監修:日本皮膚科学会 専門医・日本色素細胞学会
高藤円香(たかふじ まどか)
2013年防衛医科大学校を卒業後、臨床研修を修了。その後、大阪大学医学部附属病院や自衛隊阪神病院で研修ののち、皮膚科専門医を取得。現在は、皮膚科医として地域の方々の一般診療をメインに、アトピー性皮膚炎や乾癬などの診療にあたっており、執筆・監修などにも力を入れている。
年を重ねてくると気になるのが顔のたるみです。顔がたるむことで口元にシワができてしまうことがあります。そのシワは「マリオネットライン」と呼ばれますが、どうしても老けた印象を与えてしまいがちです。そこで、できるだけ目立たなくしたい「マリオネットライン」について、仕組みや原因について解説します。
「マリオネットライン」とは、口角の端から下に向かって下がるラインのことを指します。人形劇に使われる操り人形「マリオネット」の口元と似ていることから、マリオネットラインと呼ばれるようになりました。
マリオネットラインは頬のたるみが気になり始める40代ごろから出やすくなり、50代になるとさらに目立ってくるという方が多いようです。
マリオネットラインができるのは、おもに加齢による変化が原因ですが、若いのにマリオネットラインが出てくる方もいます。
マリオネットラインができるおもな原因は次のとおりです。
あまり表情が変わらない、日頃から笑う機会が少ない、口角が下がったまま、といった状態が続くと、表情筋を使う機会が少なくなり、筋肉が衰えていきます。また、加齢などにより脂肪が減ることから頬にたるみができマリオネットラインが現れやすくなるのです。
肌が乾燥すると、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸などの保湿成分が減少します。肌にうるおいとハリをもたらしていたこれらの成分が減り肌の乾燥が進むと、唇を支える口元がたるんだ状態となり、マリオネットラインのような深いシワのできやすい状態になるでしょう。
紫外線の影響でコラーゲンやエラスチンが減少することで、肌に弾力がなくなります。また、紫外線の影響で肌が乾燥することから、ハリや弾力が失われてシワやたるみがおこり、マリオネットラインが出現するのです。
急激なダイエットをすることによって、もともと太っていた体にあわせて伸びていた皮膚がたるむことでもマリオネットラインが出ることがあります。
遺伝的な要素もあるため、自分でどうにかできないこともありますが、加齢やダイエットなどによる体重の変化に伴う、顔の骨格の変化の影響にもご注意ください。
生活習慣によってもマリオネットラインを招いてしまうことがあります。
姿勢が悪いとマリオネットラインを招くことがあります。長い時間姿勢の悪い状態が続くとあご周りの筋肉に力が入らなくなり、筋肉が緩んできます。日頃から猫背になりやすい方やデスクワークで同じ姿勢が長く続く方は注意が必要です。
噛み合わせが悪かったり噛み癖があったりすると、顔の筋肉のバランスが悪くなりシワや溝ができることがあります。睡眠中の食いしばりや歯ぎしり、虫歯治療のあと、片方ばかりで食べるなどのくせがある方もマリオネットラインができやすいので要注意です。
口角から顎にかけて伸びる口角下制筋という筋肉は、口角を引き上げる役割があります。しかし、筋力の衰えに加え、加齢による肌の弾力低下で口角を上げることが難しくなり、筋肉の境界線に深い溝を刻んでマリオネットラインになってしまうのです。
頬杖を突くと右か左どちらかの頬に負担がかかってしまい、筋肉の動かし方に左右差が出てしまいます。このためマリオネットラインができやすいと言われています。
「マリオネットラインの消し方はあるのだろうか」と悩んでいる方はいるのではないでしょうか。マリオネットラインが気になるときに試してみたい対応は次の通りです。
こまめな保湿と適度な水分補給で乾燥を防ぎ、肌のバリア機能を低下させないようにすることがマリオネットラインの予防につながります。
医師 高藤円香からのコメント
マリオネットラインの予防として、代表的な成分は「ヒアルロン酸」です。ヒアルロン酸は角質層に水分を保持し、乾燥による小じわを防ぎます。「セラミド」も有効で、皮膚のバリア機能を高めて外的刺激から守り、肌の水分保持力を向上させます。
さらに、「ビタミンC誘導体」はコラーゲン生成を促進し、紫外線による酸化ダメージを軽減します。このほか「ナイアシンアミド」は皮膚の代謝を整えるほか、炎症を抑える働きもあり、肌の健康維持に役立ちます。
すでに現れたマリオネットラインのケアには、肌の再生と弾力回復を促す成分がおすすめです。ビタミンA誘導体である「レチノール」や「ペプチド」、上皮成長因子である「EGF」や「コエンザイムQ10」など、抗酸化作用や、肌再生を助ける成分を使うとよいでしょう。
紫外線の影響で肌に弾力を与える役割のコラーゲンが減少してしまうため、肌の弾力とハリを維持できるように紫外線対策は重要です。日焼け止めや日傘、UVカットの帽子など、できる限りの紫外線対策をおこないましょう。
日々の生活の中で、無意識になりがちな姿勢や生活の癖を意識してください。猫背になったり頬杖を突いたり、食事のときに片方ばかりで食べる癖があったり、食いしばりや歯ぎしりのある方は、できるだけ避けるように心がけてください。自分の努力だけで改善されない場合は、口腔外科を受診して相談してみましょう。
食事についてはバランスの良い食事を心がけてください。また、極端なダイエットは皮下脂肪の量が減ることからたるみにつながり、マリオネットラインが出てしまうので注意が必要です。
マリオネットラインが気になる方は、コンシーラーやチーク、リップ、ハイライトなどをうまく使って、目立たなくする方法をマスターしましょう。
コンシーラーはマリオネットラインに沿って使用するとマリオネットラインにコンシーラーが溜まってしまい、かえって目立ってしまいます。素材は、硬めのものは避けて油分の多いリキッドや伸びの良いクリームタイプ、色は明るめのものを選びましょう。マリオネットラインの下から口角に向かって薄く伸ばしていくようにつけるのがコツです。
チークは、入れる場所が重要です。フェイスラインを引き上げてマリオネットラインを目立たなくさせるためにも、頬骨から少し高い位置から斜め上に向かってチークを入れましょう。
リップを塗るときには、リップライナーで口角を上げるように塗っていきます。
ハイライトは、光でマリオネットラインを目立たなくさせるために、マリオネットラインのある口角のあたりに入れて光で飛ばしましょう。このときには、パールやラメが目立つものではなく、少し色を抑えめにすることがポイントです。
筋肉が衰えると目立ってしまうマリオネットライン、表情筋のトレーニングで顔の筋力をアップさせてマリオネットライン解消を助ける習慣を身につけることが大切です。
今からできる表情筋のトレーニングをご紹介します。
これらの動きを1日3回程度、思い出したときにやってみましょう。また、筋肉が固まっているなと感じたときには、スキンケアで保湿後にマリオネットラインの部分を優しくマッサージしてほぐしてください。
マリオネットラインは、筋肉の衰えや加齢などでおこりやすくなります。毎日の生活の中で、マリオネットラインにつながりかねない習慣を改め、マリオネットラインが出にくいように意識しましょう。
監修:日本皮膚科学会 専門医・日本色素細胞学会
高藤円香(たかふじ まどか)
2013年防衛医科大学校を卒業後、臨床研修を修了。その後、大阪大学医学部附属病院や自衛隊阪神病院で研修ののち、皮膚科専門医を取得。現在は、皮膚科医として地域の方々の一般診療をメインに、アトピー性皮膚炎や乾癬などの診療にあたっており、執筆・監修などにも力を入れている。
※この記事は、正しい情報発信を行うために、医師に監修を依頼しております。商品について医師が推薦を行うものではありません。
医師 高藤円香からのコメント
マリオネットラインの主な原因は、日々の生活習慣に潜んでいます。
例えば、猫背やスマホ首などの悪い姿勢、マスク生活で無表情が続くことによる表情筋の衰えは、顔全体のたるみに直結します。
加えて、睡眠不足や食生活の乱れは、肌に直接影響するものです。
特に、偏った食事や過度な飲酒は「酸化ストレス」を増やします。酸化ストレスとは、体をサビさせる活性酸素が過剰になった状態のこと。呼吸によっても自然に発生しますが、増えすぎると肌の老化を早めてしまいます。
日常の小さな積み重ねが、後々の印象を大きく左右します。まずは、日々の意識が予防の第一歩となりますので、些細なことから、気を付けてみてください。