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「お勝手口」図書室
弊社会長・西川通子が、ひとりの女性としての胸の内を綴ったコラムです。
家事の合間にお勝手口で、お馴染みのご近所と、ちょっと立ち話、世間話。
そんな気楽な気持ちでお読みください。
2001年 夏号
出会い
以前にもお話いたしましたが。私は再春館製薬所と別に、三十年ほど前から警備会社を営んでおります。元は小さな会社でございましたが、近年は地元の皆様の信を得て、県内では、全国区の警備会社に伍するまでに成長させていただきました。賜ったご愛顧になにかお返しをと考え、昨年よりクロスカントリー大会を催し、地元の皆様にご参加いただいております。去る五月、その第二回大会を開催いたしました。
会場には十七万坪もある、大きな大きなお花畑を使いました。その名は再春館パーク!と申し上げると、まるで自社所有のようですが。ちがうのです。その土地は阿蘇郡西原村の地所。自然の色濃い野山に一目惚れした私が、頼み込んで拝借したものでございます。豊かに茂る草木を残し、枯野に花を育て、ここを、誰もが憩える地にしたい。そう思ったら、いてもたってもいられませんでした。しかし、お金をかけず手づくりが身上。なんとか安価でと考えた末に、社員全員参加の体制を敷いて、丹を重ねてまいりました。
そのかいあって、当日の会場は一面のお花畑状態。そこに私はもうひとつ、大輪の名花を添えました。シドニー五輪女子マラソンの金メダリスト、高橋尚子選手です。彼女に来ていただきたい。そう思ったのには理由がございました。
人の一生には生き方を決する「きっかけ」があるもの。素晴らしい出会いは素質を芽吹かせ、未来を育む夢となります。参加者の中にいる、かけっこ好きな小学生、陸上選手を目指す中高生。この子たちを高橋選手といっしょに走らせてあげたい。いつか自分も高橋選手のように・・・そんな夢を抱くきっかけを与えてあげたい。それが企業人として、一人の大人として、今すべきことではないか。もちろん、全員が一流に育つとは限りません。が、それでいいのです。大切なのは高橋選手を通じて、自分の夢と出会うこと。私はそう考えておりました。
さて。第一回大会では、私も小学生の女の子たちと一緒に二キロを走りました。一応、完走はしたのですが。トップからは、なんと十分も遅れ。あげく後にスタートした男の子たちにも次々追い越される始末。追い越しながら「社長さんがんばって!」と励ましてくれる子らに、微笑のつもりの苦笑で応えつつ、なんとかゴールにたどりつくという有様でした。
それでも棄権せぬだけまし。なぜなら今年は新工場の庭づくりに加え、再春館パークにも心血を注いだおかげで、腰が立たなくなり一週間入院。走るどころか、歩いての参加もできず終わったのですから。
そのような次第で。当日は、高橋選手と走る子供たちの笑顔にうれしさを感じる反面、ちょっぴり悔しい気持ちもいたしました。
だって、あの高橋選手と走れるなんて!