監修:日本皮膚科学会 専門医・日本色素細胞学会
高藤円香(たかふじ まどか)
2013年防衛医科大学校を卒業後、臨床研修を修了。その後、大阪大学医学部附属病院や自衛隊阪神病院で研修ののち、皮膚科専門医を取得。現在は、皮膚科医として地域の方々の一般診療をメインに、アトピー性皮膚炎や乾癬などの診療にあたっており、執筆・監修などにも力を入れている。
うるおいがあってメイクのりが良いきれいな肌は、あこがれであり目標でもあります。そもそもきれいな肌って、どんな肌のことを言うのでしょうか。きれいな肌の定義を知ったうえで、肌をきれいにする方法、逆にきれいな肌を保つためにやってはいけないことを確認し、美肌を護っていきましょう。
まずは、きれいな肌とはどんな肌なのか、具体的に理解しておきましょう。
きれいな肌とは、すこやかな肌のことを指しますが、一般的な印象としては、見た目にうるおいやハリ、透明感があり、触れたときにはやわらかくなめらかに感じるような肌のことを言います。誰もがあこがれる肌ですが、油断するとすぐに肌の調子が整わなくなるのが現実です。日頃のケアを正しくおこなうことできれいな肌の状態に近づけていきましょう。
肌をきれいにするためには、日頃のケアをていねいにおこなうことが大切です。ケアのときには以下の3つを意識しましょう。
これらの具体的なケアのポイントについて説明します。
私たちの肌には、毎日分泌される皮脂や汗、不要な角質、ファンデーションなどの化粧の汚れなどが付着しています。清潔な肌を保つためには、まずクレンジングと洗顔でしっかり汚れを落とすことが大切。洗顔のポイントは、こすらず、きめ細かいたっぷりの「泡」で優しく洗うことです。
洗顔後は、速やかに保湿ケアをして、そのうるおいを逃さないように気をつけましょう。
肌にうるおいを与える化粧水と、油分を補ってうるおいを保つ乳液はそれぞれに役割があります。
「化粧水はたっぷりつけるから乳液は使わない」
「ベタつくのがイヤだから乳液は乾燥が気になるところだけ」
などといった自己流のケアは肌トラブルの素です。化粧水や乳液の使用量が少ないと摩擦が生じ、肌に余計な負担を与え、うるおい不足で乾燥を招きます。肌が乾燥してしまうとバリア機能が衰え、肌トラブルにつながってしまいます。
乾燥が気になる部分には、コットンパックなどでうるおいを与えたあと、クリームで水分を逃さないように蓋をするなど念入りなケアを忘れずにおこないましょう。
紫外線は日焼けやシミ・そばかすだけではなく、乾燥やシワ、たるみなどさまざまな肌トラブルにつながります。肌トラブルの原因は加齢によるものが20%程度で、残りの80%が紫外線による「光老化」と言われています。季節や天気によって日射量は違いますが、紫外線は必ず降り注いでいますから、紫外線対策は1年を通して必要です。
部屋にいるときも窓から紫外線が降り注いできます。家にいるからと無防備でいると知らず知らずのうちに光老化を招いてしまうのです。
医師 高藤円香からのコメント
化粧品選びでは、紫外線対策を中心に、肌のバリア機能や、保湿力を高める成分を意識することが重要です。
まず、紫外線にはUVAとUVBの2種類があり、それぞれ肌に異なる影響を与えます。UVAはPA、UVBはSPFの表示を参考にしてください。また、紫外線による酸化ストレスを抑えるためには、抗酸化成分を含む化粧品がおすすめです。
また、紫外線によって弱った肌を守るには、保湿力の高い成分が欠かせません。セラミドやヒアルロン酸、コラーゲンといった成分は、肌の水分保持力を高め、バリア機能を強化します。ご自分にあったものを探してみましょう。
肌をきれいにするために日常生活ではどんなことを意識すれば良いのでしょうか。
睡眠が不足すると、肌のターンオーバーのサイクルが乱れるだけではなく、血行不良による肌のくすみも招いてしまいます。日中に受けた肌ダメージは、睡眠中に修復されますが、睡眠不足だと十分な回復はできません。また睡眠時間が足りていても、睡眠の質が低いと結果的には睡眠不足と同じ状態になります。
質の良い睡眠を取るために、寝る前は部屋の照明を暗めにして、リラックスしましょう。心が落ち着く音楽を聴いたり、軽いストレッチをしたりするのも効果的です。寝る前のアルコールは、眠りが浅くなり途中で目覚めてしまうことが増えてしまいます。お酒に頼る睡眠もやめたほうが良いでしょう。
きれいな肌を目指すために、栄養バランスが取れた食事を意識しましょう。1日3食、さまざまな栄養素をバランスよくとることが大切です。なかでも、肌をきれいにするために積極的に摂取したいビタミンは、ビタミンCとビタミンAです。
食事は満腹まで食べてしまうと胃腸に負担がかかり、肌荒れの原因につながることもありますので、腹八分目にしておきましょう。
摂取したい ビタミン |
効果 | 含まれているもの |
---|---|---|
ビタミンC | 肌の酸化を抑える | じゃがいも、カリフラワー、ブロッコリー、ゴーヤ、キウイ、いちごなど |
ビタミンA | すこやかな肌へとサポート | ニンジン、カボチャ、ホウレンソウ、トマト、みかん、マンゴーなど |
日々の生活の中で現代人は何かとストレスが溜まりがちです。そういったときは、お気に入りの音楽を聴く、映画を観るなど何かテンションの上がる行動を取ってみるのも良いでしょう。
また、軽い運動は血流を促し、肌に栄養を供給しやすくなります。ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳など、酸素を十分に取り込んでおこなう運動がおすすめです。運動する時間がなかなか確保できない場合は、通勤時に工夫してみるのも良いでしょう。たとえば、早く家を出て一つ手前の駅やバス停で降りて歩く、階段を使うといったことなら気軽に始められます。
部屋の環境は肌に良い状態でしょうか?夏や冬、冷房や暖房、ストーブなどを使っていると知らず知らずのうちに部屋が乾燥していることがあります。部屋の乾燥も肌にとっては大敵です。
加湿器を使ったり、濡れた洗濯物やタオルを干したりするなどして部屋を加湿しましょう。また、掃除をおろそかにしていると部屋にホコリが舞って肌に刺激を与えることがあります。部屋の掃除もこまめにおこないましょう。
紫外線は日焼けやシミ・そばかすだけではなく、乾燥やシワ、たるみなどさまざまな肌トラブルの原因となります。太陽が昇っている限り、紫外線対策は1年を通して必要です。
また、パソコンやスマートフォンの画面から出てくるブルーライトも浴び続けると目に悪いだけでなく、シミやシワにつながることもあります。ブルーライトがカットできるフィルムなどを使うと良いでしょう。
日頃のケアに加えて、次のようなケアを取り入れることで、より健やかな肌を保ちやすくなります。
パックやマッサージのタイミングは、どんなときでしょうか。肌が疲れた、酷使したといったときだけ特別なケアをする方が多いようです。しかし、肌に違和感を覚えてからのケアは回復までに、時間がかかってしまいます。肌が乾燥したと感じる前から、パックやマッサージを適度に取り入れ、早め早めのケアで肌にうるおいを与え続けましょう。
マスク生活が続いていたため、マスクの中の肌は緩みっぱなしの日々でした。マスクを取ったときにたるみがひどくなったと感じることはありませんか。完全にマスクを外す生活が戻ってくる前に、衰えた表情筋を取り戻しましょう。簡単にできるエクササイズをご紹介します。
表情筋を鍛えるエクササイズ | ||
---|---|---|
順序 | 口周りのたるみ解消 | 口角アップ |
1 | 顔の筋肉を意識しながら 口をタコのようにすぼめる |
口角を上げて笑顔をつくる |
2 | 口を「い」にして限界まで横に引っ張る | そのままキープする |
3 | 口を「お」にして限界まで縦に開ける | ゆるめる |
4 | ゆるめる | 元に戻す |
5 | 5回繰り返す | 5回繰り返す |
顔には、さまざまなツボがあります。顔のツボを押すことで顔の血流が良くなり、肌に必要な栄養素が行き届いたり、代謝が上がって老廃物を取り除いたり、自律神経の緊張が取れてリラックス効果があるもの、表情筋がほぐれるツボなどがあります。
きれいな肌につながる顔の「ツボ」 | |||
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名称 | 印堂(いんどう) | 太陽(たいよう) | 巨りょう(こりょう) |
ツボの位置 | 眉間の眉と眉のちょうど間くらいの場所 | 眉尻と目尻の中央からやや後ろの窪んだ所 | 両頬付近 |
期待できる 効果 |
ストレス解消 血流促進 |
目の周辺の血流促進 目のクマを解消 |
表情筋をほぐす |
ツボの押し方 | 親指の腹で揉むように押す | 人差し指で強く押す | 指の腹で上向きに揉みほぐす |
肌がきれいな人が「やっていないこと」を知り、意識することも「肌をきれいにする方法」の一つと言えるでしょう。
おもな「やっていないこと」として
などが挙げられます。
毎日基本的なスキンケアの流れを持っている方が多く、「毎日きちんとケアしているから大丈夫」と安心しきっていませんか。しかし、肌の状態は毎日違います。スキンケアをルーティン化するのではなく、毎日のケアをおこないながら自分の今日の肌を確認しましょう。乾燥が気になるときには念入りな保湿、肌のゴワつきが気になった日は念入りな洗顔や蒸しタオルを使ったパック、という風に毎日の肌の声を聴いてその日に合ったケアをすることがきれいな肌のキープにつながります。
スクラブ入りの洗顔、古い角層を一気に取り除くピーリングやはがすタイプのパックなど、肌に刺激が強すぎるケアは肌に負担がかかり、かえって肌を傷めてしまいケアとしては逆効果です。日頃から優しいケアを意識しましょう。
「痩せたいからサラダしか食べない」といった無理なダイエットを続けていると、タンパク質不足に陥ってしまいがちです。タンパク質は、肌や髪、爪など体をつくる材料となる栄養素ですが、ダイエットをすることでタンパク質が十分に摂取できていなければ、肌に必要な栄養が不足してしまいます。タンパク質は、肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などに多く含まれるので、毎食どれかは摂ることをおすすめします。食べたいものを我慢するストレスも肌にはよくありません。
「肌に良さそう」と雑誌やCM、口コミなどで収集した情報を鵜呑みにしていませんか?ほかの人が良いと言ったものが、自分にとって必ずしも良いとは限りません。噂よりも自分の肌に合う物をじっくり探して取り入れることが、肌をきれいにする近道です。
医師 高藤円香からのコメント
肌をきれいに保つためには、スキンケアと生活習慣の両方を整えることが不可欠です。肌にうるおいを与えるスキンケアは、外側からのアプローチ。肌のバリア機能を保ち、乾燥や刺激から肌を守ります。
一方、生活習慣は内側からのアプローチで、睡眠・食事・ストレス管理などが肌の修復力やホルモンバランスに影響を与えます。たとえば、睡眠不足でターンオーバーが乱れると、肌荒れやくすみの原因になりかねません。
また、栄養バランスの偏りは、肌細胞の修復に必要なたんぱく質やビタミン、ミネラルの不足を引き起こし、肌のハリや透明感を損ないます。つまり、スキンケアだけでは、肌の根本的な改善はできません。肌は内側からと外側からと、両面からの影響を受けているため、両方をバランスよく整えることが必要です。
肌悩みがあるときは、悩みを解消するためのケアが必要ですが、「ずっと悩みに出会わない肌」を目指すことが肌をきれいにする近道です。自分の肌と常に向き合って、肌が必要とするケアを適切なタイミングでおこないましょう。
監修:日本皮膚科学会 専門医・日本色素細胞学会
高藤円香(たかふじ まどか)
2013年防衛医科大学校を卒業後、臨床研修を修了。その後、大阪大学医学部附属病院や自衛隊阪神病院で研修ののち、皮膚科専門医を取得。現在は、皮膚科医として地域の方々の一般診療をメインに、アトピー性皮膚炎や乾癬などの診療にあたっており、執筆・監修などにも力を入れている。
※この記事は、正しい情報発信を行うために、医師に監修を依頼しております。商品について医師が推薦を行うものではありません。
医師 高藤円香からのコメント
ここでは、医学的に見た「きれいな肌」とは、どういう状態かを解説します。
肌のターンオーバーというのは、肌の新陳代謝を指します。顔における皮膚の入れ替わりは約28日です。表皮の細胞が約28日周期で入れ替わり、古い角質が自然に剥がれることで、新しい細胞が表面に出てきます。このターンオーバーが乱れると、くすみ・ざらつき・ニキビなどの原因になります。
バリア機能は角層の水分保持力が高く、紫外線・乾燥・摩擦などの外的刺激から肌を守る力があり、セラミドや天然保湿因子(NMF)が十分に存在することでうるおいを保ちます。バリア機能が保たれていれば、より肌荒れや炎症が起こりにくい状態を作ることができるでしょう。
肌フローラは、美肌菌とよばれる善玉菌が優勢な状態で、悪玉菌の繁殖を抑制しさまざまな疾患になりにくい状態を作り出します。そして、血行が良ければ、肌の細胞に酸素や栄養を十分に巡らせ、健康的な肌の色を維持したり、修復力を維持したりすることができます。