忙しくて寝不足が続いたり、睡眠が浅くて熟睡できなかったりと、睡眠に関してさまざまな悩みを抱えている方は多いでしょう。しかし、睡眠は健康維持のために欠かせないものだと理解しているものの、私たちは寝ないと心身にどのような影響があるのでしょうか。
この記事では、睡眠をとらないと人間はどうなるかについて解説します。睡眠不足の解消法もあわせて紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
寝ないとどのような影響がある?
健康維持に欠かせない睡眠ですが、寝ないとどのような影響があるのでしょうか。たとえば、忙しいからといって、1日寝ないで働いたり、3日寝ないで睡眠不足が続いたりすると、心身に悪影響を及ぼしかねません。以下では、睡眠不足による心身へのおもな影響を7つ紹介します。
- 日中の眠気や疲労感の増加
- 集中力や判断力の低下
- 不安定な感情
- 免疫機能の低下
- ホルモンバランスを乱す
- 生活習慣病のリスク上昇
- うつ病・精神疾患のリスク上昇
日中の眠気や疲労感の増加
睡眠不足が続くと、日中の強い眠気や慢性的な疲労感に襲われます。睡眠は、脳と体を休息させ、疲労を回復するための重要な時間です。十分な睡眠がとれないと、脳は休息と回復の機会を失い、眠気や疲労感が蓄積していきます。
また、睡眠不足は、覚醒を促進する神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンの分泌を妨げ、眠気を引きおこすアデノシンの蓄積を促進します。アデノシンは覚醒時間が長くなるほど脳内に蓄積し、眠気を引きおこします。睡眠不足が慢性化すると、眠気や疲労感によって日常生活に支障をきたす恐れがあるため注意が必要です。
集中力や判断力の低下
睡眠不足は、脳の前頭前野の機能を低下させる要因です。前頭前野は、集中力・注意力・判断力・問題解決能力などを司る重要な役割を担っています。十分な睡眠がとれないと認知機能が損なわれ、仕事や学習のパフォーマンスが低下してしまうのです。
また、判断力が下がることで適切な意思決定が難しくなるため、ミスや事故のリスクが増大しかねません。さらに、睡眠不足は記憶力にも悪影響を及ぼす可能性があり、物覚えが悪くなったり物忘れが激しくなったりします。
不安定な感情
睡眠不足は、感情をコントロールする脳の領域である大脳辺縁系の機能を低下させます。その結果、感情の不安定さが生じ、イライラや怒りっぽさ、不安感、抑うつ感などの感情が表面化しやすくなるのです。些細なことにも過剰に反応してしまったり、気分の浮き沈みが激しくなったりと、感情の調整が難しくなるでしょう。また、共感力の低下や対人関係の悪化にもつながる可能性があります。
免疫機能の低下
睡眠は免疫システムを正常に機能させるために不可欠です。睡眠中に体は免疫細胞を生成し、サイトカインと呼ばれる免疫機能を調整する物質を分泌します。しかし、睡眠不足はこの過程を妨げ、免疫機能を低下させてしまうのです。十分な睡眠がとれないと、ウイルスや細菌などの病原体に対する防御力が弱まります。
また、T細胞(免疫機能の司令塔)の生成や機能も抑制され、抵抗力が減少します。その結果、風邪や感染症にかかりやすくなり、症状も重くなりがちです。さらに、傷の治癒や病気からの回復にも時間がかかるようになります。
ホルモンバランスを乱す
睡眠は、体内のホルモン分泌を調整する重要な役割を果たしています。十分な睡眠がとれないと、成長ホルモンの分泌が減少し、細胞の修復や再生が滞るのです。成長ホルモンは、体の組織や器官の修復・再生に関わるほか、脂肪の分解や筋肉の合成も促進します。
睡眠不足によって成長ホルモンの分泌が減少すると、体の健康にさまざまな影響を及ぼします。たとえば、肌のターンオーバーが乱れ、シワやたるみ、ニキビなどの肌トラブルが増える可能性があるのです。
生活習慣病のリスク上昇
睡眠不足は、生活習慣病のリスクを高めると言われています。たとえば、睡眠不足によって食欲を刺激するホルモン(グレリン)の分泌が増加し、満腹感を抑えるホルモン(レプチン)の分泌が減少すると、過食や肥満につながる可能性があるのです。
また、睡眠不足は糖分を分解するホルモン(インスリン)の感受性を低下させ、血糖値の調節を困難にし、糖尿病のリスクを高める要因となります。さらに、睡眠不足はストレスホルモンを増加させ、血圧上昇や動脈硬化を促進し、心血管疾患のリスクを高めてしまうのです。加えて、慢性的な睡眠不足がガンのリスク上昇とも関連があることも示唆されています。
うつ病・精神疾患のリスク上昇
睡眠不足は、うつ病や不安障害などの精神疾患のリスクを高めることが知られています。十分な睡眠がとれないと、脳内の神経伝達物質のバランスが乱れ、感情を安定させるホルモン(セロトニンやドーパミンなど)の分泌が減少し、気分の落ち込みや不安感が増大するのです。
また、慢性的な睡眠不足はストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を増加させ、脳の海馬(かいば)や前頭前野などの部位に悪影響を及ぼします。これらの部位は、感情の調節に関与しており、機能低下によってうつ病や不安障害などの精神疾患のリスクが高まると言われているのです。
慢性的な睡眠不足による「睡眠負債」の特徴とは
睡眠負債とは、長期的な睡眠不足により蓄積された不足分のことです。適切な睡眠時間は6〜8時間が目安と言われていますが、日本では6時間未満の割合が男性37.5%、女性40.6%と多く、睡眠時間が足りていない状況です。睡眠負債が増大すると、日中の眠気や疲労感、集中力低下、感情の不安定さ、免疫力低下などを引きおこします。以下のチェックリストで当てはまっている項目が多い場合は、睡眠負債を抱えているかもしれません。
睡眠負債のチェックリスト
- 平日の睡眠時間が6時間未満である
- 週末に平日より1〜2時間長く眠る
- 日中に強い眠気・疲労を感じる
- 目覚めても疲れがとれず、スッキリしない
- 寝床に入ってもなかなか寝付けない
- 寝床に入って気を失うように眠る
- 夜中に何度も目が覚める
- 朝、目覚ましで起きるのが辛い
- イライラや感情の起伏が激しくなった
- 集中力や判断力の低下を感じる
- 風邪をひきやすくなった
睡眠負債の原因とは
睡眠負債のおもな原因は、現代社会の多忙さにあると考えられます。仕事や学業、娯楽などに多くの時間を割くあまり、十分な睡眠をとることが難しくなっているのです。特に、長時間通勤やスマートフォン・パソコンの普及による夜型の生活、仕事のストレス、不規則な交代勤務、睡眠に対する意識の低さなどが睡眠負債を引きおこす要因となっています。現代人の生活スタイルは、睡眠負債を抱えやすい状態になっていると言えるでしょう。
睡眠負債を解消するためのポイント
睡眠負債を解消するには、どのようなことを意識すると良いのでしょうか。以下では、睡眠負債を解消するためのポイントを4つ紹介します。
- 規則正しい睡眠習慣の確立
- 睡眠環境の整備
- 生活習慣の見直し
- 昼寝を取り入れる
規則正しい睡眠習慣の確立
睡眠負債を解消するには、規則正しい睡眠習慣を確立することが重要です。毎日決まった時間に就寝・起床し、週末も平日と同じ睡眠リズムを維持しましょう。睡眠リズムが整えば体内時計が安定し、睡眠の質の改善が期待できます。また、就寝前にはリラックスできる活動を取り入れ、心身を休ませることが大切です。ストレスを和らげ、スムーズに入眠できるようにしましょう。
睡眠環境の整備
快適な睡眠環境を整えることで、睡眠負債の解消につながります。具体的には、寝室は暗く静かに、適度な温度(16〜26度)を保ちましょう。明るさや騒音は睡眠を妨げ、体温調節を乱すので注意が必要です。また、体にあった快適なベッドや枕を使用することも大切です。そして寝室では、睡眠以外の活動を控え、脳が睡眠と寝室を結びつけられるようにしましょう。
生活習慣の見直し
生活習慣の見直しも、睡眠負債を解消するために欠かせません。たとえば、適度な運動を取り入れることで、ストレスが解消され睡眠の質の向上につながります。ただし、就寝前の激しい運動は脳の覚醒を促すため避けましょう。また、就寝前のカフェインやアルコールの摂取は、睡眠を妨げる可能性があるので控えることをおすすめします。
ほかにも、スマートフォンやパソコンの使用は、ブルーライトが睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌を抑制するため、就寝前は避けることが大切です。
昼寝を取り入れる
睡眠負債を解消するために、昼寝を上手に取り入れることが効果的です。ただし、夜の睡眠に影響しないよう注意する必要があります。昼寝は15〜30分程度の短い時間にとどめ、早めの時間帯(13〜15時)におこなうのが理想的です。長すぎる昼寝や夕方以降の昼寝は、夜の睡眠を妨げる可能性があります。適度な昼寝は、日中の眠気や疲労感を軽減し、集中力や作業効率を高める効果が期待できます。
睡眠は心身の健康を保つために欠かせない!
睡眠は、心身の健康を維持するために欠かせない重要な要素です。十分な睡眠をとることで心身の疲労がとれ、免疫力が高まります。しかし、現代社会では多忙な生活や不規則な生活習慣により、多くの方が慢性的な睡眠不足に陥っています。長期的な睡眠不足は、睡眠負債として蓄積し、心身の健康に深刻な影響を及ぼしかねません。
睡眠負債を解消し、健康的な生活を送るためには、規則正しい睡眠習慣の確立や快適な睡眠環境の整備、生活習慣の見直しが重要です。また、適度な昼寝を取り入れることもおすすめします。自分に合った睡眠習慣を見つけ、大切な睡眠を確保しましょう。
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