監修:内科/睡眠科
木村眞樹子(きむら まきこ)
東京女子医科大学医学部卒業後、東京女子医科大学病院循環器内科入局。東京女子医科大学病院、および関連病院で内科、循環器科、睡眠科としての診療を経て、現在はファミリークリニック蒲田にて訪問診療などを行っている。また、嘱託産業医として複数企業の健康経営にも携わるほか、記事の執筆や監修にも携わっている。
眠れないまま朝になってしまったとき、どうしたら良いものかと頭を抱えてしまいますよね。コンディションが悪い中、仕事に行かなければならない方も少なくないでしょう。眠れないのには原因があるため、理由がわかると改善のヒントが見つかるかもしれません。
本記事では、眠れないときに考えられる原因を押さえたうえで、眠れないまま朝になったときの対処法や眠りを良くするためにできることを解説します。睡眠に悩みを抱えている方はぜひ参考にしてください。
眠れないまま朝になってしまう原因は、次のようなものが考えられます。
精神的なストレスや疲れを感じているときは、寝付きが悪くなったり中途覚醒してしまったりします。精神的なストレスは、催眠作用のある「メラトニン」の分泌を減少させます。そのため、眠れないまま朝を迎えてしまうことがあるのです。
寝室の温度や湿度、寝具が合っていないなど不適切な睡眠環境のときも、眠れない要因になります。不適切な睡眠環境は横になっている間も体に負担がかかってしまうため、入眠しにくかったり眠りが浅くなってしまったりします。心地良い眠りのためには、自分に合った寝室環境が必要です。
寝る前にスマートフォンやテレビ、パソコンを見てしまうと、眠りにつきにくくなります。強い光を受けることで脳が昼間だと錯覚し、覚醒してしまうためです。布団に入ってからスマートフォンを見るクセがある方は、注意が必要です。
カフェインやアルコールも不眠の原因になります。カフェインは交感神経を刺激して脳を興奮状態にするため、眠りから遠ざかってしまいます。アルコールは適度な量であれば問題ありませんが、飲みすぎは眠りの質を下げてしまう原因に。どちらも飲むタイミングや量に気を付ける必要があります。
女性特有の眠れなくなる原因として、女性ホルモンの乱れがあります。女性ホルモンは体温のリズムを崩すため、入眠に向けた体温の変化もズレてしまいます。よって、夜に眠れなくなったり、日中眠たくなったりするのです。
毎日眠れないまま朝になる場合は、睡眠障害の可能性もあります。睡眠障害にはおもに次のような6つの種類があります。
| 睡眠障害の種類 | 詳細 |
|---|---|
| 不眠障害 | 眠りにくくなったり途中で起きてしまったりする状態 |
| 睡眠呼吸障害 | いびきで呼吸が少なくなったり、止まったりする状態 |
| 過眠症 | 十分な睡眠を取っていても、日中に強い眠気を感じる状態 |
| 概日リズム睡眠障害 | 日中に眠気があったり、夜に覚醒してしまったりする状態 |
| 睡眠時随伴症 | 寝言や悪夢、夜驚などがおこる状態 |
| 睡眠関連運動障害 | 脚がピクついたりむずむずしたりする、歯ぎしりをする状態 |
このような症状が週に3日以上、1カ月以上続いている場合は、医療機関の受診をおすすめします。
眠れないまま朝になったときの対処法を4つご紹介します。
眠たさが残っているときは、その日限りの対処にはなりますが、リズムを整えるために敢えてカフェインを摂取するのも一案です。カフェインには眠気を覚ます作用があります。コーヒーや紅茶、緑茶など手軽に購入できるものに含まれているので、朝の目覚めを手助けしてくれます。
ただ、夕方以降に摂取すると、その夜の睡眠に支障をきたします。また、摂りすぎも動悸や吐き気などの体調不良につながるので、摂取する量には注意しましょう。
覚醒効果のあるツボを押すことも有効です。左右の目頭の中間にある「山根(さんこん)」は、押すと眠気がなくなるとされています。また、首にある髪の生え際周辺の「天柱(てんちゅう)」は、脳の血流を増やし、頭をスッキリさせるとされています。痛気持ち良いくらいの強さで押してみてください。
1日を乗り切るために、エネルギーとなる栄養も摂りましょう。具体的には、ブドウ糖やビタミンB1を摂るのがおすすめです。ブドウ糖は米やパン、イモ類に多く、ビタミンB1は豚肉や鰹節、ゴマなどに含まれています。食事で取り入れることが難しい場合は、栄養補助食品などを活用するのも一つの方法です。
軽くストレッチをすることも、眠気覚ましには有効です。腕を組んで上に伸びたり、脚を伸ばしたりと、できる範囲で少し体を動かしてみましょう。
医師 木村眞樹子からのコメント
夜眠れないときや、夜中に目が覚めた際に時計をみるのは禁物です。時計を見ることで頭が起きてしまうので、就寝時間中は時間を気にせずリラックスして過ごしてみてください。
また、寝付くまでに時間がかかってしまった場合や、夜眠れなかった場合も、毎日同じ時間に起床することを心がけてください。毎朝、同じ時間に起床して日光を浴びることで、体内時計をリセットすることができます。そして、起床から14時間くらい経つと、体は寝るための準備を始めます。
夜眠れなかったからといって遅くまで寝てしまうと、体内時計がくるい、体が睡眠の準備に入る時間が後ろにずれてしまいます。そうなると、早めに布団に入ってもなかなか寝付けません。眠れない焦りから、ますます眠れなくなってしまうこともあるため、寝床にいる時間をおおよそ6〜7時間に設定し睡眠のリズムを作ってみてください。
もし、どうしても日中眠い場合には、14時くらいまでに20分程度の仮眠をとるのがおすすめです。仮眠が遅すぎたり長すぎたりすると、夜間の就寝に響くので要注意。短い仮眠であれば、夜の睡眠に響くことなく、日中の眠気を改善できるでしょう。
その日限りの対処をしても、毎日のように眠れない状態が続くのはつらいものです。ここでは、眠りを良くするためにできることを5つ解説します。どれも難しいものではないので、できることから取り入れてみてください。
まず朝起きたら、すぐに朝日を浴びましょう。眠れないまま朝になっているのは、体内時計がズレている状態です。朝に太陽の光を浴びると体内時計をリセットするのに役立ちますので、その日の夜に眠気がおこりやすくなります。
入浴するタイミングを寝る前にすることも有効です。体温を上げることで眠気がおこりやすくなります。寝る1〜2時間前にぬるま湯に浸かり、じんわりと体を温めましょう。
軽い運動をすると、睡眠の質の向上につながります。軽めのストレッチやウォーキング、ジョギングなどを継続的におこないましょう。
激しい運動や寝る直前の運動は脳を興奮状態にさせ、かえって睡眠を邪魔してしまいます。寝る3時間くらい前までに運動を完了させるのがおすすめです。
心地良い睡眠を取るためには、睡眠環境を整えることも重要です。室内を快適と感じる温度、湿度に調節しましょう。マットレスも人によって適切な固さは異なりますので、自分に合ったものを選択してください。
自分がリラックスできる時間を意識的に作ることもおすすめです。緊張状態が続いていると、なかなか寝付けません。趣味の時間を取ってストレスを発散したり、瞑想して何も考えない状態を作ったりすると、頭がスッキリして眠りやすくなります。
眠れないまま朝になっても、仕事に行かなければならない方は少なくありません。休みを取って昼間に睡眠を取るのが理想ですが、なかなかそうはいかないもの。ここでは、眠れないまま朝になった日に仕事をする際のポイントを解説します。
睡眠が十分に取れていないときは、集中力や記憶力、注意力が低下した状態です。そのままだと、仕事の効率までも低下しかねません。そのため、仕事に優先順位を付け、重要度の高いものからおこなうと良いでしょう。急ぎのものから取り組み、そうではないものは次の日に持ち越すことも考えてみてください。
睡眠不足のまま運転すると、居眠りしかねません。また、集中力や注意力も低下しているため、交通事故をおこしてしまうリスクも高まります。可能なら車の運転は避けて、公共交通機関を利用しましょう。
どうしても運転しなければいけない場合は、カフェインを摂取する、大きな声を出して眠気を覚ます、こまめに休憩をはさむなど居眠りしないように対策が必要です。
可能であれば、お昼休みや休憩時間に10〜15分程度の仮眠を取りましょう。短時間の睡眠でも脳の疲れが取れて、頭がスッキリする効果が期待できます。夕方以降の仮眠は夜の睡眠に支障をきたしかねないため、14時までに取るのが理想です。
眠れないまま朝になる原因は、精神的なストレスやカフェインの作用、不適切な睡眠環境などさまざまです。原因を特定することで対策できるため、まずはご自身の不眠がどこから来ているものなのか分析してみましょう。そして、眠りを良くするために朝日を浴びる、寝る前に入浴するなど対策を続けてみてください。
監修:内科/睡眠科
木村眞樹子(きむら まきこ)
東京女子医科大学医学部卒業後、東京女子医科大学病院循環器内科入局。東京女子医科大学病院、および関連病院で内科、循環器科、睡眠科としての診療を経て、現在はファミリークリニック蒲田にて訪問診療などを行っている。また、嘱託産業医として複数企業の健康経営にも携わるほか、記事の執筆や監修にも携わっている。
※この記事は、正しい情報発信を行うために、医師に監修を依頼しております。商品について医師が推薦を行うものではありません。
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医師 木村眞樹子からのコメント
眠れないまま朝になってしまい「眠れないことが心配で、また眠れなくなってしまう」ということを繰り返している方もいるかもしれません。眠れない原因はさまざまですが、まずは生活習慣を見直してみてください。
特に、この記事を寝床で読んでいる方は要注意。体は寝るための準備として「メラトニン」を分泌しますが、スマホなどのデジタル画面から発せられるブルーライトは、脳を昼間と勘違いさせてしまい、メラトニンを抑制します。すると、入眠を遅らせたり、睡眠の質を妨げたりしかねません。
良質な睡眠を得るために、睡眠環境を整備しましょう。そして、寝る直前の入浴を避け、ブルーライトやカフェイン、寝る前の飲酒などに気をつけてみてください。
また、眠れないときには寝床から離れてみてください。「頑張って」寝ようとする行為により、ますます目がさえてしまうこともあるため、眠れないときには、一旦布団から離れてリラックスして過ごすこともおすすめです。
睡眠の習慣改善には、2週間〜1カ月程度かかることが一般的です。1日やってみて眠れなかったからと諦めず、少しずつ睡眠のリズムを整えてみてください。