお付き合い。ミレイさんも畑に行って収穫をすることもあるそうです。「なにより、新鮮だとおいしさが違いますね」。

幼い頃から食べ物に関心があったというミレイさん。仕事で忙しかった両親の代わりに、毎日の食事をつくってくれていたのは、おばあさんでした。

「祖母は畑で野菜を育てていて、うどんやパンなども全部自家製。料理上手でしたね。いま思えば、『その土地にあるものを使って料理をする』という考え方も、その頃から自然と身についていたのかもしれません」

しかし、中学生の時に突然おばあさんが亡くなったことで食生活がガラッと変わってしまい、「家のごはんがおいしいのは当たり前なことじゃなかったんだ」と気づきます。
そこで、ミレイさんは自ら申し出て、一家の食事担当を担うことになりました。
「それまで料理はほとんどやったことがなかったんですけど、やってみたら思いのほかうまくできたんです(笑)。家族もみんな喜んでくれて、料理って楽しいかも、という気持ちが次第に芽生えていきました」

その後、本格的に料理の道に進むことを決意。料亭での板前修業や料理学校の講師などを経て、現在の場所に料理教室を開きました。

「祖母の影響もあってか、野菜が大好き。旬の野菜は味もすごくおいしいし、栄養価も高いですよね。それで、当時は『身体に優しい料理教室』をコンセプトにしていました」

ミレイさんの写真
おばあさんが昔着ていた着物がミレイさんのトレードマーク。

教室を運営していくうちに、食材の知識をしっかり身につけたいと感じるようになり、さまざまな食養生法を調べていくなかで、薬膳に出合います。すると、幼少期に過ごした香港での思い出が鮮明によみがえってきたそうです。

「小学生の時に、父親の仕事の関係で1年半ほど香港に住んでいたことがあったんです。夏は亀ゼリーを売っているお店が町中にたくさんあったり、ジュースは常温で、冷たい飲み物は絶対に飲まなかったり。当時は不思議だなぁと思っていたことが、全部薬膳とつながって」

亀ゼリーは亀の甲羅と数種類の生薬でつくられていて、香港や中国南部では古くから親しまれている薬膳スイーツなんだ。身体にこもった熱や湿気を排出してくれるといわれているので、夏の香港では日常的に食べられていたんだね。同じような作用が期待できるスイカやマンゴーなどの果物も、町中でたくさん売られていたんだって。

ある日体調が悪く道端でうずくまっていると、近くにいた女性がミントのような香りがする精油を首筋や耳の後ろに塗ってくれて、気分がスーッと楽になったこともあったそうです。

「香りの効果で気のめぐりがよくなって、身体が楽になったんでしょうね。自然の力を取り入れて体調を整えるという薬膳の考え方が、香港の暮らしには根付いていたんだなって、勉強してみるとふに落ちることがたくさんありました」

薬膳の知識を身につけてからは、「おいしいこと」はもちろん、「心と身体が喜ぶレシピ」を軸に、毎日の食事づくりが楽しくなるようなコツも伝えています。

不調の根本原因を探って
自分に必要な食材を見つける

教室では、生徒さんそれぞれの話を聞いて、会話をする時間も大切にしているそうです。

「不調の原因って、人によって違うんですよ。ひとくくりに頭痛と言っても、風邪をひいたのか、ストレスで気が滞っているのか、そもそも血が足りていないのか。原因はいろいろあって、必要な食材も変わってきます。なので、生活習慣など身体以外の話も聞いて、その方の根本原因を一緒に探っていくんです」

薬膳茶を注ぐ写真
薬膳教室の初めに出される薬膳茶。お茶を飲みながら、その日に使う食材の説明、季節の養生法などの話を聞いてから講座がスタートします。
リフレッシュになる空間の写真
生徒の皆さんは子育てや仕事で忙しく、お茶を飲みながら話す時間がリフレッシュになっている方も多いのだとか。

薬膳は即効性があるものではなく、続けることで少しずつ効果が期待できる食養生法。自分にとって必要な食材がわかったら、次はそれを日常の料理にどう取り込んでいくのかが重要です。
「続けるためには、食材を使うハードルを下げること」とミレイさんは話します。

「例えば、気力が減退しやすい人におすすめな『大豆』。でも、大豆って水に浸してゆでて......と手間のかかるイメージが強いですよね。だから、一度にたくさん大豆をゆでて、冷凍しておくと便利です。そうすれば、食べる時に使う分だけ、そのままスープやサラダにトッピングしたり、ご飯と混ぜたり。アレンジを効かせられるようになれば、続けるのも楽しくなりますよ」

炊き込みご飯の写真
この日の献立の一つ、タコと枝豆の炊き込みご飯。「『大豆』と聞くと、乾燥豆を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、夏は枝豆でもいいですし、豆腐、厚揚げなども大豆が原料。そう考えれば、料理のバリエーションも広がりますね」。

食材の効能ばかりに目がいってしまうと、つい義務感で「身体のために食べないと」と思ってしまうこともありますよね。
でも、薬膳は薬ではなく、あくまで食事。おいしく食べることが、続けるコツなのだなということを改めて感じます。

つくり置きをして
暑い日は体力を温存する

忙しい人のために、「なるべく手間を少なくすること」も、ミレイさんが料理をする上で意識していることの一つ。そこで、食材だけでなく調理過程においても、これから迎える夏にむけて、おすすめの料理を教えていただきました。

「夏は暑くて、ただでさえ疲れやすいのに、調理場に立つ時間が長いと、さらにつらくなりますよね。なので、まとめてつくることができて数日置いてもおいしく食べられる『夏野菜と鶏肉のだしびたし』をご紹介します」

「身体の熱を排出してくれるナス、トマトなどの夏野菜と、夏に消耗しやすい気力を補ってくれる鶏肉の組み合わせです。中でもゴーヤは、熱によって生じるイライラや不安感を落ち着かせてくれる作用もあるので、夏の寝苦しさに悩む方には特におすすめの食材ですよ」

夏は、睡眠の質が下がってしまいがち。身体にこもった熱を上手に排出できないと、精神が興奮状態のまま脳が休まらない状態になって、不眠につながってしまうんだって。熱をため込まないようにすること、たまってしまったらリラックスして気持ちを落ち着かせることに気を付けるとよさそうだね。

20年以上通っている生徒さんの中には、薬膳を取り入れてから体調がどんどんよくなっていった方もいるそうです。
「食材の力ももちろんありますが、身体に意識を向けるようになると、いろいろな場面で自分を大切にすることにもつながりますよね。『今日は疲れてるからつくり置きのおかずで済まそう』って、手抜きじゃなくて、自分への愛情だと思うんです」

調理法や料理にちょっと工夫をして、気持ちに余裕を持たせることも、薬膳を続ける秘訣(ひけつ)かもしれませんね。

気力も体力も奪われがちな夏に
熱を排出し、疲労を回復する薬膳レシピ

鶏肉のうまみで、だし要らず
夏野菜と鶏肉のだしびたし

夏野菜と鶏肉のだしびたし写真

【材料(2人分)】※何回かに分けて食べられるよう、分量は多めです。
鶏胸肉.........1枚
ショウガ.........少々
塩こうじ.........大さじ1(ない場合は、塩小さじ1〜。お好みで調整してください)
白こしょう(なくてもOK).........少々
米粉(片栗粉で代用可).........大さじ2
ゴーヤ.........1本
ナス.........4本
ズッキーニ.........1本
ミニトマト.........8個
シソ.........適量
酒.........50cc
みりん.........大さじ3
水.........2カップ
薄口しょうゆ(濃口しょうゆで代用可).........大さじ1
米油(サラダ油で代用可).........適量
塩.........適量

【つくり方】
❶鶏胸肉は一口大のそぎ切りにして、ショウガのすりおろし、塩こうじと白こしょうをまぶしておく。
❷ゴーヤは7mm幅の薄切りにし、種を取り除く。ナスは半分に切って格子に切り込みを入れ塩水にさらす。ズッキーニは1cm幅の半月に切る。ミニトマトは湯むきする。
❸鍋に酒とみりんを加え沸騰させる。米粉をまぶした❶の鶏胸肉を加え、水1カップを入れ、沸騰したら中火に落として5分煮る。さらに水1カップを加え、再度沸騰したら、薄口しょうゆを加えて味を調える。
❹フライパンに米油を熱し、水気を拭き取ったナスを皮から先に焼く。ズッキーニ、ゴーヤも少し焼き色がつくまで焼く。❸の鍋にナス、ズッキーニ、ゴーヤ、ミニトマトを入れ、だしに浸す。
※すぐに食べても、1〜2日浸しておいても、おいしくいただけます。
※身体が冷えすぎないように、温め作用があるシソをトッピングすることで、バランスを整えます。

MIREIN(ミレイン)

  • 地元・世田谷区で育てられた野菜をふんだんに使ったメニューが中心。料理教室は、和食をベースとした定番料理をアレンジする「守破離コース」と季節の不調をテーマにした「薬膳コース」の2種類から選べる。その他、不定期でレストランもオープンしている。

    東京都世田谷区瀬田2-16-5
    TEL : 090-9967-4811
    料理教室、レストランの開催情報は下記WEBサイトの日程表よりご確認ください。

    公式サイト:https://www.mirein.club/

    MIREIN(ミレイン)

文:竹ノ上ひとみ 写真:関めぐみ 薬膳監修:田野岡亮太(再春館製薬所)

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ミレイさん

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みれい
料亭での修業、料理教室の講師を経て、1997年に東京都世田谷区に料理教室「MIREIN」をオープン。料理家。国際中医薬膳師。