「お勝手口」図書室

弊社会長・西川通子が、ひとりの女性としての胸の内を綴ったコラムです。
家事の合間にお勝手口で、お馴染みのご近所と、ちょっと立ち話、世間話。
そんな気楽な気持ちでお読みください。

平成27年 12月・1月合併号

進化

「ドモホルンリンクルをご愛用いただきまして誠にありがとうございます。これからも、よろしくお願いいたします」。

お勝手口に向かうときはいつも、そんな想いを胸にしているのですが。今日は、改めて申し上げるような気持ちで書き、目に留まりやすい最初に置かせていただきました。

すでにご承知のことと存じますが。先ごろ、4年をかけて磨き進化させたドモホルンリンクル基本4点のお披露目をいたしました。つくりに携わった社員たちが言うに、今回の進化は「生まれかわった」と言いたくなるほど画期的とか。しかし、そう思っても声高には言わず、進化という言葉にこだわりつづけるのには理由がございます。

その昔、ドモホルンリンクルをこの先どうしていこうかと考えたことがございました。化粧品の世界を見回してみると、派手な花火大会のように、四方から新手の品が打ち上げられては消えを繰り返しておりました。煌びやかな光景を見るのは、それなりに楽しかったのですが。自分も打ち上げる側にまわりたい…とは決して思いませんでした。

ドモホルンリンクルは漢方に学び産んだもの。漢方は古典でありながら時を超え今も人を救いつづけています。私はドモホルンリンクルを、漢方のような息長い命を持つものにしたいと願っていました。もう一つ。お客様とのお付き合いを、パッと咲き散るものにしたくありませんでした。ドモホルンリンクルを通した出会いを今生の縁と感じ、末永くと思い思っていただける間柄になりたいとも強く願っていたのです。

二つの願いを重ねたところに見えたのは「生涯の伴侶」という言葉でした。あなたと連れ添って幸せだった。そう思っていただくためには、本質を変えず、求められるものにより良く応えられるよう、ドモホルンリンクルを磨きつづけなければならない――それは私の、そして再春館製薬所を担う者すべての宿命だと今も固く信じております。

まるで陸上の百メートル競走のよう、と思うことがあります。同じ距離を駆けて、もう百分の一、千分の一秒と記録を縮めていく努力は、積み重ねるほど並ならぬ重さ辛さを増していきます。私はドモホルンリンクルとともに、同じような挑戦をつづけてきたと思っております。ドモホルンリンクルのままで、ドモホルンリンクルを超えていく。それは、生まれかわりと言っても別物に成り変わることでなく、もうこれ以上は…と挫けそうな心を励まし、百分の一でも高く、千分の一でも深くと、進化させつづけることでしか成し得ないことなのです。

新しい基本4点が、果たしてそのような進化を遂げているか。思うところはございますが、確たるか否やの断は、お客様皆様に委ねさせていただきます。

まずは期待が浮かびます。すぐに不安も訪れます。定まらぬ胸の内に戸惑いながら、これが本心と申し上げられる言葉を探したあげく、これしか見つけられませんでした。

「ドモホルンリンクルをご愛用いただきまして誠にありがとうございます。これからも、よろしくお願いいたします」。

西川通子

平成27年 10月号

流し素麺

私は旬という言葉が大好きです。本当を申せば「言葉」でなく、季節毎に美味しさを増す自然の恵みこそが、かわらぬ大好物。そして、冬は温かく、夏は冷たくという気配りも、食を養生たらしめる知恵と敬い、ありがたく活かし暮らしております。

熊本は自然が豊か。お知り合いには農業を営む方もいらっしゃいます。そんなご縁を大切に、旬のうちでも今が一番!という恵みを分けていただき、社員たちに「美味しい!」と言わせるのは、少なくなった生きがいの最たる一つでございます。

医食同源と申しますが、私が今なお飛び回っていられるのは、人一倍美味しく食べたいと思うがゆえと信じております。その想いを強くしたことがございました。

しばらく前にこの欄でも書きましたが。再春館では夏になると、流し素麺をするが恒例。流す竹は、裏山から切り出した太く香り高い孟宗竹を割りつくっております。暑いさなかにこれをするのは相当骨が折れることですが。そのかいあって、出来上がった竹の仕組みは素麺だけでなく、今どきなかなか味わえぬ涼味も運ぶと大好評。それを見た私はピンときました。これを、病院でお年寄りに味わってもらえないだろうか…。

十年前、ふとしたことからお引き受けした高齢者様専門の病院。今は舵取りを次男に任せておりますが、これだけは別!と厨房の仕切りだけは譲らず、三度のご飯が楽しみになるような献立づくりに努めてまいりました。

お昼ご飯に流し素麺を出してみたら…。そう言ったとき職員は皆無言。再春館のした重労働を聞き知っていたからでしょうが、出来たものを使わせてもらうからと押し切って、なんとか召し上がっていただく日を迎えました。

その日の患者様たちのお喜びようは、私の思惑を大きく上回り、二の足を踏んだ職員たちに「来年もぜひ!」と言わせるほどでございました。さらに。まったく予想もしていなかった喜び、と言うか驚きに近い出来事もございました。

患者様の中に、お箸をうまく使えぬ方がいらっしゃいました。残念だけど風情だけお楽しみいただき、召し上がっていただくのは看護師の介添えでゆっくり…と考えていたのですが。なんとその方が箸を手にされ、竹を流れる素麺に差し入れられたのです!

箸を使えぬはずの方が器用に素麺をたぐり、笑顔で「もっと流して」という様は、お医者様でなく薬でもなく、流し素麺が呼び寄せたもの。それを目の当りにしながら私は、食が心に湧かせる力の物凄さを、あらためて感じずにおられませんでした。

九月の声を聞いても暑さやまず、細くなった食が戻らぬという声をよく聞く昨今ですが(ちなみに私にその気配は、微塵もありませんが)。それを吹き飛ばすなら、なにも竹を切り割らずとも、旬の好物に一つ二つ、心に響く趣向を加えてみてはいかがでしょうか。食べて美味しいのもうれしいですが。食べてもらって美味しいと言われることのうれしさは、また格別。ぜひ食の呼び寄せる力を頼み、名残りの夏をお元気にお過ごしくださいませ。

西川通子

平成27年 7月号

バドミントン

「二人だけでお会いしたいのですが」。

突然そんなお電話をいただきました。くださったのは誰あろう、あの「くまモン」の保護者を自認される、熊本の蒲島県知事様。

二人だけ、しかも男性から。そんな事はいつ以来? にわかに思い出すことはできませんでしたが。これがかの有名なトキメキかしらん?そんな戯けを口走らぬようこらえ、身支度をして馳せ参じました。

笑顔でお迎えくださった知事は、開口一番こうおっしゃいました。

「西川さん、バドミントン部をお願いできないでしょうか」。

熊本生まれの、とある会社のバドミントン部が廃部となる。この部は、先のロンドン五輪で銀メダリストを出すなど世界的なレベル。解散で選手が散り散りになるのは忍びない。なんとか再春館製薬所のバドミントン部というかたちで引き受けてはくれまいか ―

お話を聞き終え、知事の並ならぬ熱意に押された私は、「わかりました!」と即答しそうになりました。しかし、社業を子らにまかせた今は隠居の身、一存で決めるなどまかりならぬ!と、すんでの所でブレーキが利き、お話を預からせていただくことに。

帰ってさっそく社長に相談したところ、「あのチームは、なくてはならない熊本の宝。ぜひお引き受けしましょう!」と快諾をもらい、そこからはとんとん拍子。去る四月、東京の体育館でお披露目の会を開き、熊本に戻って入社式を行い、新しいユニフォームを身に着け社員と挨拶も交わし、晴れて再春館製薬所の部と相成った次第でございます。

さて、私とバドミントンの間柄ですが。

やっていたと思います、私も、子どもの頃は。広場や路地でネットも張らず、ただ羽根を落とさぬよう打ち合う、私のしていたのはそんなもの。けれども、このたびのご縁をきっかけに目の当りにした「本物のバドミントン」は、まさに別世界のスポーツでした。

ラケットを振り抜き相手コートにシャトルを叩き込む、あるいは逆をついてフワリと落とす。その迫力は時に猛々しいほどで、鍛え上げた筋肉に裏打ちされた駆け引きの応酬は、テニスや卓球とはまたちがった、目をはなすことのできぬ妙味にあふれていました。

来年のブラジル、その次の東京オリンピックに出る選手も育つだろうというお話を聞くと、責任の重さをひしと感じ。できることをできる限り…そんな想いが湧いてまいります。

このチームは熊本に生まれ熊本に育つ、いわば熊本の誇りを担うチーム。それだけではありません。ユニフォームの胸に再春館製薬所とあるのですから、これをお読みの皆様にも、しっかりと肩入れしていただけるよう精進させていきたいと思っております。

ドモホルンリンクル同様、熱い応援を賜りますよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

西川通子

平成27年 4月号

干支

私には、人に言うたび驚かれることが一つございます。それを聞くと多くの人が「まさか…」という表情をされるのです。顔に出る程度ならまだマシなほう。かつて私がそのことを言ったとき、はっきりと疑いを口にした人がおりました。その人とは誰あろう、今は亡き主人。

「お前は本当に未年か。寅か亥じゃないのか?」。

この場をお借りしてはっきりと申し上げます。正真正銘、私は未年の生まれ。寅年でも亥年でもございません!

寅がイヤ、亥がイヤ、なのではございません。強いて言えば「未年のはずがない」と決めつけられたのがなんともシャク。しかしながら、ほとぼりが冷めた後、我が身を振り返って思いました。そう思われるのも致し方なし…。

いつの頃からかは存じませんが。未年生まれは「羊のような人」と思われる世の中になっておりました。ふっくら、やわらか、おだやか、やさしげ…等々、羊らしさを表す言葉は多々浮かびますが、私らしさに通ずるものは一つとして見つけられず。仕舞いには自分でも、虎や猪など、勇ましいイメージのほうがふさわしい、そう思っている始末。かくして、自他ともに認める「未年らしからぬ未年の女」ができあがったわけでございます。

しかし。そんな半端者な私でも、ただ生きているだけで年女となれるのですから、時の巡りとはありがたいもの。これで最後になるやもしれぬ年なれば、今は羊に隠れてしまった「未」の一文字に、どんな意味があるのか調べてみるのも一興。そんな思いつきをして、久しぶりに本を開いたり人に尋ねたりしてみました。

あれこれ見知っていくうち、いくつかの謂れがあることがわかりました。その中に、未は「味」の意で、果実が熟し滋味を生じた状態という説明がありました。その行に目を置いたまま、知らず思っておりました。

世に生まれた私という果実が、七十余年を経てそれなりに熟すは至極当然。問題は、ここまで生きてきた歳月にふさわしい滋味を生じているか、ということでしょう。

今日まで、様々な果物が醸す美味しさを味わってまいりました。それら得も言われぬ滋味に比べてみると、残念ながら己の味はまだそこに至らず。未だ熟れきらぬ味や香りが、そこここにと認めざるを得ません。

しかしながら、そう感じて少なからずうれしい気もいたしました。未だ滋味足らずの実感は、も一つ熟れてそこに至るべしという告げにほかならぬ。未年の未という字は、私にとって未来の未だった!

誰も認めぬ独り善がりを携え、六度目の未年を生きる私に、果たして滋味満つる時は来るのか?――まるで他人事のように、わくわくした気持ちを感じていると、「また今年も始末に負えない…」。なぜだか、そう思っている自分が居るのにも気づくのでした。

西川通子

平成27年 1月号

太陽光

南極のオゾンホールが拡がっている、地球は年々温暖化している。そんなニュースを耳にしたのは十数年前のことでした。

恥ずかしながら、詳しい知識の持ち合わせなく、ニュースが深刻な環境破壊を伝えているとわかるまで、しばらく間がいりましたが。おおむね理解した後、それが我が身に及ぼす影響を想像するうち、はたと気がつきました。これは大変!

大雑把にしか言えないのですが。地球と宇宙を隔てる層にオゾンはあって、宇宙からくる紫外線の相当量を遮っているそう。そのオゾンが減少し、穴が拡がりつづければ、降り注ぐ紫外線はさらに増え健康にも様々な悪影響が…冗談じゃない!

仮にも、健やかなお肌づくりを看板に商いしている身。紫外線の恐さは人一倍以上、まさに肌身に染みております。さらにオゾンの穴の拡がりは地球温暖化にも拍車をかけ、あらゆる動植物を害するとか。このままでは、今のように自然を感じ、その恵みを授かることもできなくなるかも…。そう思うと、青く澄んで晴れ渡った空の色すら、なにやら不気味に思えてくるのでした。

私ごときの手に負えぬ一大事。でも、なにかできることがあるんじゃないかしら?温暖化の主たる原因は、増え続ける二酸化炭素の排出量。それを少しでも減らすことができたら…。そんな思いを巡らしたどり着いたのが太陽光発電でした。それをしたとて減らせる量は微々たると知ってはおりましたが。いつの日か、二酸化炭素を極力生まない電力で一切を賄う会社になれば、微々たるといえ大きな意味あることに思えたのです。

かくして、前社屋の屋上にソーラーパネルを掲げたのは二〇〇一年のこと。今居るヒルトップは計画の段階から、できる限り多くのパネルを配した設計にするよう決めておりました。完成した後も、建屋や敷地を眺め、設置できそうな場所が見つかるやパネルを取り付けていきました。

そしてこの十月、長年の夢がかなう日が訪れました。ドモホルンリンクルをつくる生産現場はもちろん、お客様のお電話を承るテレマーケティングセンター、社員食堂からお手洗いまで。会社まるごとすみずみまでを、太陽が育てた電力で一〇〇%賄えるシステムが完成したのです。

足かけ十三年かかりました。その間に私は社長を退き、太陽光発電の夢も後を継ぐ者らに託しました。荷が重過ぎる?と思いもしましたが、息子娘を中心に社員一丸となって、見事かなえてくれた喜びは言葉にならず。二代かかって敷き詰めた数万枚のパネルを前に、熱いものが込み上げるをおさえることができませんでした。

この先どれほどすれば、地球のためにという大風呂敷の御旗に見合うまでになるのか、定かに知ることはできませんが。ひと息ついて、旗を高く掲げ直し、さらに積み重ねて行けば、きっとわかるはず…。そんな想いで見た空は清々しく晴れ渡り、遠く遠くどこまでも青く澄んで見えました。

西川通子

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