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「お勝手口」図書室

弊社会長・西川通子が、ひとりの女性としての胸の内を綴ったコラムです。
家事の合間にお勝手口で、お馴染みのご近所と、ちょっと立ち話、世間話。
そんな気楽な気持ちでお読みください。

平成24年 1月号

吉報

 初めて会ったとき彼女は高校生でした。私は地元熊本を盛り上げようと、社名を冠した女子プロゴルフ大会を主催しておりました。彼女はまだアマチュアだったので、主催者推薦というかたちで、その大会に出場していました。大会が終わった後、彼女が走り寄ってきて、頭を下げながら言いました。「素晴らしい試合に出していただいてありがとうございました!」。そのときの初々しい印象は、二十年経った今も変わりません。

彼女の名は不動裕理さん。賞金女王連続6回など数々の偉業を成し遂げ、先ごろ熊本県の県民栄誉賞を授かったことは、ニュース等を通じご存じの方も多い事と思います。

初対面で一目ぼれした私は、年に数度、彼女と会うときを楽しみにしておりました。師匠に聞いてもゴルフ関係者に聞いても、彼女の礼儀正しさ、心根の優しさは折り紙つき。この若さでここまでできるなんて…私もそんな想いを、会うたび感じてまいりました。

八年前、彼女と出会うきっかけとなったゴルフ大会の主催を降りました。社長業を長男に託すと決めたとき、私の色まで受け継ぐ必要はない…そう考えてのことでした。

しかし、心血を注いで十数回つづけた大会は、熊本の春の風物詩と呼ばれるまでに育っていました。選手たちを社員食堂に招き手料理を振る舞う夕べでできた、たくさんの縁が今年限りと思うと、一抹ではすまぬ寂しさが胸を離れませんでした。

そんな想いを抱きながら迎えた大会で、彼女は見事優勝を飾りました。 最終日、まだアマチュアだった横峯さくら選手を抑え、激戦をもぎ取ったのです。当日はあいにくの小雨つづきでしたが、彼女の勝利を知った瞬間、胸の寂しさが晴れ、眩い光が射し込んできたように感じたことを今も忘れることはできません。厳しいプロがしのぎを削る試合。甘っちょろい感傷など差しはさむことは、できるはずもありませぬ。それでも私にとってこの優勝は、彼女が贈ってくれた、なににも勝るはなむけとしか思えませんでした。

少し前、金の箔をあしらった封筒が一通、私のもとに届きました。一目で結婚式のご招待状とわかりましたが、そこに不動さんの名を見つけて、いささかならずびっくり。なんでも、彼女に惚れ込んだ男性に恋われ恋われて…という次第だそう。それを知って今度は、我が意を得たり、というか。まるで自分の娘が良縁を授かったような、うれしい、うれしい、うれしい気持ちでいっぱいになりました。

東北の大地震、津波にはじまり、世界的にも不穏な出来事が多かった昨年。禍の爪痕は未だ癒えず、暗雲もそこここにかかっておりますが、それでも巡ってきた新年を良い年にと願い努めるのが人の道。しかし、気が萎えていては前を向いて歩けません。

そんな中舞い込んできた不動さんの吉報は、一筋縄ではいかぬであろう新年に向かう勇気となって、この胸に宿りました。私ごとの最たる話をして恐縮ですが、小さくても、一つでも喜びを得る、喜びを分かつことで、幸せな年にしていきたい。そんな想いから、お話させていただきました。 本年もなにとぞよろしくお願い申し上げます。

西川 通子

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