漢方では人の体は「気・血・水」によって成り立っていると考えます。
「気」とは人間の体を動かす根源となるエネルギーで、血液や水、臓器を動かし、自立神経系や内分泌系をつかさどる働きをもちます。
「血」は体内にある赤い液体を指し、全身に酸素や栄養を運んだり、ホルモンバランスの調整もしてくれます。
「水」は体内にある透明な液体、つまり鼻水や尿、リンパ液などの体のあらゆる水分を指し、免疫力に大きな関わりがあります。
漢方では、これら「気・血・水」の3つが、体内をバランスよく循環している状態が、健康な状態だと考えます。
「自動車」を例に解説すると、「気」は運転手、「血」はガソリン、「水」は機械の熱を冷ますラジエーターの水だと想像してください。ガソリンが無ければ自動車は動かず、水がなければ熱を持って故障してしまいます。また、運転手が暴走をすれば事故に合ってしまう。つまり、「気・血・水」のうち、どれか一つでも不足したり、滞ったりすると、不調や病気の原因となってしまうのです。
「気・血・水」が乱れる要因は、四季の移り変わり、環境の変化、生活習慣・食習慣の乱れ、ストレスなど様々あります。100年前と比べ私たちをとりまく環境は大きく変化しました。経済の発展、医学の進歩に伴い、平均寿命が長くなるとともに、新たな病気も増えてきました。例えば、原因のわからない不調、いわゆる不定愁訴は、なかなか完治が難しいと言われています。だからこそ、増加する病気や不調に対して、「病気の症状があらわれてから治療を始める」のではなく、「自己回復力を高めて、病気の症状が出てこない体をつくる」漢方の考えが注目されます。
漢方は人類の長い歴史の中で、実際に人々がとりいれることによって発展してきました。いわば膨大な規模の臨床試験を経て発展してきた医学であり、その時代を生きる人間の、心と体を正常に戻す知恵と工夫が集積されているのです。