
日に日に太陽が暖かさを増し、気持ちも高揚する春が到来。一方で、身体のゆらぎやアレルギー症状、メンタルの浮き沈みに関する悩みが増えるシーズンでもあります。そこで春の不調の原因や、今すぐ取り入れたいセルフケア法を伺いました。
漢方スタイリスト・中医薬膳師。すこやかに、うつくしく、ゆたかに暮らす」をキーワードに活動。「きたかまくら日々響 hi bi ki」を主宰し、ライフスタイルとしての漢方を提案している。著書に『季節と暮らす12カ月 漢方養生ダイアリー: 40代からの体質改善』(日本文芸社)などがある。
https://www.kitakamakura-hibiki.com草木が芽吹き、花々が咲き誇る春は目覚めの季節であり、生命誕生のシーズン。冬の間、体の中に潜んでいた生命エネルギーが高まるのを感じる方も多いでしょう。社会生活においても新年度がスタートし、何かと慌ただしい時季。心のたかぶりと体との間に生じるアンバランスや、気候の変化の激しさなどから心身に不調を感じている人も多いはずです。
春のゆらぎチェックシート
最近の体調をみて以下の項目に当てはまる症状が2つ以上ある場合は、「風邪(ふうじゃ)」の影響を受けて「肝」が弱っているサインかもしれません。ご用心を!
東洋医学では、さまざまな病気の外的要因となる6つの邪気(下図参照)の中でも、春は特に「風邪(ふうじゃ)」が影響を及ぼすと考えられています。この「風邪(ふうじゃ)」は、風が吹くように高く舞って上半身に熱性の炎症を引き起こす性質があり、頭痛やめまい、顔まわりの吹き出物、鼻水などの症状を助長します。また、冷えや乾燥などをもたらすほかの邪気も伴って体に入り込むことが多いため、「風邪(ふうじゃ)」の侵入を許すことが、あらゆる病気の引き金となってしまう場合も。さらに「風邪(ふうじゃ)」には、五臓の中の「肝」を乱す性質があり、目や爪、体の筋のほか、メンタルにも影響を及ぼすといわれています。大々的な不調を自覚していなくても、花粉症で目がひどくかゆくなる人や、乾燥で爪がもろくなった、最近足がつる、イライラするといった症状があったら、ご自身の生体エネルギーよりも「風邪(ふうじゃ)」の影響が上回ってしまっているせいかもしれません。
季節と6つの邪気

春夏秋冬の巡りによって現れる気候の変化が「六気(ろっき)」。異常気象などで季節の特性が過剰になったり、体の抵抗力が落ちたりすると、「六気(ろっき)」が「六淫(りくいん)」という邪気になり、体調不良や病気の引き金になると考えられています。
東洋医学の「陰陽論」の観点からみても、一年のうちで特に体がゆらぎやすいのが春。外界では、冬に多かった「陰(暗く冷たい)」の要素が減り、「陽(明るく暖かい)」の要素が増えますが、体内ではまだ「陰」の要素が強い場合が多いのが実情。急に薄着になったりすることで、陰陽バランスがくずれて不調を招くことがあります。さらにこの時季は、ほかの季節よりも気候や環境の変化が大きいせいで、五臓や体を構成する三大要素(気・血・水)の均衡がくずれやすくなるのも特徴。つまり春の養生は〝あらゆるアンバランスの調整〞も大きなポイントとなります。始まりの季節である今、体を整えることこそ、この先一年間をすこやかに乗り切る鍵!以下の具体的な養生法をぜひお試しください。
春の心と体をほぐす
毎日の養生
気候や環境の変化によって生じるストレスに負けない体を作るために日々、取り組みたいことをご紹介!
まず大事にしたいのは食事。春に弱りやすい「肝」を強化し、「陽」を補う食材を積極的に摂りましょう。ただし、苦手な食材を食べるストレスも「肝」の負担となるので、無理はせず、食べて心地よいと感じられるものを摂ればOKです。また、添加物や塩分の多い食事、アルコールも、解毒器官である「肝」の負担となるので控えるべき。さらに、毎日同じ時間に就寝して眠りの質を高めるのも、「血(けつ)」の無駄遣いを避け「肝」を強化する養生に繋がります。
酸味・苦味食材で「肝」を補う
解毒を司る「肝」を補うのは程よく酸味が効いていてすっぱすぎない果物やフルーツ酢。中でもりんご酢はカリウムが豊富で塩分の排出も促すのでおすすめです。また、フキノトウやタケノコなど、苦味がある春野菜には解毒作用や体に溜まった熱を下げる働きが望めるため「肝」のサポート役に。

アサリやにんじんで良質な「血(けつ)」を育む
質のよい「血」で体を満たすことも「肝」を助け、心をリラックスさせるために有効。「血」を増やすスイッチになるのはアサリ・にんじん・ナッツ類。「血」を巡らせる性質で知られるのは玉ねぎ・アボカド・パセリなど。おいしいと感じるものを心身が満足する量摂取しましょう。

「陽」を補う食材でバランスを整える
春の体内はまだ冷えを助長する「陰」が優勢になりがち。食材から「陽」を取り込んでバランス調整を。特に目を向けたいのは「起陽草(きようそう)」ともいわれる補陽食材の代表格・ニラ。スープに入れるなど温かくしていただくのが理想です。そのほか、ニンニク・エビ・かぼちゃにも注目を。

肩甲骨ストレッチを習慣に
陰陽の考え方では、お腹が「陰」で背中が「陽」。春に不足しがちな「陽」を高めるために背中を鍛えるのも手! 図の①のように両手の指先を肩に乗せ、両肘を持ち上げたら、肘で外側に向かって円を描くイメージで②のポーズへ。肩甲骨だけでなく背中を大きく動かすつもりでやるのがポイントです。

森の中で深呼吸してストレスを軽減
現代人は得てして呼吸が浅くなりがち。意識的に深く呼吸をして、「肝」にまでしっかり酸素を供給することは、春のゆらぎ対策に繋がります。時間があるときは、緑の中をウォーキングしながら深呼吸。心肺機能のアップや、「肝」が苦手なストレスの軽減にも効果的です。
足ツボマッサージで「肝」を癒す
「肝」の経絡上にある重要なツボは「太衝(たいしょう)」。「脾(ひ) 」と繋がっている「太白(たいはく)」も刺激することで、癒しの効果が増すと考えられています。押す際は、ツボに対して指のハラを垂直に当て、まっすぐ押し込むように3秒ほど圧をかけましょう。イタ気持ちいい程度の強さがベストです。

足の親指と人差し指の骨の間を足首に向かって撫でたときにあるくぼみ

足の親指の側面をかかとに向かって撫でたときにある骨の出っ張りの後ろのくぼみ
自分と向き合うティータイムをもつ
お茶を飲んで心を落ち着けるひとときを。クールダウンが望める緑茶(カフェインが気になる人は水出しで)や「陽」を補える杜仲茶(とちゅうちゃ)のほか、紅茶に「血(けつ)」を増やすナツメや「肝」を補うクコの実を入れるのもおすすめ。心や体の声を聞きながらゆっくりと楽しみましょう。

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