私らしく。 by 再春館製薬所

高良健吾さん
いまを生きることに集中したい

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ストーリー

せわしなく過ぎていく時の中で、自ら立ち止まる。高良健吾さんは、そんな勇気を大切にしたいと言います。カメラの前で過ごした20年。迷い、戸惑う時も自分が自分に還る場所は、常に、その心の中に。

現在の自分をつくった
故郷・熊本のすべて

離れても、心と体の深いところでつながっている──それが、生まれた土地との絆。高良健吾さんにとって熊本が忘れえぬ町になったのは、幼少時に一度離れ、10代で戻ってからのことでした。

「転勤族の家庭に育ったので、それまで住んだどの町にもさほど思い入れはなかったんです。でも中学2年で熊本に帰って、出会った人たちを好きになって、ようやく地元愛に目覚めた......というか。〝マチ(市中心部)〟での思い出、祖父母の住んでいた阿蘇の自然、それらすべてがいまの自分をつくってくれたと思う。

やっぱり、人がいいんですよね。男性は、いい意味で〝かっこつけ〟の人が多く、それは『男ならこうでしょ!』と接する元気な女性たちが育ててきたもの。だから自分の中にも、いまでも『男なら頑張らないと』という思いがあります。少し古風かもしれないけれど、誰もが地元に誇りを持っていて、それを感じられるのが、本当に気持ちよくて」

2016年の熊本地震の際は、東京にいた故郷の仲間たちとともにボランティア活動に従事。故郷の人々のたくましさを、そこでも実感したと言います。

「もっとも行動力があったのは地元の方たち。『熊本城がライトアップされて、その熊本城を見ることで上を向くことができた』って。郷土愛の強い土地なんだと、あらためて実感しました」

繊細さと狂気が表裏一体となった危うい人物から、温厚で誠実そのものの青年まで、映画やテレビドラマで数多くのキャラクターに扮(ふん)してきた高良さん。振り幅の大きな人物造形の秘訣(ひけつ)を尋ねると、「共感よりも理解することを大事にする」という言葉が返ってきました。

「生意気ですが、10代の頃からずっと役を選ばせてもらってきました。最初は、自分が共感できる役を。でもいまはどんな人物でも、共感はできなくても理解することはできるんじゃないかと思っています」

緊張感や不安も味方に
慣れないって、すごいこと

映画やドラマに興味を持ったのも、熊本時代。テレビドラマ『私立探偵 濱(はま)マイク』(2002年放送)の作風に魅了されたのがきっかけでした。

「一話一話、個性の強い映画監督が撮っていて、よくわからないけど、とにかく格好いいなと。彼らのつくる世界を理解したくて、レンタルビデオで片っ端から作品を観ました。それまで自分が触れていた作品とはまったく違うし、誰とも共有できなかった。でも、確かに惹(ひ)かれる自分がいたんです」

高校生になって、スカウトされてタウン誌のスタッフとして活動していた時、芸能界への誘いを受けた高良さん。上京しテレビドラマのオーディションを受けたのが、俳優への第一歩でした。

「行く前は何の不安もありませんでしたが、いざカメラの前に立つと、何をしていいのかわからず、何も言えず......。ありがたいことにお仕事をいただけたんですが、それからはどの現場でも叱られてばっかりで、『しくった(九州の言葉で「失敗した」)』『俺、向いてないな』と。毎作品、喜びよりもプレッシャーのほうが大きかったです」

それは基本的にはいまも続いている、と高良さん。しかし、プレッシャーや恥ずかしさ、緊張感が、やがて自分の味方になっていったと言います。

「逆に、いつまでも慣れない自分ってすごいな、と。不安を乗り越えるためには、とにかく準備をするしかないんですよね。台本に書かれていない部分をどれだけ想像し、役の人物を理解するか。でも、ガッチリ準備していっても、現場に入って最初のせりふを発した瞬間に見つかることがあったりする。そして、今回がよくても次の現場で同じ方法がうまくいくかどうかはわからないから、ある意味、開き直りが必要な仕事でもあります。だから、この不安は仕方がない、常にセットなんだと思って受け入れるんだと......。

20代はインディーズの尖った作品が多く、そのうち朝ドラや大河ドラマ、大作の映画にも出るようになりましたが、最初は性格的に苦手だと感じていた現場にも、そこならではの面白さがあることがわかってきた。自分なりにやり方を掴(つか)めたと思えたのは、30歳を過ぎてからかもしれません」

もっともっと
人の気持ちをわかりたくて

気がつけば、デビューから今年で20年。続けてこられたのは「単に、やめられなかったから」と笑いますが、出演作には、熊本時代に憧れた監督たちの作品がいくつも並んでいます。

「ありがたくも仕事をずっといただけたこと、そして、できなくて悔しい経験をしたことが、実は一番大きかったのかな。次はできるかもしれないという思いが後押ししてくれたようにも思います」

最新出演映画『罪と悪』(2024年2月2日公開)で演じたのは、少年時代に犯した罪を心に負いつつ、刹那的に生きる青年の役でした。世間に背を向ける彼の痛みや孤独は「昔の自分なら絶対に理解できなかった」と、高良さん。

「熊本にいた頃の僕はいわゆる〝リア充〟で、自分の中に翳(かげ)りや切なさといった感情が、一切なかった。調子に乗っていて、人の気持ちがわからないヤツだったと思います。でも、『どうしてこんなことをするんだろう?』と感じるような人物を演じることで、自分はもっと人のことを理解しなくちゃいけないな、と。だから、必死にやりました。普段は楽しいことが好きだから、キツいと感じることもありますが、そのくらいやらないと、僕はできないから」

男なら──そんな時胸に蘇(よみがえ)るのは、少年時代、故郷で聞いたあの言葉なのかもしれません。あっという間に過ぎたという歳月を振り返り、節目の今年は「ひと区切りをつける年にしたい」と言います。

生きている限り自分は自分
そんなに急がなくてもいい

「これからのために、準備する年にしたいんです。何というか、もう少し自分に集中したくて。役はやっぱり他人で、一所懸命に他人をやっていると、自分がいま、この瞬間を生きていることを忘れてしまいそうになるから。スポーツ選手のように身体能力のピークがある仕事だと立ち止まることは難しいですが、俳優は生きている限りやっていける。だったら、あんまり急がなくてもいいんじゃないかと」

これから長く、豊かに日々を積み重ねていくために、必要なことを選び取ろうとしている高良さん。日々の生活では、心と体の健康に関心を寄せ、実は20代の前半から漢方を実践してきた一人です。

「できれば対症療法ではなく、自然に自分の体を保ちたいと思って、体質に合う漢方薬を調合してもらったり、お灸(きゅう)をしたり......。いまは、朝起きたら白湯(さゆ)を飲み、呼吸法を意識するくらい。あとはやっぱり、いまに集中する時間を持つことですね」

旅に出て自然に触れ、人の目を意識せず、何もしない時間をつくるのも、大切にしていること。

「熊本から通いたいと思ったこともありますが、そうすると出たくなくなりそうだから......。温泉にでも浸(つ)かって、なるべくゆっくりと時間を過ごしたいと思っています」

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高良健吾さん

こうら・けんご 1987年生まれ。2005年、テレビドラマ『ごくせん 第2シリーズ』でデビュー。映画の代表作に『軽蔑』『横道世之介』『千年の愉楽』『きみはいい子』など。最近作に映画『罪と悪』、Netflix『忍びの家 House of Ninjas』がある。今春より「ドモホルンリンクル」初のブランドアンバサダーに就任。