監修:日本東洋医学会 専門医・日本医師会 認定産業医・元日本神経学会神経内科学会 専門医
田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療を専門とする脳神経内科医・日本東洋医学会専門医。西洋医学の枠に捉われず、東洋医学の叡智も駆使することで、患者さんの健康管理をサポート。オンライン診療では漢方薬なども活用している。「患者本人」を、根本的治療を施せる唯一の存在と捉え、病気の克服を支える「主体的医療」の普及に努めている。
美肌を維持するためには、運動習慣や睡眠習慣、毎日のスキンケアと同時に食事の見直しが大切です。しかし、肌にいい食べ物はどういうものがあるのか、どのように見直せば良いのか分からない方も多いのではないでしょうか。この記事では、肌にいい食べ物と栄養素の解説と、摂りすぎると良くない食べ物、健康的な肌を保つ生活習慣の見直し方法を紹介します。
特定のものを集中的に食べると、栄養バランスが偏り、肌や体調を崩す原因になってしまいます。
肌や体を健康に保つために必要な栄養素は、大きく分けて「タンパク質」「必須脂肪酸」「ビタミン」「ミネラル」「食物繊維」です。体に必要な栄養素は吸収される量が決まっていますので、毎日の食事の中でバランス良く食べましょう。
肌にいい食べ物はどんなものがあるのでしょうか?栄養素別に働きと肌にいい食材を紹介します。
| 栄養素 | 働き | 食材 | |
|---|---|---|---|
| タンパク質 | 肌、筋肉、血液、骨、髪などの体を構成する |
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| 必須脂肪酸 |
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| 水溶性ビタミン | ビタミンB群 |
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| ビタミンC |
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| 脂溶性ビタミン | ビタミンA | 皮膚や粘膜を健康に保つ |
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| ビタミンE |
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| ミネラル(亜鉛、鉄、カルシウムなど) |
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| 食物繊維 | 腸内環境を整えて、ニキビなどの肌荒れを防ぐ |
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タンパク質は肌、筋肉、血液、骨、髪などの体を構成する役割をしています。うるおいを保ってくれるコラーゲンはタンパク質の一種で、不足していると、肌のハリがなくなったり、うるおいが不足して肌荒れがおこったり、髪がパサパサになったりしてさまざまな体の部分で不調がおこるのです。
脂肪酸は体を健康に維持するためには必要不可欠な物質です。脂肪酸のうちリノール酸(体の各組織に栄養を与え元気にする成分)、α-リノレン酸(血流改善や肌のバリア機能の維持に役立つ成分)などは体内で作られません。そのため食べ物から摂る必要があるので「必須脂肪酸」と呼ばれています。
水溶性ビタミンは血液などに溶け込んでいき、過剰に摂取しても体内には蓄積されず、余ったものは尿から排出されます。そのため、毎日の食事から摂取する必要があるビタミンです。
脂溶性ビタミンは水に溶けにくく、脂肪組織や肝臓に蓄積されます。体の機能を正常に保つ働きをしますが、過剰摂取すると食欲不振や頭痛などの過剰症をおこす可能性があるとされているので、食事の際は注意が必要です。
ミネラルは亜鉛、鉄、カルシウムの総称で、血液のめぐりを良くし、ターンオーバーを促進してくれる働きがあります。体内では作られないため、食べ物から摂る必要がある成分です。
食物繊維は腸内環境を整え、便秘解消して肌荒れの予防になる成分です。ですが、慢性的な便秘が続くと有害物質を生成する恐れがあるとされており、その有害物質は最終的に肌に溜まります。その結果、吹き出物やニキビなどの肌トラブルがおきるのです。そのため、食物繊維を食事から摂ることで、腸内環境を正常化させ、肌荒れを防ぐ効果が期待できるとされています。
医師 田頭秀悟からのコメント
食物繊維については、もう少し詳しいところまで押さえておくと便利です。食物繊維は水に溶ける「水溶性食物繊維(以下水溶性)」と「不溶性食物繊維(以下不溶性)」に大別できます。
どちらも便通に関与するのですが、その関与の仕方が両者で異なります。栄養学の大著、ヒューマン・ニュートリション(第10版)によると、次のように書かれています。
(以下、引用文)
食物繊維による糞便量の増大には2つの要因が関与している。水溶性の繊維は容易に発酵を受け分解されるが、菌体の増殖によって便の量を増大させる。一方、小麦フスマのようにリグニン質を多く含む不溶性の繊維は一部しか発酵を受けない。 このため不溶性の繊維は、それ自体の抱水能(water-holding capacity)によって直接的に便の体積を増大させる。 糞便量は腸内容物の通過時間と密接に関連している。 1日の糞便重量が150gを下回った場合、この移動速度が低下していると考えられ、100g/日を切ると便秘の状態になる。
(引用、ここまで)
水溶性には「便に水分を含ませて柔らかくする」働きがあり、不溶性には「便のカサを増す(体積を大きくして)」働きがあります。
これを踏まえると、どんなときであっても食物繊維が便通に良い効果をもたらすわけではないことがわかります。たとえば、便が硬い方に水溶性が有効かもしれませんが、不溶性をむやみに足せば便が大きくなりすぎるかもしれません。
すると、腸を通過するのが難しくなって、余計に便秘が悪化する可能性さえ出てきます。また普段より水様便になりやすい方は、水溶性の摂取が不利に働きます。
水溶性と不溶性、それぞれの食物繊維の特徴と自分の排便の特徴をうまく組み合わせて便通の改善につなげてみてください。
なお、たいていの野菜類に含まれている食物繊維は不溶性なので、水溶性食物繊維の多い食品をある程度覚えておくとよいでしょう。
たとえば、野菜ではアシタバ・春菊・カボチャなど、いも類ではサツマイモ、果物ではミカン・キウイなど、海藻類ではのり・わかめ・昆布などが比較的、水溶性が多く含まれている食品です。また、納豆は水溶性と不溶性の双方がバランスよく含まれている食品として知られています。
肌に良い食べ物がある一方で、摂りすぎると良くない食べ物があります。摂りすぎると吹き出物やニキビなどの肌荒れがおきることがありますので、摂取する頻度や食べ方を工夫するようにしましょう。
ここでは摂りすぎると良くない栄養素と影響、食材を紹介します。
| 栄養素 | 影響 | 食材 |
|---|---|---|
| カフェイン | 肌にくすみやシミを発生させる可能性がある | コーヒー、赤ワイン、緑茶、紅茶、ココアなど |
| 脂質 | 吹き出物やニキビができやすい | スナック菓子、揚げ物、インスタント食品、ジャンクフードなど |
| 炭水化物(糖質) | 皮脂の量を増やしてしまい、吹き出物やニキビなどの肌荒れがおこりやすい | 上白糖、黒砂糖、はちみつ、メープルシロップ、サツマイモなど |
| カプサイシン | 胃腸の粘膜を傷つけ、炎症がおこり、便秘を招いて吹き出物やニキビができやすくなる | トウガラシ、鷹の爪、ラー油、キムチなど |
カフェインはむくみの予防や脂肪燃焼して冷え性を改善する効果が高いとされる一方、摂取しすぎると肌にくすみが現れたり、シミを発生させたりする可能性があるので注意が必要です。
カフェインは脳を覚醒させる作用を持っています。個人差はありますが過剰摂取や、摂取する時間によっては睡眠の質を落とし、肌のターンオーバーが乱れて、くすみやシミへとつながってしまうのです。コーヒーや緑茶、紅茶などは、飲む量や時間を工夫するようにしてみましょう。
脂質を過剰に摂取すると、皮膚や粘膜などの生成を促進しているビタミンB群が大量に消費されてしまい、免疫力が低下し、肌荒れがおこります。また、皮脂量も増えて、吹き出物やニキビができやすくなることも。食べる頻度を抑えるか、摂取したとしても少量にしましょう。
炭水化物には糖質が含まれており、摂りすぎるとシミやくすみが現れやすくなります。糖質を分解するときにビタミンB群やミネラルを大量に消費するため、免疫力が低下してシミやくすみなどの肌トラブルがおこるのです。
カプサイシンに含まれる辛み成分を過剰摂取すると、胃腸の粘膜を傷つけて炎症をおこし、胃腸の機能を弱めてしまうとされています。胃腸機能が弱まってしまうと、下痢や便秘を招いて吹き出物やニキビなどの肌トラブルを引きおこすので、過剰摂取には注意が必要です。
コンビニでも、肌にいい食べ物を購入できます。コンビニを利用する際は、あまり加工されていない食品を選ぶのがポイントです。
野菜やフルーツにはビタミンCや食物繊維が豊富に含まれています。ビタミンCは体内で作られません。また、たくさん摂っても体内に蓄積されないのでこまめに摂取するようにしましょう。
さらに、冷凍すると生よりもビタミンCや肌の酸化を予防してくれる抗酸化物質の栄養価が高くなると言われています。ぜひ試してみてください。
卵はタンパク質、ビタミン、ミネラルなどの多くの栄養素を含んでいる食材です。卵にはタンパク質に含まれるコラーゲンの生成を助けてくれる働きがあるだけでなく、免疫力を向上する働きもあります。
ヨーグルトは、皮膚や粘膜の健康を保つ役割のあるビタミンAやビタミンB群を摂取できます。また乳酸菌も含まれているので、胃腸を整え、便秘を解消し、肌をきれいにしてくれる効果が期待できる食材です。低脂肪のプレーンヨーグルトや高タンパク質なギリシャヨーグルトを選ぶと良いでしょう。
豆乳や大豆製品には良質なタンパク質や抗酸化作用のあるイソフラボンが含まれており、肌の調子を整えてくれる効果が期待できます。また、腸内環境も整えてくれる効果もあるので、美肌を目指すためには、ぜひ取り入れてみてください。
食生活以外にも水分補給や運動習慣、スキンケアなど体に良い基本的な生活習慣を心がけましょう。
塩分を摂りすぎると、内臓に負担をかけます。体の塩分濃度を保つために、体の水を消費してしまうため、水分不足になりニキビを引きおこしてしまうかも。また、糖分の摂りすぎは皮脂の量を増やしてしまったり、肌の糖化を引きおこしたりする原因になります。なるべく間食は控えましょう。
こまめな水分補給をすると血液をさらさらにして、肌の新陳代謝を促し、肌細胞をきれいな細胞へと生まれ変わらせる効果が期待できます。また、むくみや便秘の解消にも良いとされていますので、こまめに水分を補給しましょう。
ウォーキングなどの有酸素運動をおこなうと、血流の循環を良くし、体の隅々まで栄養を届けられます。また、軽く汗を流すことで、古い角質が流れて、新しい細胞へ生まれ変わらせる肌のターンオーバーを促し、肌荒れを改善・予防の効果が期待できます。
古い細胞から新しい細胞へ生まれ変わらせる肌のターンオーバーは、眠っているときにおこなわれます。そのため寝不足が続いているとターンオーバーが乱れ、古くなった角質が肌表面に残ってしまい、肌荒れを引きおこしやすくなるのです。
良い睡眠をとるには、寝る直前の行動が重要ですので、以下のことをぜひ意識してみてください。
美肌を保つためには、体の内側からのケアも大切ですが、毎日おこなうスキンケアも正しくおこないましょう。
肌にいい食べ物は偏ることなくバランスよく食べることと、正しい生活習慣をおこなうことが美肌への近道です。肌に必要な栄養素や食べ物を理解して普段の食事に取り入れ、運動習慣や睡眠習慣、毎日のスキンケアなどを見直して、健康的な肌を手に入れましょう。
監修:日本東洋医学会 専門医・日本医師会 認定産業医・元日本神経学会神経内科学会 専門医
田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療を専門とする脳神経内科医・日本東洋医学会専門医。西洋医学の枠に捉われず、東洋医学の叡智も駆使することで、患者さんの健康管理をサポート。オンライン診療では漢方薬なども活用している。「患者本人」を、根本的治療を施せる唯一の存在と捉え、病気の克服を支える「主体的医療」の普及に努めている。
※この記事は、正しい情報発信を行うために、医師に監修を依頼しております。商品について医師が推薦を行うものではありません。
医師 田頭秀悟からのコメント
タンパク質には大きく分けて、「動物性タンパク質(以下動物性)」と「植物性タンパク質(以下植物性)」の2つがあります。豆類や穀類などの植物性のほうが身体に優しいイメージがあるかもしれません。しかし、私はどちらかといえば、肉・魚・卵などの動物性を積極的に摂ることをおすすめします。
その理由は「人間も動物で、動物の栄養は動物から摂るほうが効率的にできているから」です。実際、「必須アミノ酸」は身体の中で合成できません。
そのため、食品からの摂取が重要とされているタンパク質の構成要素は、植物性よりも動物性に豊富に含まれており、消化吸収効率も動物性のほうが優れている傾向にあります。
動物性は、飽和脂肪酸が身体に悪いとか、肉を摂り過ぎると病気になるといった話を聞かれたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、過去にそのような医学研究の結果が報告されたこともありますが、現在は、その調査方法に不備や限界があった可能性も指摘されており、医学界では明確な結論が出ていないのも実情です。
一方、植物性は、ビタミン・ミネラル・食物繊維など、ほかの栄養素が多く含まれている点において優れています。
ですので、ご自身の体調を見ながら、食品との相性も考慮しつつ、メインを動物性タンパク質、サブを植物性タンパク質と位置付けておくと、肌にとっても良い環境になりやすいのでしょう。
ちなみにサプリメントとしてのプロテインについても、動物性と植物性ではさまざまな違いがあります。ただ、サプリメントとしてのプロテインには添加物が含まれていたり、食品と違って成分が単一になったりしている関係で、身体に余計な負荷がかかる可能性があります。
アメリカのタフツ大学では、心臓病や脳卒中を予防するのに食品から栄養を摂取すると効果があるのに対し、「同じ栄養をサプリから摂取すると効果が無い」という研究結果も報告されています。
そのため、スポーツやボディビルディングで高みを目指すなどの特殊な状況や、肉や魚がアレルギーなどで食べられないなどの事情がある場合を除き、タンパク質は食品から摂取することをおすすめします。