サルコペニアとは?簡単に解説!症状や診断基準・予防法
「運動機能が低下してきたし、サルコペニアかも」サルコペニアは、加齢などの原因により筋肉量が低下してしまう病気です。サルコペニアが進行してしまうと転倒しやすくなったり、結果的に要介護状態になってしまう場合もあるため早めの予防が必要。この記事では、サルコペニアの原因や症状、フレイルやロコモなど似たような病気とサルコペニアとの違い、お家でできるサルコペニアの予防法などをわかりやすく解説していきます。
漢方の製薬会社「再春館製薬所」発|「歩みのゼリー」

歩みのゼリーは、中高年の「歩く力の向上」に役立つとともに、お腹まわりの「脂肪を消費・減少」させ、年齢に負けないしなやかな体づくりをサポートする、機能性表示食品です。
再春館製薬所が漢方の知見を活かし、機能性関与成分である「ブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボン」の他、高麗人参の中でも特に希少で品質の良い「長白参エキス」を配合。
さらに、筋肉づくりに欠かせない必須アミノ酸「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」に加え、スーパーアミノ酸と称される「シトルリン」や「アルギニン」によって、ハリのある活動的な毎日をサポートします。
おいしくさわやかな紅茶風味のスティックゼリーで、1本食べることで普段の「家事」「仕事」「散歩」といった行動を、効率的に「歩く力の向上」と「お腹の脂肪対策」につなげます。
サルコペニアとは?わかりやすく解説
ここでは、サルコペニアとは一体どのような状態なのかを解説します。
- 一次性サルコペニア
- 二次性サルコペニア
- サルコペニアは肥満にも注意!サルコペニア肥満(隠れ肥満)
サルコペニアとは加齢に伴って筋肉量が減少し、筋力が低下する現象です。
1989年に始めて提唱されたサルコペニアは、その後2010年に欧州老年医学会などの研究グループ、EWGSOP(The European Working Group on Sarcopenia in Older People)によって次のように定義されました。
「筋量と筋力の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられる症候群で、身体機能障害、生活の質の低下、死のリスクを伴うもの」
その後、2016年には、世界保健機関(WHO)が要介護リスクや、死亡リスクが高まるとして「国際疾病分類第10版(ICD-10)※」に認められた国際疾病となっています。
※世界保健機関(WHO)が、世界中の疾病や障害および死因の統計分類として作成したもの。正式名称は「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」
サルコペニアには大きく分類して二種類に分かれており、それぞれ「一次性サルコペニア」「二次性サルコペニア」があります。
それぞれ見ていきましょう。
一次性サルコペニア
一次性サルコペニアとは「加齢」が原因となって起こる筋肉量の減少や筋力低下現象です。
私たち人間の筋肉量は、20歳から徐々に減少していきます。
そして50歳を過ぎると途端に筋肉量が大きく減少しはじめ、高齢と呼ばれる年齢ではサルコペニアが起こるリスクが若いころと比較して高くなります。

そのため、年齢を重ねて「物を持ったり握ったりする力が弱まった気がする」と感じた際はサルコペニアの可能性を疑い、予防や治療を受けることが大切です。
二次性サルコペニア
二次性サルコペニアとは「活動」「栄養」「疾病」のいずれか、またはすべてを満たして起こる筋肉量の減少や筋力の低下現象です。
- 「活動」長期的な寝たきり状態や不活発な生活習慣など
- 「栄養」栄養の吸収不良や消化管疾患など
- 「疾病」がんなどの悪性腫瘍や、重症臓器不全など
一次性サルコペニアの場合、加齢が原因のため「年齢を重ねた方」「高齢者」に起こるイメージがあります。
一方、二次性サルコペニアは3つの要素、またはいずれか1つの要素によって起こると考えられています。
したがって、年齢や性別に関係なく「運動不足」や「ダイエットによる栄養の偏り」などを原因として起こる可能性もあるため、注意が必要です。
サルコペニアは肥満にも注意!サルコペニア肥満(隠れ肥満)
サルコペニア肥満とは「筋肉が減少している状態」と「肥満」の両方を併せ持った状態のことを指す言葉です。
サルコペニア肥満になる原因は、運動不足やダイエットによる栄養の偏りが挙げられます。
サルコペニア肥満の診断基準は、次のとおりです。
診断基準
- BMI高値またはウエスト周囲長、サルコペニアの臨床症状や質問票(SARC-F)でスクリーニングを行う。
- 握力または立ち上がりテストで骨格筋の機能を評価する。(サルコペニア診断基準)
- 握力低下などのサルコペニアで生じる症状があれば、体組成を評価する。
- 過剰な脂肪量と骨格筋量の低下があればサルコペニア肥満の診断が確定する。
筋肉量の減少による筋力低下と、脂肪量が増えた状態になるサルコペニア肥満は、見た目で判断することが難しいという問題があります。
また、サルコペニア肥満になった状態から長期間気づかないままでいると、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
サルコペニアの原因
ここでは、サルコペニアの原因にはどのようなものが挙げられるのかを解説します。
サルコペニアの原因は一次性・二次性によって異なる
サルコペニアには一次性と二次性があり、それぞれ原因が異なります。
サルコペニア |
原因 |
---|---|
一次性 |
加齢 |
二次性 |
「活動」「栄養」「疾病」のいずれか、またはすべて |
性別や年齢に関係なく起こる可能性があるサルコペニアは、早い時点での予防や治療によって進行を防げるよう、日常生活でのちょっとした異変も見逃さないようにしましょう。
また、少しでも「おかしいな?」と感じた場合は、年齢のせいだからと解釈せず、一度病院を受診することが大切です。
サルコペニアは若年でもなり得る
サルコペニアは高齢者だけに起こる現象ではありません。
ダイエットで食事制限をしていたり、リモートワークなどによって運動不足になったりすれば、40代などの若い世代でもサルコペニアになる可能性はおおいに考えられるでしょう。
また、サルコペニアには特効薬と呼べるものがありません。
食事療法や運動療法も、サルコペニアの進行を防ぎ、予防することはできても完治させることはできないため、早い時点で予防、治療を始めることが非常に大切です。
「ペットボトルの蓋が開けづらくなった」「最近歩くスピードが遅くなったと言われる」など、ご自身の感覚や周囲から指摘されることがあれば、一度病院の受診をおすすめします。
サルコペニアになりやすい人の特徴
サルコペニアには、性別や年齢関係なく起こる可能性があります。
しかし、中でもサルコペニアになりやすい人として65歳以上の高齢者が挙げられます。
東京都健康長寿医療センター研究所の北村明彦研究部長らの研究グループは、日本人の一般高齢者1,851人の約6年間の追跡研究により、サルコペニアの有病率、関連因子、死亡・要介護化リスクを明らかにしました。
75~79歳では男女ともに約2割、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアに該当し、サルコペニアになると死亡、要介護化のリスクがいずれも約2倍高まることがわかりました。
加齢によって筋肉量の減少が加速していることや、必要な栄養の不足などを原因として、65歳を超えた高齢者にサルコペニアが起こるケースは多いでしょう。
痩せ型の高齢者
痩せ型の方は食事の摂取量が少ないため、低栄養になりやすい特徴があります。
また、年齢を重ねて食欲が低下することにより「サッパリとした食べ物だけを好む」という方も多く、お肉などに多く含まれるタンパク質が不足している可能性もあるでしょう。
普段の運動量が少ない人
年齢を重ねて外出する機会が減った方や、普段から運動量が少ない生活をしている方の場合、筋肉を維持・強化する機会も減るためサルコペニアの発症リスクを高めます。
私たちの身体にある筋肉は年齢によって徐々に衰えていきます。
そのため、定期的に運動を行って筋肉を鍛えることが少ない方は、年齢を問わずサルコペニアを発症しやすくなると考えられるでしょう。
食事制限のみのダイエットをしている人
食事制限のみのダイエットをしている人は、栄養の偏った食事をしているケースが多く、筋肉や骨に必要な成分が不足してサルコペニアの発症リスクを高めます。
特に「お肉は太るので控えている」「野菜だけをたくさん食べている」という方は、タンパク質やその他健康に必要な栄養素が不足するため、体調不良を引き起こす恐れもあるでしょう。
サルコペニアとフレイル・ロコモの違いは?
フレイルとロコモは、サルコペニアと同じく高齢者の方によく聞かれる状態です。
それぞれの違いは次のように分けられます。
特徴 |
|
---|---|
サルコペニア |
主に、加齢が原因で起こる筋肉量の低下や減少によって、身体機能が低下した状態 |
フレイル |
主に、加齢を原因として心身が衰えた状態であり、心身や社会的な面など8つの種類がある |
ロコモ |
運動器(骨や関節、筋肉など)に何らかの障害が生じて起こる移動機能の低下により、「歩く」「立つ」「座る」といった日常生活の動作が困難になる状態 |
サルコペニアは主に加齢を原因として筋肉量の低下や減少が起こり、身体機能が低下してしまった状態を指します。
次にフレイルは「身体的」「精神的」など8つの種類があり、それぞれ原因も異なります。
最後にロコモは、加齢に伴う運動器の障害を原因として移動機能が低下する状態です。
サルコペニアの主な3つの症状
サルコペニアによって起こる主な3つの症状は次のとおりです。
- 身体機能の低下
- 筋力低下
- 筋量減少
ここでは、それぞれの症状に関して解説します。
身体機能の低下
サルコペニアによって起こる症状の1つ目は「身体機能の低下」です。
筋肉量が減少し筋力が低下することによって「歩く速度が遅くなる」「外出時、杖や手すりが必要になる」など身体機能の低下が起こります。
身体機能の低下を確認する方法は「SARC−F(スクリーニングツール)」を活用します。
「SARC−F(スクリーニングツール)」で確認するのは以下の5項目です。

「筋力」「歩行時の補助」「椅子からの起立」「階段をのぼること」「転倒」の4つから回答を点数化し、身体機能の低下を確認します。
質問は合計10点満点で評価され、4点以上を超える場合はサルコペニアと考えられます。
この「SARC−F(スクリーニングツール)」は病院の受診基準としても利用できるため、ぜひ試してみてください。
筋力低下
サルコペニアによって起こる症状の2つ目は「筋力低下」です。
加齢や複数の原因によって身体全体の筋肉量が減少し筋力が低下します。
サルコペニアによる筋力の低下を確認する方法は「握力テスト」です。
- 男性:28kg未満
- 女性:18kg未満
男性が28kg未満、女性で18kg未満と設定されています。
双方の数値は、平成27年にスポーツ庁が発表した「平成27年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について」の中にある「加齢に伴う握力の変化」と比較しても低いです。
年齢 |
握力(男性・kg) |
握力(女性・kg) |
---|---|---|
20〜24歳 |
46.33 |
27.79 |
25〜29歳 |
46.89 |
28.27 |
30〜34歳 |
47.03 |
28.77 |
35〜39歳 |
47.16 |
29.34 |
40〜44歳 |
46.95 |
29.35 |
45〜49歳 |
46.51 |
29.31 |
50〜54歳 |
45.68 |
28.17 |
55〜59歳 |
44.69 |
27.41 |
60〜64歳 |
42.85 |
26.31 |
70〜74歳 |
37.36 |
23.82 |
75〜79歳 |
35.07 |
22.49 |
そのため、握力が基準値を満たしていない場合、サルコペニアで起こる症状が現れている可能性も考えられるでしょう。
筋量減少
サルコペニアによって起こる症状の3つ目は「筋量減少」です。
筋肉を維持するためには、筋肉の材料となるタンパク質の摂取や、タンパク質の材料となる必須アミノ酸などの栄養が必要です。
高齢者は「同化抵抗性(anabolic resistance)」と呼ばれる反応が存在しており、筋タンパク質の合成作用が若年者と比べて弱い可能性があります。
結果、若年者と同じ量のタンパク質やアミノ酸を摂取しても、高齢者の方が骨格筋が合成されづらいと考えられています。
くわえて、年齢を重ねると食も細くなり、筋肉に必要な栄養の摂取量も減ります。
これらの点から、同化抵抗性と栄養不足によって筋肉の合成機能が低下し、それに伴って筋量が減少してしまうと考えられているのです。
サルコペニアによる筋量減少を確認する方法は、次の2種類です。
- 生体電気インピーダンス法(BIA法)
- 二重エネルギーX線吸収法(DXA法)
2つのうち、いずれかの方法を活用して両腕前脚の筋肉量を算出します。
そして算出した結果を身長(m2)で補正した数値を「骨格筋指数(SMI)」と呼びます。
以下の表は、2つの方法で男女別の両腕前脚の筋肉量を表しています。
骨格筋指数 |
男性 |
女性 |
---|---|---|
BIA法 |
7.0kg/m2未満 |
5.7kg/m2未満 |
DXA法 |
7.0kg/m2未満 |
5.4kg/m2未満 |
骨格筋指数(SMI)は自宅で確認できないため「SARC-F」や「握力テスト」でサルコペニアではないか?と感じたら一度病院での受診を検討してください。
サルコペニアの診断基準
サルコペニアの診断基準は次の3つです。
診断基準 |
診断方法 |
---|---|
歩行速度測定 |
1秒あたり0.8m〜1m未満 |
握力測定 |
|
筋肉量測定 |
BIA法またはDXA法 |
歩行速度の指標には「歩行者専用の信号が青信号の間に渡り切れるか」が挙げられます。
また、握力測定や筋肉量測定は、それぞれ先ほど3つの症状で解説したとおりです。
サルコペニアの診断基準は、65歳以上の高齢者を対象として骨格筋量低下が必須条件とされています。
くわえて、筋力の低下または身体機能低下のどちらかが加われば、サルコペニアと診断されます。
サルコペニアの場合、適切な栄養管理と運動などを行い、進行を防ぐことを目的とする治療が大切です。
サルコペニアの症状が進行すると寝たきりや嚥下障害などの要介護、死亡リスクが高まるため、身体の調子が悪いと感じたら、なるべく早く病院を受診して医師に相談しましょう。
もしかしてサルコペニア?と思ったら4つのチェック方法を活用しよう!
当記事を読んで「もしかしてサルコペニアかもしれない」と感じた方や「家族がサルコペニアかもしれない」と感じた方もいるかもしれませんね。
サルコペニアの正確な診断は病院を受診して医師による診察と問診、テストなどを必要としますが、お家で簡単に行えるチェック方法があります。
- 片足立ちでチェックする方法
- ふくらはぎでチェックする方法
- 歩行速度の計測でチェックする方法
- 肥満度を示す体格指数(BMI)でチェックする方法
ここでは、それぞれのチェック方法を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
片足立ちでチェックする方法
サルコペニアのチェック方法1つ目は「片足立ちでチェック」です。
開眼片脚立位テストと呼ばれる方法で、身体のバランス能力に関してチェックします。
- 素足になって滑りにくい床の上に立つ
- 腰に手をあてて立ちやすい方の足で立つ
- 片足を5cmほど高く上げて、立っていられる時間を計測する
片足立ちの状態が1分間維持できれば、サルコペニアの可能性は低いと考えられています。
一方、片側でも維持できた時間が15秒未満で注意、8秒以下だと要注意です。
維持できた時間が短いほど、身体機能が低下していると考えられるため、サルコペニアの可能性が高いと考えられます。
ふくらはぎでチェックする方法
サルコペニアのチェック方法2つ目は「ふくらはぎでチェック」です。
サルコペニアによって起こる筋肉量の減少は、ふくらはぎに現れやすく、筋肉が衰えると過度に痩せ、細くなるため、目で見てチェックしやすい方法です。
ふくらはぎでのチェック方法は「指輪っかテスト」を活用します。
- 両手の親指同士と人差し指同士をそれぞれ合わせて輪っかを作る
- 輪っかで利き足ではないふくらはぎの一番太い部分を囲む
指輪っかテストの結果からサルコペニアの可能性が高い順を並べてみます。
- 隙間ができた(両手の輪っかよりもふくらはぎが細い)
- ちょうど囲める
- 囲めない
1の状況がもっともサルコペニアの可能性が高いとされており、病院の受診が必要です。
2や3の場合、サルコペニアの可能性は低いと考えられますが、ご自身で筋力の低下を感じる場合は、一度病院を受診して医師へ相談してみることをおすすめします。
サルコペニアはふくらはぎが細くなる?自分でできるセルフチェック方法を解説
歩行速度の計測でチェックする方法
サルコペニアチェック方法3つ目は「歩行速度でチェック」です。
ここでは、「4mの距離を何秒で歩けるか」を測定するテストを紹介します。
- 4mの距離をいつも歩いているように歩く
- 2回歩行を繰り返し、結果が良かった方をテスト結果として活用する
歩行速度の基準は1秒あたり0.8m~1m未満で、歩行テストの結果が「歩行速度1.0m/s以下(毎秒)」であり、なおかつ骨格筋量の低下が疑われる場合はサルコペニアの可能性が考えられます。
肥満度を示す体格指数(BMI)でチェックする方法
サルコペニアのチェック方法4つ目は「肥満度を示す体格指数(BMI)でチェック」です。
BMIとは肥満度を表す指標で、BMIが25以上の場合サルコペニア肥満の可能性があります。
- BMIの計算方法:体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
計算方法を参考にして、ご自身や家族の肥満度をチェックしてみましょう。
計測結果 |
肥満度 |
---|---|
18.5未満 |
低体重(やせ) |
18.5~25未満 |
普通体重 |
25~30未満 |
肥満(1度) |
30~35未満 |
肥満(2度) |
35~40未満 |
肥満(3度) |
40以上 |
肥満(4度) |
お家でできるサルコペニアの予防法2選
次はお家でできるサルコペニアの予防法を2選紹介します。
栄養バランスの良い食事をとる
ここまでで解説したとおり、サルコペニアを予防するためには筋肉量の減少や筋力の低下を防ぐ効果が報告されている栄養成分の摂取が必要です。
タンパク質やビタミンD、必須アミノ酸などの栄養成分をバランス良く食事に取り入れることによってサルコペニアの予防につながります。
ただし、栄養のとり過ぎはサルコペニア肥満を引き起こすリスクも考えられます。
食事で予防を始める際は、サルコペニア外来やかかりつけの病院を受診して効率良くサルコペニアを予防できるよう計画を立てることが大切です。
サルコペニアの予防は食事から!栄養管理の重要性とおすすめのレシピを解説
筋力トレーニングを行う
栄養バランスの良い食事以外にも、筋肉を維持させたり、増やしたりするためには適度な運動も必要です。
また栄養成分でも解説したビタミンDは、皮膚が紫外線を浴びることでも摂取できます。
これは皮膚にあるプロビタミンD3(前駆体)と呼ばれる物質が、紫外線を浴びることによって体内でビタミンDへ変わる作用があるからです。
もちろん、過度に紫外線を浴びることは良くありませんが、家の庭や公園などで軽い筋力トレーニングをするだけでも、サルコペニア予防に役立つ成分を摂取し、筋肉の維持や増やす効果も期待できます。
筋力トレーニングはもちろんのこと、最初は身体を慣らすために散歩へ出かけるなど、少しずつ身体を動かしていけばサルコペニア予防につながります。
もしかしてサルコペニアかな?と思ったら何科を受診すれば良い?
次は、サルコペニアの可能性を疑う場合、病院の何科を受診するべきかを解説します。
- サルコペニア外来(整形外科)
- 老年病科
- 地域包括支援センターで相談してみることもおすすめ
それぞれ解説しますので参考にしてください。
サルコペニア外来(整形外科)
サルコペニア外来は、サルコペニアに特化した診療を行う医療機関の外来部門です。
整形外科やリハビリテーション科がサルコペニア外来を開設しているケースもあります。
サルコペニア外来では、患者の筋力や筋肉量を測定し、その状態を評価するほか、サルコペニアだと診断された場合は、栄養指導や適切な運動療法などの治療法を提案します。
また、サルコペニア外来以外にも「サルコペニア・フレイル外来」を開設している病院もあるため、お近くの病院にサルコペニア外来が開設しているかどうか確認してみてください。
老年病科
老年病科は、主に65歳以上の患者さんを対象とした総合診療を行っている科です。
サルコペニアや認知症、フレイルなどの加齢によって伴う病気への対応や、自身では自覚がないけれど検査をしたいなど、さまざまな診察に対応しています。
老年病科では、サルコペニアの診断のために筋力テストや筋肉量の測定などを行い、患者それぞれの進行度に応じて適切な治療計画を立てていきます。
また治療以外にも「サルコペニアについて知りたい」などの相談にものってもらえますので、元気なうちに予防計画を立てたいという方もぜひ一度相談してみてください。
地域包括支援センターで相談してみることもおすすめ
地域包括支援センターとは、高齢者の健康面や生活全般に関する相談全般を受け付けている総合相談窓口です。
各地域にある市町村が主体となって「保健師」「社会福祉士」「主任介護支援専門員」などを配置し、高齢者の福祉に対する支援を目的としています。
地域包括支援センターでは、サルコペニアやフレイル、ロコモなどに関する相談に専門家が対応してくれることや、予防体操教室など、さまざまなサービスを展開しています。
地域包括支援センターはすべての市町村に設置されているため、お住まいの地域ではどこにあるのか、市役所への問い合わせや病院での相談で調べてみると良いでしょう。
サルコペニアの3つの治療法

サルコペニアの治療法は次の3つが挙げられます。
- 食事療法による治療
- 運動療法による治療
- 薬物療法による治療
ここでは、それぞれの治療法について解説します。
(1)食事療法による治療
食事療法による治療は、筋力低下を防ぐために必要な栄養成分を適量摂取することによってサルコペニアで起こる症状を予防・治療する治療法です。
筋肉の材料となるタンパク質はもちろんのこと、筋肉の萎縮を防ぐと報告されているビタミンDなどの栄養成分を摂取して治療を行います。
期待できる効果 |
食材(100gあたり) |
1日の推奨摂取量 |
|
---|---|---|---|
タンパク質 |
筋肉量の低下を防ぎ、筋力の維持や改善 |
・肉類 |
・1日当たり72gが理想 例「体重が60kgの場合、鶏ささみなら300g、卵なら2,3個など」 |
ビタミンD |
筋肉の萎縮を防ぐ |
・魚介類 |
・18歳以上の男女ともに1日当たり8.5㎍(マイクログラム)が理想 例「鮭をおかずにする、味噌汁にきのこ類を入れる、卵なら2.3個など」 |
必須アミノ酸 |
筋肉量を増やしたり、維持したりする |
・チーズ |
1日当たりの理想摂取量
バリン: ロイシン:
イソロイシン:
例「スライスチーズ5枚、茹でた大豆(調理済み大豆を約1/2カップ(125ml)から2/3カップ(160ml)など」 |
ほかにも、筋肉づくりに欠かせない成分として、筋タンパク質を構成する成分である必須アミノ酸が挙げられます。
必須アミノ酸は人間の身体では作ることができない9種のアミノ酸です。
中でも筋肉量を増やしたり、維持したりするために役立つ成分として「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」の必須アミノ酸3種があります。
これらの成分が豊富に含まれた食べ物をバランス良く摂取することが、サルコペニアの進行を防ぐために大切です。
(2)運動療法による治療
運動療法による治療とは、日常的に有酸素運動や、病院でのリハビリ、レジスタンス運動(筋トレ)などを行い、筋肉量を増加・維持させる治療法です。
運動 |
期待できる効果 |
---|---|
有酸素運動(リハビリも含む) |
|
レジスタンス運動(筋トレ) |
|
レジスタンス運動(筋トレ)とは、自分の体重やゴム製のチューブなどを用いて負荷をかけて行う運動療法です。
このレジスタンス運動(筋トレ)を行った研究報告によれば、平均年齢90歳(86最〜96歳)の高齢者でも筋肉量の増加と筋力アップが認められたとされています。
また、日常的なウォーキングによる有酸素運動やリハビリ、レジスタンス運動(筋トレ)と、食事療法を組み合わせることで、筋肉量の減少や筋力低下を防ぐ効果が期待できます。
(3)薬物療法による治療
薬物療法は、サルコペニアの予防、治療に効果が期待できる薬剤の摂取を行う方法ですが、2023年現在、有効な薬は開発されていない状態です。
いままでにさまざまな研究が繰り返され、過去にはSARM(selective androgen receptor modulator)と呼ばれる薬剤研究が行われたことがあります。
使用されたSARM(MK-0773)は、アンドロゲン補充療法にて利用されている薬です。
男性ホルモンのアンドロゲンによる働きを模倣して筋肉の強化を目的としました。
その結果、骨格筋量と筋力が上昇したという報告もあったものの、対象者がサルコペニア患者の高齢者ではなかったり、骨格筋量が上昇しても筋力や歩行速度の改善報告はなかったりなど、エビデンスの低さが懸念点といえるでしょう。
SARM以外にも、牛車腎気丸と呼ばれる漢方薬や、経口糖尿病治療薬の1つであるメトホルミン、筋肉の萎縮を防ぐビタミンDを配合した活性型ビタミンD3製剤など、さまざまな成分がサルコペニアの治療に利用できないかと考えられていますが、いまだ開発には至りません。
成分・薬 |
特徴 |
---|---|
牛車腎気丸 |
・漢方薬の一つで、骨粗しょう症や脱毛、腰痛などに用いられる。 ・老化を促進させたマウスに使用したところ、サルコペニア改善効果が見られたとしている。 |
SVペプチド |
・大阪大学医学系研究科の濱田・松浦氏が発見した成分。 ・当初は心臓の機能再生能を有しているというものであったが、骨格筋にも何らかの作用があるのでは?と考えられている。 |
補中益気湯 |
・漢方薬の一つで、夏やせやかぜ、食欲不振など幅広い治療に用いられる。 ・サルコペニア・フレイル悪化のリスクがある高齢者に対して使用し、リハビリテーションと併用させながら約3年間経過を観察した結果、改善が見られたとしている。 |
メトホルミン |
・経口糖尿病治療薬の一つ。 ・高齢糖尿病患者に対するメトホルミンの使用によって筋肉量の減少が抑制されたと報告されている。 |
人参養栄湯 |
・漢方薬の一つで、貧血、手足の冷え、病後の体力低下などに用いられる。 ・マウスへの投与実験により、骨格筋量と骨格筋機能に関わる「遅筋線維」と呼ばれるものが回復し、サルコペニア・フレイルの新たな治療薬になるのではないかと考えられている。 |
活性型ビタミンD3製剤 |
・骨粗しょう症の治療薬として用いられる。 ・ビタミンDで期待できる筋肉の萎縮を抑制する効果が期待できることから、サルコペニア治療への可能性が挙げられている。 |
そのため、現時点でのサルコペニア治療は「食事」「運動」の2つを組み合わせた方法がメジャーな治療法といえるでしょう。
まとめ
当記事では、近年問題視されているサルコペニアについて解説しました。
サルコペニアは高齢者だけがなるものだと思われがちですが、原因はさまざまで40代などの若い世代でも起こる可能性があるため、注意が必要です。
本記事を参考に、定期的なサルコペニアのセルフチェックや予防、治療でいつまでも健康に歩ける元気な身体を維持しましょう。
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