何日も便が出なくてつらい
ずっとお腹が張っている感じがする......
そんな悩みを抱えている人が、特に女性には多いかもしれません。
実は、便秘には様々な原因と症状があります。便秘のタイプに合わせた食事をすれば、便秘を解消できるかもしれません。即効性を求めるならば便秘薬を服用するという方法もありますが、慢性的な便秘に悩まされている場合や、なるべく薬を飲みたくない場合には、まずは食べ物や飲み物を変えてみましょう。
便秘になる原因
腸は、生活習慣の影響をとても受けやすい器官です。
次のような生活習慣の乱れは、すべて便秘の原因になってしまいます。
- 身体の冷え
- 偏食
- 水分不足
- 運動不足
- ストレス など
慢性的な便秘は肌荒れ、肩こり、頭痛などを引き起こし、肥満や冷え性、動脈硬化の原因になることもあります。
便秘のタイプ診断
漢方の考えでは、便秘は原因や症状によって6つのタイプに分類できます。 便秘に悩んでいる人は、自分がどのタイプに当てはまるのか診断してみましょう。チェックの数が多いタイプを確認してください。
■お腹が痛む
① 腸胃積熱(ちょういせきねつ)タイプ
- 便秘が数日間続く
- 便が固い
- おならが多い
- 冷たいものが欲しくなることが多い
- 暑がり
- 尿の色が濃い
② 湿熱困脾(しつねつこんひ)タイプ
- 排便したいが、なかなか出ない
- 便が少量
- 粘り気のある、または泥状の便が出る
- むくみやすい
③ 肝鬱気滞(かんうつきたい)タイプ
- 便が細い
- 便が切れ切れですっきり出ない
- 膨満感を感じたり、腹痛になったりする
- おならやゲップが多い
- イライラしたり、憂鬱になったり、怒ったりと、感情の起伏が激しい
■お腹が痛まない
④ 気虚不運(ききょふうん)タイプ
- 便がなかなか出ない
- 便の出はじめは固く、あとは軟らかい
- 疲労感や倦怠感がある
- 立ちくらみがある
⑤ 陽虚寒凝(ようきょかんこ)タイプ
- 冷え性で寒がり
- 元気がないことが多い
- 顔が青白いことが多い
- 尿の色が薄くて量が多い
- 夜間にトイレに行くことが多い
⑥ 陰血気陰不足(いんけつきいんふそく)タイプ
- 便が固く、コロコロしている
- 極端にやせている
- くちびるや肌が乾燥しやすい
- 顔色が悪く、くすんでいる
- 排便がしにくい
<タイプ別>便秘に効く食べ物・おすすめレシピ
同じ便秘でも、6つのタイプは原因や症状が違います。そのためそれぞれとり入れたい食べ物も違うのです。
タイプ別の便秘に効果的な食べ物と、簡単なおすすめレシピをご紹介します。
①腸胃積熱(ちょういせきねつ)タイプ
体内に熱がこもっているせいで、大腸の水分が不足して便秘になっているタイプです。余分な熱を取り除き、身体を冷やしてくれる食べ物が効果的です。ただし、冷やすといっても、急激に身体を冷やしすぎるアイスクリームや冷たい飲み物は逆効果なので注意しましょう。
■効く食べ物
- バナナ
- リンゴ
- 柿
- ビワ
- キュウリ
- レタス
- ハクサイ
- ホウレンソウ
- セロリ
- チンゲンサイ など
■おすすめレシピ
フルーツヨーグルト(145kcal / 1人分)
材料(2人分)
- ヨーグルト
- 200g
- バナナ
- 1/2本
- リンゴ
- 1/8個
- キウイ
- 1個
- オレンジ
- 1個
作り方
- バナナを小口切りにします。レモン汁(分量外)をかけると、変色を防げます。
- リンゴは皮つきのまま、いちょう切りにします。塩水(分量外)につけてから水気を切っておきます。
- キウイはいちょう切り、オレンジは果肉だけにします。
- ボウルにヨーグルトを入れ、1~3を入れてよく混ぜます。
長寿食として愛用されるヨーグルトは、腸内環境を整え、便通をよくしてくれます。
②湿熱困脾(しつねつこんひ)タイプ
食べすぎや飲みすぎが原因で、体内の水と熱が両方とも過剰になっているタイプです。大腸の機能が低下しているので、腸をうるおして便通を促す食べ物を積極的にとりましょう。身体の熱を下げる食べ物も効果的です。
■効く食べ物
- 黒ゴマ
- ゴマ油
- ピーマン
- チンゲンサイ
- リンゴ など
■おすすめレシピ
砂肝とピーマンの炒め(73kcal / 1人分)
材料(2人分)
- 砂肝
- 50g
- ピーマン
- 1個
- ニンジン
- 20g
- ニンニクのみじん切り
- 少々
- 塩、あらびき黒コショウ
- 各少々
- サラダ油
- 大さじ2
作り方
- 砂肝の白い筋をそぎとって、片側3枚を目安に薄くスライスします。
- ピーマンを3cm角に、ニンジンを千切りにします。
- フライパンに油をひいてニンニクを入れます。香りが出てきたら、砂肝を入れて炒めます。
- 砂肝の色が変わってきたら、黒コショウと塩をふり、味を調えます。
- ニンジンを加えて炒めたあと、ピーマンを入れてさっと火を通します。
砂肝は鶏内金(けいないきん)と呼ばれる漢方薬。消化改善作用があるので、便通をよくする助けになります。
③肝鬱気滞(かんうつきたい)タイプ
「気血」※のめぐりや自律神経を安定させる「肝」が不調をきたしているタイプです。漢方では肝の働きが乱れると「気」が停滞して胃腸の働きが乱れると考えます。そのため、肝の機能を高める酸味のある食べ物や、気のめぐりをよくする香りのある食べ物、弱った胃腸の働きを助けてくれる食べ物を積極的にとりましょう。
※漢方では人間の身体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」によって成り立っていると考えます。「気」とは人間の身体を動かす根源エネルギー。西洋医学に置き換えると血液や水分、臓器を動かす役割を持ち、自律神経や内分泌系の働きに関わっています。「血」は体内にある赤い液体を指し、全身に酸素や栄養を運び、ホルモンバランスの調整をしてくれます。「水」は体内にある透明な液体、つまり鼻水や尿、リンパ液などの身体のあらゆる水分を指し、免疫力に大きな関わりがあります。
■効く食べ物
- ミカン
- レモン
- キウイ
- ニラ
- シソ
- ブロッコリー
- カブ
- ヒラタケ など
■おすすめレシピ
ブロッコリーの揚げびたし(45kcal / 1人分)
材料(2人分)
- ブロッコリー
- 1/2個
- ショウガ
- 少々
- 薄口しょうゆ
- 小さじ1
- 揚げ油
- 適量
作り方
- ブロッコリーを小さく分けます。ショウガは細い千切りにします。
- 160度の揚げ油で、ブロッコリーを揚げます。
- 油をしっかり切って、薄口しょうゆ、ショウガをあえて、味を調えます。
ブロッコリーは「気」のめぐりをよくして、停滞を改善させる作用も期待できます。
④気虚不運(ききょふうん)タイプ
虚弱体質・慢性疾患・老化などが原因で便秘になりやすいタイプです。内臓全体の機能が低下して、腸の動きが悪くなっているかもしれません。ゆっくり静養することと、胃腸の働きを助けて吸収力を高める食材をとることが便秘の改善に繋がります。
■効く食べ物
- サトイモ
- ジャガイモ
- サツマイモ
- ヤマイモ など
■おすすめレシピ
サトイモの甘みそがらめ(46kcal / 1人分)
材料(2人分)
- サトイモ
- 小6個
- 薄口しょうゆ
- 大さじ1
- A
- 合わせみそ 大さじ1
砂糖 大さじ1
酒 小さじ1 - 塩
- 少々
作り方
- 皮をむいたサトイモを大きさをそろえて切り、塩でもんで水洗いします。
- 薄口しょうゆと水1カップ(分量外)を鍋に入れて、サトイモを加えて煮くずれしないように煮ます。
- Aを合わせて甘みそをつくります。
- 2と3を盛りつける直前に和えます。
胃の機能を高めるみそを使って、体内の「気」をつくりやすくしましょう。
⑤陽虚寒凝(ようきょかんこ)タイプ
原因が身体の冷えにあるタイプです。身体が冷えているせいで、血のめぐりが悪くなり、内臓の働きがにぶくなっています。身体を温めてくれる食べ物や、胃腸を丈夫にしてくれる根菜類などをとって冷えをやわらげましょう。
■効く食べ物
- ショウガ
- ニンニク
- ネギ
- サバ
- エビ
- コショウ
- トウガラシ
- サンショウ
- ニンジン
- サツマイモ
- サトイモ など
■おすすめレシピ
サツマイモの天ぷら(120kcal / 1人分)
材料(2人分)
- サツマイモ(厚さ1cm)
- 4切れ
- A
- 天ぷら粉、小麦粉 各10g
氷水 大さじ2
塩 少々 - 揚げ油
- 適量
作り方
- 皮つきのサツマイモを水にさらして水気をとります。
- Aを合わせてざっくりとまぜて、天ぷらの衣をつくります。
- 1を2にくぐらせて、160度に熱した油で3分ほど揚げます。
- 塩とサンショウ(分量外)をまぜて、つけて食べると身体がより温まります。
天ぷらの衣の小麦粉は「温性」。油で揚げることでより身体を温める効果を高めて、冷えを改善します。
⑥陰血気陰不足(いんけつきいんふそく)タイプ
極端にやせていて便秘の症状がある人は、このタイプに当てはまることが多いです。「血」や「気」が不足しているために五臓(ごぞう)※の機能が低下して、胃腸に不調が生じています。五臓(特に「脾(ひ)」と「腎(じん)」の働きを高める効果のある食べ物をとりましょう。
※漢方では「五臓」という考えがあり、「肝(かん)」「心(しん)」「脾(ひ)」「肺(はい)」「腎(じん)」の5つを指します。西洋医学でいう肝臓・心臓などの臓器とは異なり、例えば「肝」は自律神経を調節したり、血を貯蔵したりする役割があると考えられています。
■効く食べ物
- イチジク
- レンコン
- シイタケ
- ソラマメ
- ブロッコリー
- マグロ
- タコ
- 卵
- ハチミツ
- アサリ
- ワカメ
- イカ
- カニ
- カキ など
■おすすめレシピ
からしレンコン揚げ(113kcal / 1人分)
材料(2人分)
- レンコン
- 100g
- A
- 合わせみそ 10g
ねりがらし 10g
砂糖 大さじ2 - B
- 天ぷら粉 20g
小麦粉 20g
氷水 30ml - 揚げ油
- 適量
作り方
- レンコンの皮をむき、水にさらしてアク抜きし、1cmの厚さに切ります。
- Aを混ぜ合わせ、辛さを調整します。
- レンコンの水気を切ります。ナイフなどを使って、2をレンコンの穴に塗りこみます。4.Bをまぜて、衣をつくります。
- Bをまぜて、衣をつくります。
- 揚げ油を180度に熱します。レンコンを衣にくぐらせます。
- 約3分揚げて、レンコンに火を通します。
熊本の郷土料理であるからしレンコンを食べやすくアレンジしました。便秘の解消にも効果抜群です
便秘に効く飲み物~コンビニでも買えるおすすめドリンク~
便秘を解消するためには、やはり、しっかり水分をとることも大切です。便秘の解消に特におすすめの飲み物を紹介します。特別なものではなく、コンビニでも買える飲み物ばかりなので、日常的に意識してとるようにしてみてくださいね。
水・白湯
水や白湯は一番のおすすめドリンクです。手軽でお金もかからないので、まずはここから始めてみましょう。ただし、キンキンに冷やした水は身体を冷やしすぎるため、「常温」を意識すること。水の飲み方にもコツがあるので、次の方法を参考にしてみてください。
■腸内環境を整える水の飲み方
まずは、起きたらコップ1杯程度の水を飲みます。
それ以降、17時頃までは、1~2時間ごとにマグカップ半分程度の白湯か常温水を飲みましょう。
17時以降、就寝までの時間帯は、食事と入浴時を除き基本的に水分を控えます。
お茶
お茶には、整腸作用のある食物繊維がたくさん含まれています。ただし、カフェインは水分の排出を促してしまうので、カフェインの少ない玄米茶などがよりおすすめです。ノンカフェインのハーブティーも効果があります。良質の睡眠をとりたい場合は、カフェインの入ったお茶は、就寝前に飲むのは避けたほうがよいでしょう。
乳酸菌入り飲料
乳酸菌は、腸内環境を整えてくれる善玉菌のひとつです。善玉菌が増えれば、便秘の解消が期待できます。乳酸菌は、ヨーグルトや納豆といった発酵食品に多く含まれていますが、腸内に長時間とどまることができません。こまめに摂取する必要があるので、飲料からとるのもよいでしょう。ただし、乳酸菌飲料には砂糖がたくさん含まれているものが多いので、飲む量には注意してください。
スムージー・青汁
便秘に効く食べ物を、スムージーにしてとるのもおすすめの方法です。調理して食事にするよりも、手軽だと感じる人も多いでしょう。コマツナ、モロヘイヤ、リンゴ、バナナなどはスムージーの定番食材です。便秘のタイプに合わせて、特に効果的な食べ物を選ぶとよいですね。大麦若葉やケール、アシタバなどを原料とする青汁は、整腸作用のある食物繊維が豊富に含まれており、飲むだけで便秘解消に繋げることができます。
ココア
ココアにはカカオリグニンという不溶性食物繊維が含まれていて、便のかさを増やして排便を促進する効果があります。ただし、市販のココアにも砂糖が追加されていることが多いので、飲む量には気をつけた方がよいでしょう。
便秘解消・予防のために、食生活以外で気をつけたいこと
便秘に効く食べ物や飲み物を詳しく解説してきましたが、便秘の解消・予防のためには、食生活以外にも気をつけたいことが色々あります。生活のすべてが、腸の健康状態に直結するといっても過言ではありません。
適度な運動
ずっと同じ姿勢だったり、座りっぱなしだったりすると、腸の動きが悪くなってしまいます。腸の活動をしっかり促すためには、適度な運動を心がけましょう。軽いウォーキングやストレッチなどがおすすめです。
身体を冷やさない
身体の冷えは万病のもとであり、便秘の大きな原因にもなります。身体を冷やさないことは、できるだけ常に意識しましょう。冷え性の改善については、こちらの記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
ストレスをためない
分かっていても難しいものですが、ストレスをためないこともやはり重要です。頑張りすぎない、我慢しすぎない、気分転換をする......など、心の健康をコントロールするよう意識してみましょう。気分転換の方法に関しては、こちらの記事も参考になると思います。
元気になる方法|落ち込んだ気分を前向きに切り替えるマインドセット
まとめ
腸は生活習慣の影響を受けやすい、とても繊細な器官です。体質に合った食べ物や飲み物の力を借りて、スッキリしたお腹を保ちましょう。健康な胃腸は、きっと心も身体も軽やかにしてくれるはずです。
(参考文献)
「再春館製薬所が教えるおうち漢方」新星出版社,2014年3月
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