監修:日本皮膚科学会 専門医・日本色素細胞学会
高藤円香(たかふじ まどか)
2013年防衛医科大学校を卒業後、臨床研修を修了。その後、大阪大学医学部附属病院や自衛隊阪神病院で研修ののち、皮膚科専門医を取得。現在は、皮膚科医として地域の方々の一般診療をメインに、アトピー性皮膚炎や乾癬などの診療にあたっており、執筆・監修などにも力を入れている。
「肌のツヤはあるけど赤みやヒリつきが気になる」「ツヤがあるわりには肌が乾燥している感じがする」思い当たる節がある方は、ビニール肌になっているかもしれません。ビニール肌は乾燥や刺激に弱い状態なので、放っておくと他の肌トラブルにつながるリスクがあります。
この記事では、ビニール肌の見分け方やおもな原因、ビニール肌かもしれないと感じたときの対処法について詳しく解説します。
ビニール肌とは薄いビニールを肌に張り付けたかのように、表面がツルツルとした状態の肌のことを指します。見た目はツヤがあり健康的な肌のようですが、実際には肌のキメが失われた状態です。表面がツルツルしているのは、肌本来の凸凹が失われているためであり、健康な状態とは言えません。ツヤから健康的な肌と誤解されやすく、見た目で判断しづらい点に注意が必要です。
ビニール肌の見分け方として8つのチェックリストを用意しました。当てはまる項目がある場合は、ビニール肌かもしれません。
選択された数:0個
ビニール肌になる原因は「角層が薄くなっていること」です。角層が薄くなって肌のバリア機能と水分保持機能が低下すると、乾燥や刺激に弱くなり、肌トラブルがおこりやすい状態になります。角層が薄くなるおもな原因を3つ解説します。
角質ケアは、古い角質を除去することで毛穴の詰まりや肌のごわつきを改善し、肌のターンオーバーを整えることを目的としたスキンケアの一つです。スクラブやピーリング、毛穴パックなどが代表的な角質ケアアイテムとして知られています。
不要な角質を取り除くことは肌を清潔に保つために重要ですが、本来は自然に剥がれ落ちていくものであり、そこに加えて過度な角質ケアやピーリング行うと、必要以上に除去してしまうことになりかねません。その結果、肌のバリア機能が低下して外部刺激に対して脆弱になり、乾燥や肌アレを引きおこすリスクが高まってしまうのです。
レチノールはビタミンAの一種として知られ、肌のターンオーバーの促進や古い角質を除去する効果を持つ成分です。日本では0.04%までの配合が認められていますが、海外製品などではさらに高い濃度のレチノール製品も販売されています。高濃度のものを継続使用すると、肌の新陳代謝が過度に促進されてしまうことがあり、本来必要な角質まで取り除かれ、ビニール肌になる可能性が高まります。
この記事を読んでいる人におすすめの記事
洗顔やクレンジングをする際、つい気になって無意識のうちに力が入っていませんか。肌をゴシゴシとこすると角層に大きなダメージを与えます。強い摩擦を伴う行為を繰り返すことで必要な角質まで失われ、ビニール肌となってしまうのです。
また、洗浄力の強いクレンジング剤やスクラブが配合された洗顔料を頻繁に使用すると、必要な皮脂や角質までも取り除いてしまい、肌を弱らせることにつながります。
医師 高藤円香からのコメント
「肌に負担をかけずに洗顔を行う」ためには、泡立てた洗顔料で優しく、直接肌をこすらずに、指の腹で洗顔する必要があります。また、クレンジングにおいても、肌をこすらず、指をすべらせるようにして化粧を落としてください。
使っている洗顔料やクレンジング剤に、スクラブが含まれていたり、洗浄力が強過ぎたりしていませんか?
落としにくいウォータープルーフの日焼け止めや、マスカラなどの化粧品を毎日使用している場合、それらを落とす際に、強い摩擦が必要になっている場合もあります。
今一度、ご自身の洗顔および、クレンジングの仕方について、毎日のケアにおいて肌に負担がかかっていないか、肌ケアの方法を見直してみましょう。
ここでは「ビニール肌かもしれない」「ビニール肌の治し方はあるの?」と感じている方に向けて、心がけたい対処法について解説します。
ビニール肌が疑われるときは、ピーリングやスクラブ、毛穴パックなど角質ケアを控えることが重要です。ビニール肌の状態では既に角層が薄くなってバリア機能が低下しているため、さらに角質をはがすようなケアは避ける必要があります。クレンジングと洗顔のみのシンプルなスキンケアに切り替えることで、肌を休ませましょう。
すこやかな肌を保つためには泡洗顔を取り入れ、肌に余分な摩擦を与えないようていねいに洗顔することが大切です。また使用しているスキンケアアイテムを見直し、肌への刺激が少ないものを選びましょう。
化粧水や乳液を使用する際は、ハンドプレスでやさしくなじませることで、肌への負担を最小限に抑えられます。
ビニール肌は乾燥しやすく、バリア機能の低下が見られるため、保湿を徹底しましょう。セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲンなど保湿成分を含むスキンケアアイテムを使用し、小まめな保湿を心がけて、肌のうるおいを保つことが大切です。
ビニール肌は紫外線の影響を受けやすいため、確実な紫外線対策が欠かせません。肌への負担を考慮し、クレンジング不要の肌にやさしい日焼け止めを選ぶことが重要です。また、炎天下で過ごす際にはウォータープルーフタイプの日焼け止めを使用し、化粧崩れした場合は小まめに塗り直すようにしましょう。帽子や日傘を活用して直接的な紫外線から肌を守ることも、効果的な対策の一つです。
ビニール肌の状態にあるときは、次のことに注意し、体の内側から肌質改善を目指すことも大切です。
睡眠中は細胞の修復をおこなう成長ホルモンが分泌されます。特に入眠後3〜4時間後に分泌されるため、途中で目覚めてしまわないよう質の高い睡眠をとることが重要です。部屋の温度調整や自分に合った寝具などで寝室の環境を整えましょう。
また漢方の観点では、体の休息や再生を司るエネルギーである「陰」が眠りを深めるために欠かせないとされています。陰を補うためには、毎日決まった時間に就寝・起床することでリズムを整えたり、睡眠前に深呼吸や瞑想、軽いストレッチをして心を落ち着けましょう。
インナーケアにおいては、バランスの良い食事がとても大切です。和食は主食、主菜、副菜、汁物から成り立っており、理想的な栄養バランスを備えています。主食にはご飯や麺類、主菜には肉や魚などのタンパク質、そして副菜には野菜などのビタミンや食物繊維が含まれます。
タンパク質は肌をつくるために欠かせない栄養素です。ビタミンは肌の光老化を防ぐ抗酸化作用があり、食物繊維は腸内環境を整え、肌の調子も良くする働きがあります。各栄養素を多く含む食材を表にまとめました。
| 栄養素 | おもな食材 | |
|---|---|---|
| タンパク質 | 鶏ささみ、鶏ムネ、卵、納豆、チーズ など | |
| ビタミン | ビタミンA | うなぎ、レバー、卵、にんじん、ほうれん草 など |
| ビタミンC | パプリカ、キャベツ、ブロッコリー、ミニトマト、 キウイフルーツ など |
|
| ビタミンE | アーモンド、アボカド、大豆、卵、かぼちゃ など | |
| ビタミンB2 | レバー、焼きのり、チーズ、卵、アーモンド など | |
| ビタミンB6 | かつお、ごまさば、ししとう、ブロッコリー、玄米 など | |
| 食物繊維 | 大豆、さつまいも、ごぼう、キャベツ、バナナ など | |
また、漢方では「五味(甘・酸・辛・苦・鹹/しお)」のバランスが体調管理において重要であり、偏った味の摂取は体調不良につながると考えられています。たとえば、主菜を酢豚(甘・酸)にした場合は、副菜でゴーヤの炒め物(苦)、汁物で味噌汁(鹹)のように献立全体でバランスを整えると良いでしょう。
漢方においては、体を動かす原動力である「気」が滞ると疲れや健康の乱れにつながるとされています。軽い運動は「気」の流れを促し、栄養素や水分を運びやすくなるため、ウォーキングやヨガなどのゆったりした運動、軽いジョギングなどの有酸素運動をおこないましょう。時間が取れない場合は、「階段を使う」「1駅分歩く」など、日常で取り入れられる運動に取り組んでみてください。
医師 高藤円香からのコメント
現代の世の中では、生活の中で「歩く必要性」が減っており、大人も子どもも日常的に運動不足になりがちです。「毎日の生活に追われていると、運動の時間が取れない」ということも共感できます。
そこで私は、意識的にエレベーターやエスカレーターを使用しないようにしています。そして、靴を正しくはき、一歩一歩、歩く姿勢に気を付け、正しい歩幅で歩くことを心掛けています。
このほか、車の使用をなるべく控え、電車やバスなどの公共交通機関を使用するなど、日常の中で運動につながる行動を取り入れるよう意識してきました。
時間に追われ、なかなか実践が難しいこともありますが、毎日の継続が少しずつだったとしても、長期的に見ると、かなり効果的になってきます。ぜひみなさんも、心掛けてみてください。
ビニール肌は見た目はツヤがあり美しく見えるものの、実際には肌のバリア機能が低下し、乾燥や刺激に弱くなっている状態です。すこやかな状態に近づけるために、やさしいスキンケアと保湿を徹底し、睡眠や食事などで内側からもケアしましょう。
監修:日本皮膚科学会 専門医・日本色素細胞学会
高藤円香(たかふじ まどか)
2013年防衛医科大学校を卒業後、臨床研修を修了。その後、大阪大学医学部附属病院や自衛隊阪神病院で研修ののち、皮膚科専門医を取得。現在は、皮膚科医として地域の方々の一般診療をメインに、アトピー性皮膚炎や乾癬などの診療にあたっており、執筆・監修などにも力を入れている。
※この記事は、正しい情報発信を行うために、医師に監修を依頼しております。商品について医師が推薦を行うものではありません。
医師 高藤円香からのコメント
健康的な肌は、皮膚の表面を拡大して見たときに、皮溝(ひこう)という溝と、皮丘(ひきゅう)という盛り上がりで、規則正しく三角形の形に並んでいます。これは肌の凸凹(キメ)とも呼ばれ、この三角形がふんわりと立体的に規則正しく並ぶことで光を乱反射し、透明感を生み出すことができます。
医学的にビニール肌と呼ばれる状態があるわけではありませんが、この肌の凸凹(キメ)が失われた状態が、そう呼ばれているようです。
本当に凸凹(キメ)が失われているかは、拡大して見なければわかりませんが、凸凹(キメ)が失われると、不自然なつるつる感が生まれ、人工的な光沢を伴うようになることから、ビニール肌と呼ばれています。