薬膳ってなに?体が喜ぶ「薬膳のきほん」をご紹介

薬膳ってなに?体が喜ぶ「薬膳のきほん」をご紹介

"健康や体に良い"や"美容に良い"とされる、良いイメージの『薬膳』。
一方で「漢方薬の味がしそう」「手間やお金がかかりそう」「難しい知識が必要なのでは」といったイメージもあると聞きます。

薬膳は基本が分かれば、美味しく、気軽に始められます。

「薬膳とはなんなのか?」
「健康のためにどのような取り入れ方ができるのか?」

初心者でも分かる『薬膳のきほん』をご紹介します。

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薬膳ってなに?

お皿に小分けされた薬膳

『薬膳』とは、簡単に言えば「体が喜ぶ食事」のことです。
体の不調があったとき、もしくは不調になる前に、「体に合った、体が求めている食事」を摂ることで、体の健康を整えます。

特別なものでは無く、多くの方が日常でおこなっている行動と同じような考えが薬膳の基本となる考え方です。

たとえば、多くの方は「なんだか体が冷えて風邪をひきそうだな」と感じたら、「今日はいつもより重ね着しよう」とか「お風呂にゆっくり浸かろう」と考えるのではないでしょうか。
このように人は日常で体に合った体が求めている行動を自然にしているのですが、薬膳の基本知識もこれに近い考えをもとにしています。

そのときの自分の体に合った食事を摂ることが『薬膳』というわけです。

薬膳の考え方

薬膳をとって朝日を浴びる女性

薬膳の基本知識には、中国で生まれ2000年以上の歴史を持つ医学の考え「中医学」が関わっています。

▼中医学の基本的な考え方

  • 人の体の内側と自然や環境全体とのバランスを大切にすること。
  • 現れた症状と原因から、体質に合わせた対応をすること。
  • 体質に合った方法で、病気にならないように予防すること。

中医学に基づく代表的な薬膳の考え方を3つ、ご紹介します。

薬膳の考え方1「陰と陽」

中国には、世の中にあるすべてのものは「陰」と「陽」でできているという考えがあり、体の状態もこの二つで表現します。

そして、そのどちらにも偏らず、バランスが良い状態を「健康」としています。
同時にどちらかに偏ってしまっている状態は、体の不調につながるという考えです。

「陽虚」の例
(「陰」に偏った状態)
「陰虚」の例
(「陽」に偏った状態)
•手足など体の冷えや、むくみが気になる。
•汗をかきやすい。
•腹痛や下痢をおこしやすい。
•顔色や舌の色の白さが気になる。
•手足や顔が、ほてりやすい。
•皮膚の乾燥が気になる。
•便秘がちであったり、尿が少なかったりする。
•のどがイガイガしたり、咳がよく出たりする。

また、食物にも陰と陽があり、温める性質は「陽」、冷やす性質は「陰」と考えられています。
「陰」の状態が気になる場合は「陽」の要素の食事を取り入れ、反対に「陽」が気になる場合は「陰」の食事を取り入れ調和させ、不調を改善し健康を維持するという考えです。

薬膳の考え方2「五行」

「五行」とは、"自然界は「木・火・土・金・水」の5種類の元素で作られ循環している"という、自然界と体を紐付けた考えです。

5つの元素にはそれぞれの特徴があります。また全ては相互関係にあり、バランスを保っています。

私たちの身近なもので例を挙げるなら、季節のつながりを感じる自然のようすや季節ごとの気温変化などです。

▼五行の季節と特徴

五行 季節 特徴
心のバランスを崩しやすい時季。
肝臓や目のトラブルも出やすい。
熱を持ち、汗をかく時季。
夏バテなど体の水分不足もおきやすい。
季節の
移り変わり
体の調子を崩しやすい時季。
疲れたり、消化不良になったりしやすい。
気温が下がり、空気が乾く時季。
血行不良や喉の乾燥がおきやすい。
体の冷えが気になる時季。
便秘や下痢、関節痛などがおきやすい。

時季によって異なる、五行の特徴を踏まえた食事を摂ることで、季節ごとのおこりやすい不調を未然に防ぎ、体を自然界に対応させていくと考えられています。

薬膳の5行の季節絵

薬膳の考え方3「五味」

「五味」とは、5種類の基本となる味を意味する、"五行"と深く紐付く薬膳の考えです。

薬膳の考えにおける味は「甘味、辛味、酸味、苦味、鹹味(かん味)」の5つからなっており、舌で感じる味だけでなく、それぞれ体に関わる機能で分類されています。

五行とのつながりと合わせてご紹介します。

五味と五行の関係 作用・機能
酸(さん)ー木 血液をきれいにする解毒作用がある。
肝臓や目に良いとされる。
苦(く)ー火 体の熱や水分を除去し調節する。
心臓や小腸に良いとされる。
甘(かん)ー土 筋肉の緊張を緩めたり血を補ったりする。滋養強壮の効果がある。
胃や口に良いとされる。
辛(しん)ー金 血の巡りを良くし、体を温める効果がある。
肺や鼻、大腸に良いとされる。
鹹(かん)※1ー水 固いものをほぐし、便通が良くなる。
腎臓や膀胱、耳に良いとされる。

※1 塩からい味

五味に「淡味(ほとんど味のないもの)」を加えて六味と言うこともあります。

そのほかに、食材の陰陽をさらに分けた「五性」、色に関わる「五色」という考えもあります。

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薬膳の取り入れかた

薬膳を取り入れた和食

薬膳を取り入れるために必要なのは、基本的な考え方と、自分の体への意識です。
自分の健康状態が分かれば、薬膳の考え方をもとに体のバランスを整えるための食事が摂れます。

しかし、いざ薬膳を取り入れようとしても「何から始めたら良いか分からない」「特別な食材が必要」と思う方も多いのではないでしょうか。

安心してください。
家庭でも気軽に、身近な食材を使って薬膳を取り入れられます。

取り入れやすい食材の紹介

「陰」と「陽」それぞれの体の状態に合う、身近な食材をご紹介します。

「陽」が気になる
※体を冷やす食材
「陰」が気になる
※体を温める食材
肉・魚介類 豚肉
たこ
かに
あさり
など
牛肉
鶏肉

えび
など
野菜 トマト
なす
ごぼう
キュウリ
しいたけ
たけのこ
など
にんじん
南瓜
ねぎ
にんにく
生姜
など
くだもの バナナ

いちご

など

ザクロ
みかん
さくらんぼ
など
飲み物 緑茶
豆乳
など
紅茶
など
その他 そば
のり
など
シナモン
くるみ
くり
など

ポイントは、自身の体調や体質と"反対"の要素を持つ食材を取り入れることです。
加えて、季節特有の病気や不調に関わる「五行」や、体の機能に紐付く「五味」も取り入れていきます。

五行は、季節に合わせた食材、いわゆる"旬"を取り入れる意識を。
たとえば「陽」が気になる方は、温かい春の季節にたけのこやあさりを取り入れるのも良いでしょう。
五味は、五行の季節と関連しているので、おもに季節の食材を取り入れながら体の不調に合わせて、バランスよく取り入れると良いです。

ほんの少しの意識で、身近な食材で薬膳を取り入れられます。

代表的な薬膳料理

食材の力を活かして作られている、代表的な薬膳料理をご紹介します。

  1. 薬膳鍋
  2. 薬膳カレー
  3. 薬膳スープ

薬膳鍋

薬膳鍋のイラスト

薬膳鍋のなかでも、日本では、中国の伝統的な鍋料理"火鍋"がよく知られています。

中央に仕切りがある鍋に、2種類のスープを入れ、肉や魚、野菜などと一緒に色々な種類の生薬やスパイスなどを加えて煮込みます。
健康や美の意識の高い方を中心に支持され、日本でブームともなった代表的な薬膳料理です。

薬膳鍋では、ナツメやクコの実などが使われているのをよく見かけますが、身近な食材でも作れます。
冷えが気になる方なら、にんにくや生姜など体を温める性質の食材を入れるのがおすすめです。

薬膳カレー

薬膳カレーのイラスト

薬膳カレーは「スパイス」と「食材」のそれぞれの持つ効果を活用し、その組み合わせでバランスを整えます。

おもに使われるスパイスは、クミンやカルダモン、シナモン、ターメリック(ウコン)など。
「五味」でいう"辛味"に該当するものが多くあります。
スパイスによって作用が強いものがあり、過剰摂取には注意が必要です。

身近な食材は、にんにくや生姜、鶏もも肉など、おもに体を温める食材を使用しています。
体を冷やす効果のあるトマトは、加熱することでその作用を中和させています。

薬膳スープ

薬膳に必要な体を温める野菜

薬膳スープは、身近な食材で手軽に作れます。

体が「陰」の状態のときに気になるのは"冷え"です。
にんじん、カボチャ、生姜など体を温める食材をおもに使うと良いでしょう。
また反対に「陽」の状態のときには、トマトなどの夏野菜を取り入れるのがおすすめです。

スープの種類や材料によって、幅広いレシピがあります。
朝食に取り入れる方も多い、初心者でも始めやすい薬膳料理です。


薬膳を取り入れることで、生活習慣の改善などが期待できます。
気軽に薬膳を取り入れて、体の健康を意識してみてはいかがでしょうか。

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