監修:日本皮膚科学会 専門医・日本色素細胞学会
高藤円香
2013年防衛医科大学校を卒業後、臨床研修を終了。その後、大阪大学医学部附属病院や自衛隊阪神病院で研修ののち、皮膚科専門医を取得。現在は、皮膚科医として地域の方々の一般診療をメインに、アトピー性皮膚炎や乾癬などの診療にあたっており、執筆・監修などにも力を入れている。
※当該成分はドモホルンリンクルには配合されていません。
「レチノール」という言葉を聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。SNSでも話題になっており、レチノール配合の化粧品も多く見受けられるようになりました。レチノールは美しい肌づくりのために効果的な成分ではありますが、使い方や副作用など押さえておきたいポイントもあります。
そこで本記事では、レチノールの特徴や期待できる効果、使い方や注意点などについて詳しく解説します。レチノール配合の化粧品を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
レチノールとは、ビタミンAの一種で、肌や粘膜を健康に保つ成分です。抗酸化作用があり、肌の老化を防いだり、ダメージから守ったりする効果があります。
ビタミンAは体内ではつくられないため、食事で摂取するほか、ビタミンAを含む化粧品をスキンケアに取り入れると良いでしょう。
レチノールとトレチノイン(別名:レチノイン酸)はどちらも美容成分ですが、その違いは効果と副作用にあります。
レチノールは体内で酸化するとレチナールになり、さらにトレチノインへと変化します。トレチノインはレチノールと比べると50〜100倍もの効果を発揮するといわれており、その刺激性の強さから肌トラブルが出やすいのが特徴です。そのため、医師の処方が必要な医療用医薬品に指定されています。
医薬部外品や化粧品への配合が認められているレチノールのほうが、ドラッグストアといった身近な場所で見かけることが多いため、私たちにとって馴染みがある成分といえるでしょう。
レチノールに期待できる効果は、おもに次の3つです。
レチノールには、肌のターンオーバーを促進する働きがあります。
ターンオーバーとは、肌の細胞が新しく生まれ変わるサイクルのことです。ターンオーバーが正常におこなわれると古くなった角質が排出されて新しい肌が表面に現れるため、シミやニキビ跡、毛穴が目立たなくなるといった改善が期待できます。
また、肌のキメが整うことで全体的に滑らかで透明感のある肌に。シミやくすみが気になりにくくなることにもつながるため、肌トラブル全般を良い方向へ導いてくれるといえます。
コラーゲンは、肌のハリや弾力を保つために重要な役割をもつ成分です。レチノールは、コラーゲンを生成する線維芽細胞を活性化させる働きがあり、コラーゲンやヒアルロン酸を生み出すことにつながります。
コラーゲンが生成されると肌のうるおいが維持できるようになるため、特に乾燥しがちな目もとや口もとのハリがアップします。また、肌がふっくらすることで、シワやたるみが目立ちにくくなることもあるでしょう。
レチノールには過剰な皮脂分泌を抑制し、皮脂バランスを整える働きがあります。
皮脂の過剰分泌が続くと毛穴がつまりやすくなり、黒ずみやニキビにつながるおそれも。レチノールを使うことでニキビや毛穴の黒ずみ予防が期待できます。
また、皮脂のバランスが整うと肌のベタつきやテカリも軽減されます。特に脂性肌の方や混合肌の方で、肌の皮脂が気になる方にとっては有効であるといえるでしょう。
ここでは、レチノールの効果的な使い方を3つ解説します。これからレチノール配合の化粧品を使ってみようと考えている方はぜひ参考にしてください。
レチノールは肌のターンオーバーを促進するため、使用開始からターンオーバーの周期を一巡りするあたりで効果が出ることが多いとされています。ターンオーバーの周期は20代で28日前後ですが、50代では75日前後になります。そのため、短くても1カ月、できれば3〜6カ月は継続して使い続けると効果を感じやすくなるでしょう。
アイクリームや美容液などレチノール配合の化粧品は多岐にわたるため、感じている肌悩みに応じたアイテムを選び、毎日決まった時間に使うと無理なく継続することにつながります。
レチノールを使用すると肌が乾燥しやすくなるため、しっかりと保湿をおこなうことが重要です。
洗顔後に化粧水で肌を整え、レチノール配合の美容液や美容クリームを使用、その後、乳液やクリームでフタをするイメージでスキンケアをしましょう。
特にヒアルロン酸やセラミド、コラーゲンなどの保湿成分を含む基礎化粧品を使うと、乾燥防止につながり、肌のバリア機能を維持できます。
レチノールは肌を敏感にする働きをもつため、使用後の肌は紫外線ダメージを受けやすい状態になります。紫外線はシミやシワ、たるみなどの原因になる肌の天敵です。
日焼け止めをしっかり塗るだけでなく、帽子や日傘を活用して、紫外線の影響を最小限に抑えましょう。
医師 高藤円香からのコメント
上記で紹介した方法のほか、医師の指示に沿って、徐々に使用範囲や使用頻度を増やしていくことも効果的です。これは、継続的に使用していくことにもつながるでしょう。
なお、ピーリング剤やビタミンCなど、刺激の強い成分との併用は避けてください。皮膚が薄く、敏感な部分は刺激が出やすいため、最初は避けるか、ごく少量から使用することをおすすめします。
レチノールはすこやかな肌づくりにつながる有効な成分ですが、使用する際は注意すべき点もあります。次の3点を理解したうえで、正しく使いましょう。
レチノールを使用すると、人によっては「A反応(レチノイド反応)」がおこることがあります。A反応とは、ビタミンA不足の肌に突然レチノールを補給することで肌が敏感に反応し、赤みや乾燥、皮むけ、かゆみ、ヒリヒリ感などの症状が現れることです。
A反応は肌がレチノールの刺激に慣れるまでの一時的なものなので、多くは使用を続けるうちに数週間程度で症状が落ち着きます。
※人によってA反応の有無や時期は異なります。
初めてレチノールを使用する場合やレチノール濃度の高い製品を使う場合は、低濃度のものから使い始め、少しずつ肌を慣らしていくことが重要です。状態を見ながら、問題がなければ徐々に使用量を増やしていきましょう。
A反応が心配な方は、パッチテストを事前におこなって肌の反応を確認することもおすすめです。
医師 高藤円香からのコメント
レチノールを使用し始めた際、中に赤み・乾燥・皮むけが出るのは、A反応(レチノイド反応)としてよく見られる一時的な肌の反応です。ただし、かゆみやヒリヒリ感が強く、使用を続けることで症状が悪化する場合は、単なるA反応ではなく、炎症や接触皮膚炎(接触した物質によっておこる皮膚炎、いわゆる「かぶれ」のこと)の可能性もあります。
気になる症状がある場合は、A反応だと自己判断せず、皮膚科を受診することをおすすめします。特に、水ぶくれ、じゅくじゅくした湿疹、激しい痛みを伴う場合、反応が1〜2週間以上続く、日常生活に支障が出るほどの不快感がある場合には、すぐに使用を中止し、皮膚科を受診してください。
妊娠中や授乳中のレチノール使用は避けることをおすすめします。特に内服においては、胎児に先天的な異常や奇形を引きおこすリスクがあるとされている為、使用を控えてください。
化粧品として皮膚に塗る程度であれば問題ないとの情報もありますが、胎児や乳児に影響がないという確証がなく、また、お肌が敏感になりやすい時期でもあるので、予期せぬトラブルに繋がる可能性があります。妊娠中や授乳中のスキンケアで不安な点があれば、医師や薬剤師に相談しましょう。
レチノールは光や空気に触れると分解しやすい成分です。そのため、保管方法に気をつけなければ、効果が薄れるおそれがあります。
以下のことに気を付けて保管しましょう。
レチノールはビタミンAの一種で、肌の健康を保つ働きをもつ成分です。体内ではつくられないため、日々の食事やサプリメントなど外から取り入れる必要があります。
レチノールは使用すると、
「肌のターンオーバーが促進されて、シミやニキビ跡、毛穴が目立たなくなる」
「コラーゲンの生成を助けて、肌の保湿力が上がる」
「皮脂分泌のバランスを整えて、毛穴の黒ずみやニキビを防止できる」
など、さまざまな効果が期待できる成分です。
一方で、A反応がおこる可能性があったり、レチノールを使用した肌が紫外線に敏感になりやすくなったりと、気をつけるべき点もあります。レチノールを日常に取り入れる際は、使用上の注意を押さえたうえで、正しく使うようにしましょう。
監修:日本皮膚科学会 専門医・日本色素細胞学会
高藤円香
2013年防衛医科大学校を卒業後、臨床研修を終了。その後、大阪大学医学部附属病院や自衛隊阪神病院で研修ののち、皮膚科専門医を取得。現在は、皮膚科医として地域の方々の一般診療をメインに、アトピー性皮膚炎や乾癬などの診療にあたっており、執筆・監修などにも力を入れている。
※この記事は、正しい情報発信を行うために、医師に監修を依頼しております。商品について医師が推薦を行うものではありません。
医師 高藤円香からのコメント
レチノールもトレチノインも、ビタミンA(レチノイド)誘導体の一種です。ただし、この2つでは、作用の強さと使用目的が異なります。
レチノールは、化粧品に配合可能な成分で、皮膚の内部で徐々にトレチノインに変換されて効果を発揮します。一方、トレチノインは医師の処方が必要な医薬品です。直接真皮に作用し、ターンオーバー促進やコラーゲン産生を強力に引き起こします。つまり、トレチノインの場合は、効果が強い一方、副作用管理が重要となるのです。