私らしく。 by 再春館製薬所

高知県立牧野植物園
熱望した「朝ドラ」も実現。世代を超えた“想い”のリレー

story ストーリー| # # # #

ストーリー

23年春の連続テレビ小説『らんまん』のモデルになった、植物学者・牧野富太郎。自身を「草木の精」と呼び、94年の生涯にわたって研究をつづけた自然への情熱は、多くの人を惹きつけました。そんな博士の名前を冠した『高知県立牧野植物園』で、彼の足跡をたどりながら、博士の“想い”を今に受け継ぐ方々の活動をうかがいました。

日本人初の偉業をもたらした
全国規模の“草の根活動”とは

日本に自生する植物は、およそ7,000種類。牧野富太郎博士は国内外の1,500種類以上の植物に命名し、「日本の植物分類学の父」といわれています。

「高知の豊かな環境が、先生と植物を結びつけました」と話すのは、牧野植物園の職員、小松加枝さん。高知県で育った博士は、身近な植物を独学で学び、やがて上京。東大の研究室に出入りし、日本人で初めて国内の植物に新種として学名をつけました。

博士が学名をつけた植物には、ラベルに「Makino」の文字が。ていねいな解説も必見。
博士が学名をつけた植物には、ラベルに「Makino」の文字が。ていねいな解説も必見。

博士が植物の研究において大事にしていたのが、フィールドワークでした。

全国各地に植物同好会をつくり、その土地のメンバーとともに植物採集しながら、植物の素晴らしさや採集のノウハウを伝えていったといいます。

約10年の月日をかけて編集された『牧野日本植物図鑑』は、博士が78歳の時に刊行。刊行後も改訂のたびに最新の情報を加えていった。びっしり入った赤字から、博士の情熱がうかがえる。
約10年の月日をかけて編集された『牧野日本植物図鑑』は、博士が78歳の時に刊行。刊行後も改訂のたびに最新の情報を加えていった。びっしり入った赤字から、博士の情熱がうかがえる。
博士が残した植物図は約1,700枚。植物の特徴がわかるよう、断面や、さまざまな角度から描いた部分図を配置した手法は「牧野式植物図」と呼ばれた。(『高知県立牧野植物園』提供)
博士が残した植物図は約1,700枚。植物の特徴がわかるよう、断面や、さまざまな角度から描いた部分図を配置した手法は「牧野式植物図」と呼ばれた。(『高知県立牧野植物園』提供)

こういった活動を通じて、全国に仲間ができ、植物を愛でる輪が広がっていきました。博士は高齢になっても、ライフワークのように精力的にこの活動を続けていたそうです。

功績の裏にあった
計り知れない“内助の功”

一方で、博士は研究のために膨大な借金を抱え続けていました。妻の壽衛(すえ)さんは、研究のための資金を工面しながら博士を支え、家事と子育てに奮闘しました。

「壽衛さんは貧しさを悲観することはなく、植物分類学の向上のため、どうぞ研究に励んでくださいと、先生を支えていました」

献身的に支えてくれた妻への感謝の気持ちを込めて、新種のササに妻の名を冠した学名をつけた。(『高知県立牧野植物園』提供)
献身的に支えてくれた妻への感謝の気持ちを込めて、新種のササに妻の名を冠した学名をつけた。(『高知県立牧野植物園』提供)

博士が各地で採集した植物を自宅に送ると、家族総出で標本にしていたそう。やがてその研究が評価され、融資をしてくれる人物が現れます。

生涯研究を続けられたのも、博士の人柄と家族や支援者の存在あってのことでした。

「世界でここだけ」が物語る
博士と地元県民との関係性

現代でも植物由来の医薬品が存在しているように、私たちは、植物からたくさんの恩恵を受けています。

>園の役割は、「牧野博士の業績顕彰」「植物の保存」「研究」「教育普及」「憩いの場」の5つ。
園の役割は、「牧野博士の業績顕彰」「植物の保存」「研究」「教育普及」「憩いの場」の5つ。
本館の手すりに巻きついたシロバナクズは、数十年後には一周する予定。
記念館 本館の手すりに巻きついたシロバナクズは、数十年後には一周する予定。

牧野植物園は、その植物の大切さを伝え、保全していく「人と植物をつなぐ場所」であり続けることが、大切な使命のひとつ。

小松さんをはじめとする植物園の職員や植栽を管理するスタッフたちへ、想いは引き継がれています。

3,000種類の植物が植えられた園内で、園地管理のスタッフは最適な手入れをし、広報担当者は園の解説だけでなく博士の逸話も語る。一人ひとりが博士の情熱を引き継いでいきいきと働いている。
3,000種類の植物が植えられた園内で、園地管理のスタッフは最適な手入れをし、広報担当者は園の解説だけでなく博士の逸話も語る。一人ひとりが博士の情熱を引き継いでいきいきと働いている。
3,000種類の植物が植えられた園内で、園地管理のスタッフは最適な手入れをし、広報担当者は園の解説だけでなく博士の逸話も語る。一人ひとりが博士の情熱を引き継いでいきいきと働いている。

また、県立の施設である牧野植物園は、牧野博士の名を冠した植物園です。

「人名のついた植物園は、調べた範囲では世界でここだけです」と小松さん。博士が尊敬され、慕われていたことが感じられる逸話です。

「朝ドラ」実現へ一致団結
数年がかりのプロジェクト

園では、博士の功績や生き方を全国の人に知ってもらいたいとさまざまな活動をおこなっています。

その中で4年ほど前、博士の人物像と志に感銘を受けた地元の有志が集まり、NHKの連続テレビ小説への招致活動「朝ドラに牧野富太郎を」の会が立ち上がりました。

植物採集に出かける時はシャツに蝶ネクタイを着用するなど、身だしなみをきちんとしていた。博士にとって植物は恋人のよう。いつも正装だったのは、植物に対する愛と尊敬の気持ちの表れだったのかもしれない。(『高知県立牧野植物園』提供)
植物採集に出かける時はシャツに蝶ネクタイを着用するなど、身だしなみをきちんとしていた。博士にとって植物は恋人のよう。いつも正装だったのは、植物に対する愛と尊敬の気持ちの表れだったのかもしれない。(『高知県立牧野植物園』提供)

それは、植物園も参加し、高知県民まで巻き込むものに。
「朝ドラの会のメンバー一人ひとりが牧野博士の功績や生涯を伝えてくれ、署名を集めてくれたことが何よりもうれしかったです」

広い展示館内には、職員が思いを込めて肖像画を描いたスクリーンも。
広い展示館内には、職員が思いを込めて肖像画を描いたスクリーンも。
牧野文庫では博士の蔵書約4万5,000冊を所蔵。植物が出てくる書物を多岐にわたった分野で網羅しており、研究に役立てられている。
牧野文庫では博士の蔵書約4万5,000冊を所蔵。植物が出てくる書物を多岐にわたった分野で網羅しており、研究に役立てられている。

博士はまだ解明されていない植物の研究を続けたくて、長生きへの意気込みが強かったそう。94歳でその生涯を閉じるまで現役であり続けました。

「日本の植物すべてを明らかにする」と生涯をかけて植物と向き合った博士のその想いは、世代を超えて、植物園の職員、そして植物を愛でるたくさんの人たちへと引き継がれています。

高知県立牧野植物園

  • 高知県高知市五台山4200-6
    TEL:088-882-2601
    開園時間:9:00~17:00(最終入園16:30)
    https://www.makino.or.jp

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高知県立牧野植物園

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1958年に開園。五台山にある約8haの敷地は山の起伏が活かされ、果樹園やお遍路道など周囲の環境とも調和。