不知火菊は、熊本県不知火地方で民間伝承的に伝わってきた幻の植物です。
栽培をする農家では花びらを乾燥させ、煎じて飲まれています。
不知火地方の気候で育つ幻の菊
デコポンの間をぬってひっそりと
軽トラック1台がやっと通るほどの山道を進むと、眼前には地元特産のデコポンを栽培している段々畑が広がっていました。
不知火菊が植えられていたのは、そのデコポンの木の間。足場が悪く、大きな機械が入らない土地で、植え付けから収穫まですべて手作業で行われていました。
不知火菊の抱える問題
質の良い不知火菊は、不知火地方の自然や天候の中で育まれています。台風などの自然災害で傷がついてしまったり、虫がついたりしてしまうと、病気になり、収穫ができないこともあります。
また、不知火地方では、農家の方も高齢化による人手不足が続いており、デコポンの栽培で精一杯でした。加えて、農家の方たちが、自分たちで煎じて飲む分だけを育て、販売をすることがないため大量につくられることがありませんでした。
私たちはこの不知火菊の力を活かしたいと強く思いました。
そこで農家の方に、「私たちと一緒に不知火菊をもっとたくさん栽培をしていただけないか」とお願いをしました。
これまでにない申し出だと驚かれましたが、「自分たちがこれまで大切にしてきたものが役に立つのなら」と引き受けてくださいました。
すべてを手作業で
それから私たちは、研究の合間をぬって畑に足を運びました。1年をかけて育てられる不知火菊は、育つ間に、畑の養分をすべて吸い尽くしてしまうため、翌年同じ畑で育てることができません。
春に苗を植えに行きました。1年ごとに育てる畑を変えるため、
土を耕すところから始めます。
初めて耕運機を使った時には、段々畑になっていることで足場が悪く、慣れない機械に振り回され「全然腰がはいっとらん!」と怒られてしまいました。
夏は草むしりを炎天下の中、1日中行いました。
秋には、1株の直径が1mほどまで成長した不知火菊の花、茎、葉を大切に収穫しました。軽トラックいっぱいに積み込み、みんなで力を合わせ葉と花を分け、日の当たらない納屋の天井に吊るして乾燥させます。
私たちも1年の頑張りで収穫まで迎えることができ、喜びもひとしおでした。農家の方たちは、そこから花びらの部分だけを煎じて飲み、健康を保たれていました。