毎月、生理の頃になるとお腹が痛くなったりイライラしたり......
そんな症状に悩まされている人も多いのではないでしょうか。
生理痛の重さや症状は、人それぞれです。普段と変わりなく過ごせる人もいれば、つらい生理痛で日常生活に深刻な支障をきたす人もいます。
たしかに、それらは個人の体質によるものですが、実は、どうやっても変えられないというわけではありません。自分に合った生活や食事を知ることで、つらい生理痛を和らげられる可能性があります。
生理痛の原因は、大きく分けて、体内の血が「不足している」か「滞っている」かのどちらかです。
これらの根本的な問題への対処を意識してみましょう。食べ物や飲み物の力を借りて生理痛を和らげる方法について、漢方の考え方を取り入れながら解説します。
生理痛のタイプ診断
生理痛は、原因や症状によって5つのタイプに分類できます。
生理痛に悩んでいる人は、まずは自分がどのタイプに当てはまるのか診断してみましょう。チェックの数が多いタイプを確認してください。
■血の不足
①腎気虚損(じんききょそん)タイプ
- 顔色が暗い
- 舌の色、苔が薄い
- めまい、耳鳴り、腰・ひざのだるさがある
②気血虚弱(きけつきょじゃく)タイプ
- 眠りが浅く、よく夢を見る
- 顔色が青白い
- 舌が薄く、赤い。苔は薄い
- だるさ、めまい、動悸がよくある
■血の滞り
③気滞瘀血(きたいおけつ)タイプ
- 月経前、あるいは月経中に、お腹が張る痛みが出る
- 手でおさえると痛みが増す
- 息苦しさや抑うつ感、イライラがある
- よく眠れない
④寒凝瘀血(かんこおけつ)タイプ
- 月経前、月経中にへその下に冷痛感がある
- 手でおさえると痛みが増す
- 温めると痛みがやわらぐ
- 経血量が少ない
- 経血の色が紫色で、血のかたまりが混じる
- 手足が冷たいが、温めれば寒さが軽減する
- 顔色が白い
- 舌の色が紫がかっている
⑤湿熱蘊血(しつねつうんけつ)タイプ
- 月経前、月経中にへその下に灼けるような痛みがある
- 経血量が多く、月経の期間が長い
- 経血の色が、紫がかっていて、血のかたまりが混じる
- おりものが多く、黄色くていやな臭いを感じる
- 尿の色が赤みを帯びた黄色
- 舌の色が赤く、苔が黄色がかってべったりしている
<タイプ別>生理痛に効く食べ物・おすすめレシピ
同じ生理痛でも、5つのタイプは原因や症状が違います。そのためそれぞれ効く食べ物も違うのです。
タイプ別の生理痛に効果的な食べ物と、おすすめレシピをご紹介します。
①血の不足/腎気虚損(じんききょそん)タイプ
生まれつきの場合もありますが、出産を何回も経験していたり、性交の数が多すぎたりする場合や、過去に大病にかかったことが原因になって、「腎」※にある精気(腎気)が不足してしまっている状態(腎気虚)になっています。この腎気虚のために血がつくられにくくなり、結果的に血も不足してしまい子宮への栄養も滞ってしまっているのです。
「腎」の機能を回復させる食材を食事にとり入れ、血を補って身体に行きわたらせるように心がけましょう。
※「腎(じん)」は、成長・生殖をつかさどり、漢方では重要な働きをもつ「五臓」という考え方の1つの臓のことを指します。
■効く食べ物
- イカ 血液を補強し、身体をうるおします
- エビ 「腎」を丈夫にします
■おすすめレシピ
サトイモとイカの煮物(93kcal / 1人分)
材料(2人分)
- サトイモ
- 150g
- イカ(胴と足)
- 70g
- 割り下
- 100ml
- (つくりやすい分量)
- しょうゆ 150ml
砂糖 75g
酒 75ml
水 250ml
上記を混ぜて火にかける
作り方
- 皮をむいたサトイモを大きさをそろえて切り、塩少々(分量外)でもんで水で洗います。
- イカの胴を1~1.5cm幅の輪切りにします。足は3等分にします。
- 鍋に割り下と水400ml(分量外)を入れます。煮立ったら、イカを加えてさらに煮ます。
- ひと煮立ちしたら、煮汁からイカを取り出します。代わりにサトイモを入れ、やわらかくなるまで煮ます。
- イカを鍋に戻して、ひと煮立ちさせて完成です。
「肝」※を補うサトイモも加えることで、機能回復を早める作用が期待できます。
※漢方では「五臓」という考えがあり、「肝(かん)」「心(しん)」「脾(ひ)」「肺(はい)」「腎(じん)」の5つを指します。西洋医学でいう肝臓・心臓などの臓器とは異なり、例えば「肝」は自律神経を調節したり、血を貯蔵したりする役割があると考えられています。
②血の不足/気血虚弱(きけつきょじゃく)タイプ
大病などで「気」「血(けつ)」が慢性的に消耗していたり、「脾」や胃などの消化器官が弱っていて栄養がとれず、「気」「血」がうまくつくれないときに生じます。だるさやめまいに悩まされたり、眠りが浅い人も多いです。腎気虚損タイプと同様、月経後に極度に血が不足すると、痛みが生じやすくなります。身体を温め、「気」や「血」のめぐりをよくする食べ物をとりましょう。
※漢方では人間の身体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」によって成り立っていると考えます。「気」とは人間の身体を動かす根源エネルギー。西洋医学に置き換えると血液や水分、臓器を動かす役割を持ち、自律神経や内分泌系の働きに関わっています。「血」は体内にある赤い液体を指し、全身に酸素や栄養を運び、ホルモンバランスの調整をしてくれます。「水」は体内にある透明な液体、つまり鼻水や尿、リンパ液などの身体のあらゆる水分を指し、免疫力に大きな関わりがあります。
■効く食べ物
- タマネギ 「気」をめぐらせ、身体を温めます
- クリ 血行をよくし、うっ血や出血を止めます
■おすすめレシピ
オニオンスープ(50kcal / 1人分)
材料(2人分)
- タマネギ
- 大1/4個
- 鶏ガラスープ
- 350ml
- A
- 薄口しょうゆ 小さじ1
酒 小さじ1/2
塩・コショウ 各少々 - クルトン
- 適量
- サラダ油
- 小さじ1
作り方
- タマネギを縦に薄切りします。
- 鍋に油をひいて、タマネギがあめ色になるまで炒めます。
- 鶏ガラスープを加え、ひと煮立ちさせたらアクをとります。
- Aを加えて味を調えます。
- 器によそったら、最後にクルトンを浮かべます。
栄養価の高い鶏ガラスープを使用して、「気」や「血」のめぐりをよくしましょう。
③血の滞り/気滞瘀血(きたいおけつ)タイプ型
憂鬱感や情緒不安定が原因で気が乱れ、その影響で血が滞っているかもしれません。月経前や月経中に「気」「血」をコントロールする衝脈(しょうみゃく)や月経、妊娠に関わる任脈(にんみゃく)に「気」「血」が多く流れてしまい、そのぶん子宮へ流れる「気」「血」が少なくなることで血が滞りやすくなります。その結果、瘀血(おけつ)になり、腹痛が引き起こされます。
胃腸などを温め、「気」「血」のめぐりをよくする食材をとり入れて、血流をさらさらにしていきましょう。
■効く食べ物
- ニラ 胃腸などを温め、「気」のめぐりを改善します
- ホウレンソウ 「血」のめぐりをよくします
■おすすめレシピ
レバニラ炒め(104kcal / 1人分)
材料(2人分)
- 豚レバー
- 80g
- ニラ
- 40g
- から揚げのたれ
- おろしタマネギ 小さじ1
おろしショウガ 少々
薄口しょうゆ 小さじ1
を混ぜる - 焼き肉のたれ
- 大さじ1
- (つくりやすい分量)
- リンゴのすりおろし 1/2個
タマネギのすりおろし 1/2個
バナナをつぶしたもの 1/2本分
しょうゆ 150ml
酒 250ml
砂糖 100g
刺身しょうゆ 100ml
赤トウガラシ 適量
すり白ゴマ 適量 - かたくり粉
- 10g
- 揚げ油
- 適量
焼き肉のたれの作り方
- すべての材料をまぜて、中火で5分、とろみが出るまで加熱します。
レバニラ炒めの作り方
- 豚レバーを細長く、そぎ切りにしてから、しっかりと血抜きをします。水気をふき取り、から揚げのたれで下味をつけます。調理の前日にやりましょう。
- ニラを4cmの長さに切って、ボウルに入れます。
- 1にかたくり粉をまぶして、170度の揚げ油で揚げます。
- 2のボウルに3を入れます。焼き肉のたれを加えて混ぜ合わせ、味がまわるまで炒めます。
レバーも加えて、衰えがちな肝機能も助けましょう。
④血の滞り/寒凝瘀血(かんこおけつ)タイプ
寒さの影響や冷たい食べ物・飲み物のとりすぎで、「気」「血」が固まり、体内の一部に滞ってしまっているのが原因です。さらに、月経前や月経中に衝脈や任脈に「気」「血」が多く流れ、子宮へ流れる「気」「血」が少なくなることで血が滞りやすくなった結果、瘀血になり、腹痛になります。
お腹を中心に体全体を温める食材をとり入れていき、身体を冷えから守るのがよいでしょう。
■効く食べ物
- 黒砂糖 身体を温め、寒さによる痛みを止めます
- ネギ お腹を温めて冷えの腹痛を緩和します
■おすすめレシピ
きなこプリン(235kcal / 1人分)
材料(5個分)
- 粉ゼラチン
- 5g
- 卵黄
- 2個分
- 牛乳
- 250ml
- 生クリーム
- 150ml
- A
- きなこ 40g
砂糖 20g - 黒砂糖
- 100g
作り方
- 粉ゼラチンを大さじ3の水(分量外)に振り入れて、しめらせます。Aは合わせます。
- 卵黄をといて、牛乳、生クリームを加えてまぜます。こしながら鍋に入れて弱火にかけて混ぜ、80度になったら火を止めます。その後、1を加えて、よくまぜてゼラチンを溶かします。
- Aを加えて手早く混ぜて、ボウルにこしながら入れます。
- ボウルの底を氷水にひたし、とろみがつくまでゴムベラでまぜて冷やします。素早く容器に注いで、冷蔵庫で冷やして固めます。
- 黒砂糖と水50ml(分量外)を鍋に入れて弱火にかけ、アクをとりながら少し煮詰めて、火を止めます。冷やすと黒みつができあがります。
- 4の上に黒みつをかけます。
浄血作用のある大豆で、血流をさらさらにしましょう。
⑤血の滞り/湿熱蘊血(しつねつうんけつ)タイプ
原因はふだんからの飲みすぎや食べすぎです。過度の飲食をすると、身体の中に不要な湿と熱がたまってしまいます。その影響で、「気」や「血」のめぐりが悪くなって、体内で滞ってしまっているのです。へその下の小腹部に痛みを生じる人もいます。ほかにも、月経前や月経中に衝脈や任脈に「気」「血」が多く流れることで、子宮へ流れる「気」「血」が少なくなることで血が滞りやすくなり、さらに瘀血になり、腹痛が起こることがあります。
血行をよくし、血液中にこもった熱をおさめ、出血をとりのぞいていくことで、「気」「血」をめぐらしていきましょう。
■効く食べ物
- 黒キクラゲ 血行をよくし、血液中にこもった熱をおさめて出血をのぞきます
- エンドウマメ 「気」「血」をめぐらせます
■おすすめレシピ
中華酢のもの(77kcal / 1人分)
材料(2人分)
- 緑豆はるさめ
- 15g
- キュウリ
- 10g
- ニンジン
- 10g
- ハム
- 1枚
- 黒キクラゲ
- 5g
- A
- 卵 1個
砂糖、塩 各少々 - B
- 酢 大さじ1
砂糖、薄口しょうゆ 各大さじ1/2 - 塩
- 少々
- ゴマ油
- 小さじ1
- 薄口しょうゆ
- 大さじ1/2
- サラダ油
- 少々
作り方
- はるさめを3分ゆでて水洗いし、8cmくらいの長さに切ります。
- キュウリを千切りにして塩をふります。ニンジンを千切りにして固めにゆでます。ハムも千切りにします。
- 黒キクラゲは水で戻し、しょうゆとゴマ油を少々加え(分量外)、軽く炒めたあと冷まします。
- Aをまぜて薄焼き卵を焼き、錦糸卵をつくります。
- Bをあわせ、すべての具を混ぜます。最後に、ゴマ油、薄口しょうゆを加えて混ぜます。
はるさめの原料の緑豆には、熱をおさめ、毒素を消す作用があります。
生理痛に効く食べ物・飲み物~コンビニでも買えるおすすめ食材とドリンク~
生理痛の症状を和らげるには、体を温めるものや、血行を促すものが効果的です。
日頃からの体質改善のためにも、今まさにつらい生理中にも、コンビニで気軽に買えて、普段の食生活にプラスしやすい食べ物・飲み物をご紹介するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
豆乳
大豆製品は生理痛に効く代表的な食材です。
大豆は、子宮の収縮を抑えるマグネシウムを多く含んでいます。そして、大豆イソフラボンは女性ホルモンであるエストロゲンとよく似た化学構造をしているので、同様の働きが期待できるのです。
ホット豆乳にして飲むと、身体を温められるのでより効果が高まります。
ココア
ココアに含まれるポリフェノールには、血管を拡張させて冷えをとる効果があります。鉄分がとれるので貧血にも効果的で、生理痛に効くおすすめの飲み物です。
ただし、砂糖のとりすぎになりやすいので、飲む量には注意しましょう。
ヨーグルト
発酵食品に含まれる善玉菌は、腸内環境を整えてくれます。特に生理前は、腸の動きが弱くなり便秘になりやすいので、意識的にとるとよいでしょう。
はちみつ
はちみつには殺菌作用や抗炎症作用があり、生理痛に効く鎮痛効果も期待できます。
生理中は甘いものが欲しくなることが多いですが、砂糖のとりすぎは生理痛を悪化させる場合があるため注意が必要です。はちみつなら自然な甘味が感じられるのでおすすめです。
生理痛を悪化させる可能性がある食べ物・飲み物
食べ物や飲み物の中には、生理痛の症状を悪化させてしまうものもあります。
生理中はもちろん、日頃からそういった食べ物・飲み物を控えることで、体質の改善と生理痛の緩和が期待できるでしょう。
身体を冷やす食材
身体の冷えは、生理痛の大敵です。
冷えは血管を収縮させるため血行が悪くなり、血を滞らせてしまいます。アイスやジュースのとりすぎはよくありません。また、食材にはそれぞれ、身体を温める性質のものと、冷やす性質のものがあります。生理痛がひどい人は、身体を冷やす食材を控えた方がよいでしょう。
身体を温める食材・冷やす食材については、こちらの記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
冷え性改善|身体を温める食べ物・飲み物を漢方の視点から解説
不調を感じる“今”の体が求める、疲労回復に効果的な食べ物|自己回復力を高めて元気に過ごそう【国際薬膳調理師監修】
添加物の多い食べ物
化学調味料や食品添加物は、栄養の吸収を阻害するものです。血をドロドロにして血行を悪化させてしまうので、生理痛を悪化させる可能性もあります。
インスタントフード・ジャンクフード・スナック類には添加物がたくさん含まれているので、日常的に食べすぎている人は量や頻度を控えるようにしましょう。
糖分の多い食べ物
糖分をとりすぎると、血糖値を下げようとする働きとともに体温も下がってしまいます。特に白砂糖は身体を冷やす食材なので、とりすぎないように気をつけましょう。生理中は甘いものが欲しくなる人が多いと思いますが、ヨーグルトに果物やはちみつを加えて食べるなど、食べるものを選ぶと生理痛の緩和に効果的です。
カフェインを多く含む飲み物
カフェインには、血管を収縮させる作用があります。
コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどの飲みすぎには気をつけましょう。
アルコール
適量であれば、生理中にお酒を飲むこと自体に大きな問題はありません。とはいえ、生理中は具合が悪くなりやすいので、飲みすぎにはいつも以上に気をつけましょう。
また、生理痛がひどくて鎮痛剤を服用している場合は、アルコールは控えた方がよいでしょう。
改善されない場合は医師に相談を
生理痛は、生活習慣や食事の改善で症状を和らげることができます。
ただし、激しい痛みをともなう月経困難症は、子宮内膜症、子宮筋腫などが原因で起こることもあるので、 婦人科の受診を検討した方がよいかもしれません。
生理痛があることを「当たり前」「仕方がない」と諦めず、適切に対処することが大切です。
まとめ
多くの女性が、毎月生理によって引き起こされるさまざまな不調に悩まされています。
長く付き合っていく自分自身の身体ですから、今どのような状態なのか、何を必要としているのか、身体の発するメッセージに少し耳を傾けてみましょう。食べ物や飲み物の力で生理痛の症状が和らげば、憂鬱な生理中も軽やかに過ごすことができます。
(参考文献)
「再春館製薬所が教えるおうち漢方」新星出版社,2014年3月
あわせて読みたい記事
【関連】溝口実穂さん|自分を愛することを、後回しにしてはいけない
【関連】福岡伸一さん|人間を生き物としてとらえれば、もっと楽な生き方が見える
【関連】村田美沙さん|「なんとかなる、大丈夫」心まで変えてくれたハーブ